第6話 膨らむ希望
「なんで、恵美の連絡先が、どこにもないの?」
私が困惑していると突然、背筋に強烈な寒気が走った。おそるおそる部屋の扉の方を向くと、先ほど目にした喪服姿の男が寄りかかっていた。
「おはようございます。よく眠れましたか?」
相変わらず、どこか皮肉めいた声で死神は尋ねた。感情がぐちゃぐちゃになりつつある私は答えることができなかった。
「ふむ、さっそく不満げなご様子ですね。いかがなさいました?」
続いて、どこか小バカにしたような口調で問いかける死神に、私の中で何かがプツンと切れたように感じた。私はベッドから飛び出すと、死神に臆せず近づいていき、
「私を騙したのね!?恵美の連絡先がぜんっぶ消えてるんだけど!どういうことなの!?」
とまくし立てた。
死神は表情を変えずに左手を上げ、その場を制すると、懐から一冊のノートを取り出した。肩に担いでいた大鎌を近くの本棚に立てかけると、死神はノートをめくり、とあるページにたどり着いた。そのままひとつ、大きく咳払いをすると、死神は謎を解明する探偵のような口調で話し始めた。
「なるほどなるほど。どうやら恵美様は『水木花菜』という名前で小説を書いているようですね。しかも、それなりのヒット作を生み出している、と」
「!?」
名前を聞いて、私の頭に衝撃が走った。それと共に、こんがらがっていた感情が一気に整頓されていく感覚を覚えた。
「恵美のペンネームだ!間違いない!」
「合っているようで何よりです。……ほぉ、しかも今は清少大学の○○キャンパスに通われているみたいですね。ここはたしか、明日香様と同じキャンパスでしたかな?」
「え!?そうだけど、つまり、つまり、恵美がそこにいるってことだよね!?それなら、急いで支度しなくちゃ!!」
私はもろもろ準備をするために、部屋の扉を勢いよく開けて下に降りていった。しばらくして、着替えをしに再び自分の部屋に戻ってきたころには、死神はすっかり姿を消していた。
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