間話-3

第一波は倒したけれど、まだまだ次はやってくる。

あんまり私が活躍するとずるいって言われそうだし、控えめにしよーっと。


「〈連鎖ライズ炎喰・フレジガ〉」


私が放った炎が魔物に当たると、一瞬で二倍の大きさになって魔物を焼き尽くして、更に大きくなって魔物を食い潰す。

そしてまた大きくなって、別の魔物に飛びかかる。

魔王さんが教えてくれた、かつてこれで人間を何人も殺したことがあるっていう魔術だ。

位階は存在しないらしくて、強いて言えば魔王魔術第2位階に相当するみたい。


「ちっ、仕事が無くなっちゃうわね! 〈バラード・アイシャ〉! あんたらもやりなさい!」

「ああ! 〈アイシャ・ジベリス〉!」

「言われなくても分かってるぜ! 〈グロッテ・ランジア〉!」


その時、防壁を上がってきた二人が魔法を使う。

右の人は氷の槍を作って、それを投げた。

飛んでいった槍は魔力で加速して、魔物数体を突き刺して絶命させた。

もう一人の魔法で土が尖って飛び出して、同じく魔物数体を串刺しにして倒した。


「「基礎魔法第二位階! 〈魔揺マギシャ光弾・ミッシェラ〉」」


更に、二人は魔法弾を連射して、効率よく敵を倒していく。

魔力の消費なんて気にしたこともなかったから、こういう戦い方は新鮮だな……

魔王さんも竜王さんもわかるよね、やっぱり!


「私も何かしなきゃ…でも、する事ないような…」


派手なのを連発したら、皆の出番を奪っちゃう。

そうすると恨まれるのは絶対確定だもの。


「ちっ、魔力切れね…あんたたちも?」

「あ、ああ…」

「マナポーションがありゃなあ…」

「私はあるわよゴクゴク」

「あっ、ずりぃ!」


私は自分で魔力を回復させられるけど、これはドラゴンの器官が体内にあるからで、人間は魔力が尽きたら回復を待たないといけない。

レーナを教えて分かったんだけど、殆どの人間の魔術師は、魔法を数発撃ったら倒れてしまうみたい。


「私が今からでかいのを撃つから、直ぐに突撃して!」

「分かったぜ!」

「火魔法第15位階! 〈魔炎ケーオス・災禍フレジア〉!!」


凄い!

使えるんだ、これ…

派手な爆発が起きるけど威力は微妙で、魔法に対する耐性のある魔物にはあんまり効かないけど、とりあえずヨルド大遺構の敵相手なら強い魔法だ。


「うおおおおおお! 突撃いいいいいい!」

「ステップ! ハイスラッシュ!」

「パワースラム!!」

「ブリッツシールド! どらあああああっ!!!」


一斉に飛び出した男達が、魔物の波に飛び込んでいく。

魔法使いが居なくなったから、近接が使える皆の出番という事だと思う。

じゃあ、私も…


「援護魔術、第8位階! 〈加護ブラス天球スフィーレ〉!」


戦っている人たちの真上に輝く球が現れて、それが私の込めた魔力を特定の人に照射する。

まず、治癒。古傷だって治ってしまう。

次に体力回復。治癒じゃ回復しない体力を回復させられる。

最後に強化色々。

筋力強化、知覚強化、呼吸強化、武器強化、体力増加、魔力の底上げ等々だ。


「あなた、さっきので魔力切れじゃ無かったの!?」

「はい、そうですけど…」

「凄いわね、将来が楽しみだわ」


出番を奪ってしまったのに、何故か誉められた。

何でだろう?


「今なら行ける! ダイナミック...ブレードスラム!!!」


見れば、スキルを使ったフィルが、剣を地面に叩きつけて魔物数体を屠っていた。

前見た武技とは全然違う…何なんだろう、あれ?


「これは勝ったわね」

「そうなんですか?」

「あんたの魔法が強過ぎるから、もう負けなしよ」

「そうでしょうか…?」


実際、私の使った援護魔術は効果を十全に発揮した。

初めて使ったけど、演算が比較的簡単だったおかげで制御も楽だった。

魔物側はどんなに頑張っても致命傷を負わせられず、人間の方は毎秒ずつ傷も体力も回復して、どんどん強化が蓄積して強さが上がっていく。

勝敗は付いたように見えた。

だけど、それは間違いだった。


「…? 何かしら、あれ?」

「…?」


私が遠くを別の眼で見ると、そこには居るはずのないものが見えた。


「ドレイク………?」

「なっ、なんで竜がここに!?」


私も驚いた。

これは最悪かもしれない。

このままだと……全滅する。

援護魔術なんて、本物の竜の前じゃ無意味。

気づいた時には、すでに私は戦場へと飛び出していた。


「無茶よ! 戻ってきなさい!」


背後から当たり前の忠告が飛んでくるけれど、私は足を止めない。

あそこで止めないと、私を除く皆が全滅した後にサマナール領が危ない。

後、美味しそうだか……何でもない。

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