第17話
扉の先には、長い道があった。
その道を進むと、階段がある。
「よし…じゃあ降りるよ」
「了解です」
「はい」
私たちは、三人固まって階段を降りていく。
そして、灯の届かない暗闇へと足を踏み入れた。
暗闇の中、気づけば足元が坂になっていた。
この暗闇、何か変だ。
私の眼でも周囲が見えない。
「あっ…」
「光だ」
しばらく歩いたとき、目の前に光が見えた。
その光は四角く、徐々に上に広がっていく。
扉である。
私たちはその扉へと足を踏み入れ…
強かった光が徐々に収まる。
するとそこには。
「わぁあああああ……」
「話には聞いていたけど、凄いもんだね…」
一目見て言えば、清浄な空間。
あちこちに緑が溢れ、左右にはそれぞれ噴水がある。
左の噴水には二人の女性に支えられながら立つ、剣を構えた戦士のような像、右の噴水には幾つもの動物を従えた女神のような像が置かれている。
(これは、もしや…姫、この魔法陣を彼処へ…)
「わかった」
私は歩み出す。
二つの噴水の真ん中に置かれた、斜めに切られた切り株のような石に向けて。
「ケイト?」
「ちょっと待っててください」
私はその石の前に立ち、魔王さんに言われた通りに魔法陣を展開する。
すると……
『————————漸く、辿り着きし者よ…世界の真実を知り、神に弓引く者よ…我が声を伝える』
「これは…?」
「映像魔石…?〈
空中に投影されたのは、顔中に傷のある男だった。
その目は疲労に満ちていたが、何処か使命のようなものを感じさせる…って魔王さんが言っている。
『我らの故郷は、魔導国イードルーヴェル、高い魔法技術と、多種族の共存、自然の秩序の保護を成し遂げた世界最高の国であった』
でも、今はその国の名前はどこにも残っていない。
『滅ぼされたのだ…神々に。我々は満点に輝く星————』
天井が星空へと変わる。
『その秘密を探るべく、黒空へと飛び出す技術を開発した。虚無で生きられる術を身につけた、しかし…全てはその空へと飛び出した瞬間に終わった。』
映し出されたのは、大陸を埋め尽くす街。
緑はあるものの、どこも白い何かで覆われている。
「これは…!」
「凄い技術だ…大陸全体を都市化するなんて」
次の瞬間、その街は粉々に吹き飛んだ。
炎が上がり、爆発が起き、死の気配が吹き荒れる。
『我が故郷は攻撃された。黒空に飛び出した我らは無事だったが、三日三晩攻撃され、包囲された我らの故郷に生き残りはいなかった』
「な…誰が攻撃を?」
「たしかに…当時最大であった国を攻撃するなんて、出来るはずが…ま、まさか!」
再び男が映し出される。
『我々は滅ぼされた。我らも神の追手に追われつつ各地を転々とし、十二大魔術の記録を集めてはいるが…当時5人いた仲間も今では私を除いて一人のみ、しかも行方はわからないときたものだ』
男は疲れたように笑った。
本当に、疲れたように。
『私はここを去るが、我らの印を持ちし者に、我らの秘宝を譲り渡す、決して他人に渡すことなく、神への復讐を遂げる時まで持ち続けるのだ…』
すると、私が展開していた魔法陣に変化が現れる。
より複雑で精緻なものへと変化していくのだ。
これは…!
「ケイト、どんな秘宝だったのですか?」
「秘密です」
「そんな…」
「教えてはくれないかな?」
「ごめんなさい」
貰ったものは、十二大魔術と同じくらい大事なもの。
この二人を世界の命運などというものに巻き込みたくない。
私はそう思い、二人に打ち明けることはやめた。
「そうか…じゃあ、正規の報酬を受け取って帰ろう」
正規の報酬とは、部屋の一番奥…
扉のようなものの前にある転移陣の手前に置かれた宝箱である。
「開けるよ…」
「はい」
「どうぞ」
宝箱の中には………
金銀財宝とは行かなかったが、一つの鎧が入っていた。
「〈
「僕には必要ないものだし…レーナ、君が貰って」
「はい」
ついでに〈精査〉すると、フィルの着ている不思議な様式の上着は、竜の革で出来ているらしい。
希少価値はB-、相当のものだ。
「じゃあ、報酬も貰ったことですし…帰りますか?」
「はい!」
「そうだね」
私たちは転移陣へと足を踏み入れ、その場から消え去った。
それ故に知らなかった。
役目を終えたヨルド大遺構が、一体何を引き起こすかを。
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