第十八話 ロングベーコン、ショートハム。

 早朝、万能台で荷車を作った。あの鉄の塊を担いで行くのは、流石に無理がある。ちなみに荷車を引くのは俺だ。無論、材料は瓦礫。積もりに積もった廃材を有効活用させて頂いた。

 ふと、手元の銀箱に視線を落とす。本当にコレ、何なんだ。

 さては、コレも変形するのか。いや、まさかまさか。

「万能台..... では無いな.....」

「すまん、起こしたか」

「いや、私はいつもこの時間に起きる」

 早起きな事で。

 そう言えば、此奴は一体、何処からやって来たのだろうか。そもそも此奴は何故、俺の元に現れたのだろうか。何故、髪型が変わったのだろうか。何故、俺を介抱してくれたのだろうか。

 それよりも何故、そんなにも悲しそうな顔をするのだろうか。

「何をジロジロと」

「いや、何でもねぇよ....」

「気色が悪いな」

 辛辣。

 まぁ、絡繰の事はさておいて、そろそろ出発だ。目指すはリューベック。宗教の街というのはあまり好ましくないが、此処が一番近い駅だ。致し方無い。そして、そこから北上。終点ビルンまで向かう。

 そこからは徒歩。正味、コレが一番辛い。

 絡繰は万能台から何かを引き抜いた。

「朝飯だ」

「あ、あぁ、お、おッ!! 危ねぇ.... 捕まえた.....」

 こ、これはッ。

「激ウマサンドウィッチ!!」

「食ってもないのに感想を述べるな」

 これは失言、失礼した。てか、投げるな。危うく台無しになる所だったわ。

「これは... ハムか.....」

「ハムは嫌いか」

「いや、ベーコンじゃないんだな、と」

「ベーコンは好かん」

 え、嘘。じゃあ何で入れてたんだよ。

 いや、まぁいいか。ハムでもベーコンでも、美味いことに変わりは無いしな。俺はベーコンの方が好きだが。

 トマト、レタス。塩に胡椒。肉以外は変わらない。それでも、何かが違うと、断言出来る。

 髪の長いシルヴァと髪の短いシルヴァ。これ位には違うのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る