第24話
「これから授業を始めるよ。私は担任だけど、同時に魔法学科の教師でもある。天才型の君たちを導くには足らないと思うけれど、行くよ」
「「「「は~い」」」」
クラス中から、気のない返事が上がる。
先生はそれを咎めなかった。
「君たちは初歩のカリキュラムは必要ないから、これを学んでもらう」
先生が机の下から持ち上げたのは、教科書らしき本。
[魔術教練Ⅲ]と書かれている。
「三年生の内容さ。魔法と魔術の違いについて、既存の魔法を魔術に昇華させる方法、その種類が載っている。君たちは実力がバラバラで、教えることも無いだろうから、分からないことがあったら先生に聞いてね」
「「「「「は~い」」」」」
私は配られた教科書を開いて、捲ってみる。
魔法と魔術の違いについて記述してあるけれど、初歩的すぎて逆に見づらい。
術式も綻びだらけで、直視できない。
ゼフォーはこういう所は直さないのかな?
周囲を見ると、皆ペアを組んでいる。
「何だこりゃ!? ゼンゼン分かんねえぞ......?」
「エリアルくんはダメねぇ、わたくしが教えて差し上げますわ」
「助かる!」
どうやらエリアルは感覚派で、魔術の素養はあるのに理論を理解してないみたい。
イザベラといいコンビになりそう。
「メル、分かる?」
「パル、分かんない」
パルティーナとメルティーナは顔を見合わせている。
まあ、神術と魔術では理論が大幅に違うからね。
でも、本質は一緒だよ?
「カイレル殿、俺は剣士なのですが、魔術を学ぶ必要があるのでしょうか?」
「敵を知ることは、己の力にもなると父上が言っていた。私が思うに、手の内を知らない剣士と手の内を知る剣士では、魔術師にとっては脅威度が大きく異なるだろう」
ラウドとカイレルは、コンビを組んでいるが...........
この間見た本の表紙のシーンみたいに見える。
美男子が二人いると、何故か画になるのはなんでだろう?
「おい、ペアを組むぞ」
「...................」
「どうした?」
「いえ、何でもありません」
私は背後に立つゼファーを見る。
ゼファーは教科書を出してきて、あるページを開いた。
「ここのページの術式、無駄が多すぎるとは思わないか?」
「確かに、そうですね」
「例えばここをこう書き換えるだけで、大分効率が増加すると思うんだがな」
「待ってください、そこはこの文字と繋がっていますから、こことここに書き加えてから書き換えないと暴走します」
「しまった、失念していたな」
「それと、恐らくここの文字からして書き写し間違いだと思います。ここは本来、こう書くものです」
「そこにその文字を入れるのか、道理で全体的に質が低いと思ったわけだ」
ゼファーがそう言い切った直後、遠くから鐘の音が響いてきた。
一時限目が終わったみたいだ。
「..........時が経つのは早いな」
「そうですね」
私も、いつの間にか夢中になっていた。
そして、ゼファーの教科書には恐ろしいほど強力な術式が組み上がっている。
基礎は
威力も何もないけど、これを応用すればレーナに教えられる。
◇◆◇
二時限目は、魔法史だった。
私も流石に、魔法の歴史までは知らないので、非常に興味がある。
魔王さんはちょっと黙ってて。
竜王さん、ネタバレ禁止だよ。
「わしはフェルメス。魔法史の教員じゃ。貴殿らも、流石に魔法は知っていても歴史までは知らんじゃろうな、なので、お教えしよう。退屈かもしれぬが、聞いてくれたまえ」
先生は黒板に、チョークで文字を描いた。
それは、[発生]という文字だった。
「魔法とは、古き時代に神々が人間の為に生み出したモノだ。魔物に襲われ、段々と数を減らす人間に、魔神が力を分け与えた。」
「だが、人間は魔物と戦うだけでなく、受け取った力を同族にも向けたのじゃ。こうして、古代魔法戦争が幕を開けた。」
「魔法戦争が終わって、人々は戦いの愚かさを知ったかに見えたのじゃが、結局折角統一した一国は、王国、帝国、神聖国に分かれてしまったのじゃよ。魔法史では、この大まかな歴史を学んでいくぞ」
「先生!」
「なんだね、エリアル君」
「俺が行った竜族の神殿は、発生以前のものと思われるんですが、そこには魔力が使われている装置がありました。発生は本当に正しいんでしょうか?」
「すまんな、エリアル君。わしは、貴殿らに知識を与える事しかできぬ。歴史を疑うことも、時には重要。わしの話だけに耳を傾けず、おかしいと思った所を検証してみるがいい。きっと新しい歴史が見えて来よう」
そして、魔法史の時間も終わった。
私は、魔王さんたちから正解の歴史を聞く。
どうやら、魔法は神々より前からあったみたい。
それで、神は魔法を消そうとしたけど(自分たちの奇跡を目立たせるため)、神々を以てしても消えなかった、消せなかった。
それは、十二の魔術を中心とした魔術が世界の成り立ちに関わっていたからであり、神はそれらを確保するために人間を使って戦争を繰り広げたけど、結局何も為せず終わったみたい。
「魔法史、面白かったですね」
「そうだな..........実は、俺も魔法史にはあまり明るく無くてな、先生の火の魔法を手に入れてからの人間の発達の歴史はとても面白かったな」
「事実なんでしょうか?」
「さあな?」
困ったようにゼファーは言った。
「事実だぜ。その論文を書いたのは俺の親父だよ」
「あなたは......エリアルさん?」
エリアルが突如現れて、胸を張った。
「俺が冒険者を始めた理由は、親父が偉大な冒険者だったからだ」
「それは、誰ですか?」
「ノーティラス・オーゼン」
「『南西大陸冒険記』の?」
「そうだな!」
南西大陸は、存在が未確認ではあるんだけど、伝説の冒険家ノーティラス・オーゼンが執筆した本によって一気に有名になった。
ノーティラスは、交易船が難破してから行方が知れていなかったけれど、その間南西大陸に流れ着き、冒険をして、しっかりと計画を立てて船を作って貰い帰ってきたのだそうだ。
南西大陸は大量のダンジョンが存在する、冒険者の楽園みたい。
私もいつか行ってみたい場所でもある。
「それよりも、ちょっと協力してほしいことがあるんだが、いいか? 対価は払うからさ」
「何ですか?」
「何だ?」
「イザベラに魔導武器を作って貰う事になったんだが、色々問題があるんだよ..........俺の持ってる戦利品から、好きなのを選んでいいから、一生使える無敵の武器を作って欲しいんだ!」
「自重する必要はないか?」
「ああ!」
「やります!」
衝動的に身を乗り出してしまった。
自重してばかりで、最近は全然本気を出せてなかった。
エリアルなら大丈夫だろうし、私の全力でスゴイ魔道具を作る!!
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