第十九話 呪傷者

 死体を運ぶ男とソレに並んで歩く女。すれ違う度に向けられる視線が痛いのなんの。

 それに加え、この退屈さ。旅路がこれ程までに退屈だとは思ってもみなかった。まぁ冷静に考えてみれば、旅路が退屈であるというのは、当たり前の話ではあるのだが、妙に飲み込めない。飲み込みたくない。

「先程から視線を感じるな」

「はたから見たら死体を運ぶ男にしか見えないからな...」

「成程な。まぁ頑張ってくれたまえ」

 腹立つ。

「おい見ろ何だあれ......」

「何だだと? 呪傷者だぞ.... 知らないのか......」

 者って事はまさか人間なのか。あの肉塊が人間なのか。本当に、人間なのか。

「貴様は赤子か何かなのか」

「あれを見て平然でいられるお前がおかしいだけだろ....」

 そうして呪傷者とすれ違う。肉塊の側面から生えた腕の付け根から垂れる液体。擦り歩いた跡に染み込んだ血液。全てが視界を、嗅覚を、感覚を、狂わせる。

 呪傷とは、何だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る