第十七話 そうかと

 ガランドについて記されている著書を、家の瓦礫から掘り出すこととなった。

 ガランドは存外有名な都市で、文献を漁るのに時間はかからなかった。世界革命という著書にその概要は載っていた。

 機械都市ガランド。

 連邦の北に位置するこの都市は、年中蒸気に包まれているらしい。隣国で起きた産業革命の影響を色濃く受けてしまったせいか、呪術に関する発展がほとんど見られないのだとか。

 また、機械技師の聖地としても知られており、都市の中心部では多くの機械人形達が働いているのだとか。

「機関車....」

「ガランドに駅は無いぞ」

「あぁ分かってる。占領対策も此処迄来ると病気だな.....」

 ガランド周辺では、侵攻対策の一環か、交通の便が非常に悪くなっている。現状、周辺に存在している道の多くは、侵略者が開拓していった跡なのだとか。そして、その甲斐もあってか、ガランドで生み出された技術の多くは、外部に全く流出していかないのだそう。

「最先端ゴリラが絶賛流出中なんだがな....」

 兎に角、進み方に関しては大方纏まった。機関車からの徒歩。面倒臭過ぎる。問題は積荷をどう運ぶかだ。怪力美女に担がせても良いのだが、流石に男としてどうかと思ったのでやめた。

「てか、移動にばっか気を取られてたが、荷支度もあるんだよな....」

「そこに関しては安心しろ、私にはコレがある」

 そうしてシルヴァは何かを腰から引き抜いた。

「銅の箱....」

「これは万能台と言ってだな――」

「――ソレが万能台なのか!?」

 手のひらサイズじゃねぇか。こんなちっさい箱があんなデカい化粧台になるのか。何なら、この中には大量の食材が。本当に何なんだこの箱。

 ふと顔に視線を送ると、何やら少し驚いている様子だった。

「貴様... 万能台を知ってるのか.....」

「まぁそりゃ心淵技師だからな....」

「やはり貴様、心淵技師だったのか....」

「あ、いや。エセ心淵技師だ。自称心淵技師.....」

 我ながら何を言っているのか。

 絡繰は、一度瞬き、首元を掌でなぞった。そうして絡繰は、バツが悪そうに視線を逸らすと、一言漏らした。

「貴様がそうかと思ったぞ....」

 そうって、どういう意味だ。ついでに、そんなに落ち込まれてもだな、こちらとしても絶妙に困る訳で。

 茶化す様な事では無いのかもしれないが、茶を濁す以外に、俺に出来る事は無かった。俺は絡繰について、何も知らなかったのかもしれない。否、何も知らなかったのだ。

 そんな論理的確信が、絡繰を遠くに連れ去った。

 そんな感じ、そんな感情。

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