第16話
扉を潜った先は、広間だった。
でも、私もこんなに大きな外じゃない場所は見たことがない。
魔王さんが自分のお城の記憶を送ってくるけど、どうやらそれより大きい屋内もあるみたい。
「さあ、早く…部屋の真ん中まで進めば、試練が始まる」
「分かりました」
「はい」
私たちが部屋の中心まで歩くと、魔力の粒子が天井から溢れ出す。
「〈
私がその粒子を奪おうとするが、全く粒子が動くことはない。
どうやら奪えるものではないようだ。
魔力の粒子は集まり、一つの形をなす。
「…!」
「あれは…?」
「〈
私の魔術がその魔物を隅々まで調べ上げる。
そして表示された情報を、私は読み上げた。
「敵はレッサーヒュドラ! 魔力容量はレーナと同等クラス!」
「おっと…こりゃまずいね」
「任せてください、ケイト! 私たちは絶対に負けません!」
頼もしい。
私は無詠唱でありとあらゆる援護魔術を構築する。
ただし、最後の援護魔術は無詠唱では出来ないので、詠唱を伴う。
「〈
途端、二人から感じられる生命力が泉の如く増大する。
生命力とは、私もよく分からないのだけれど…
不足すれば傷の治りは遅くなり、魂と切っても切り離せない〈源泉〉、それの生み出す力が弱くなる。
満ちていれば傷は治り、〈源泉〉は魔力を生み出し、魂を活発にする。
ではこれが満ちていたら?
答えは簡単、傷は瞬時に治り、魔力や闘気、人によって異なる力が、源泉より溢れ出す。
私の持つ十二大魔術が一つ、〈生命魔術〉はこれに干渉できる唯一の魔術だ。
「行って、二人とも」
「ああ」
「はい」
レーナが即座に魔法陣を描き、魔術を詠唱した。
「〈
炎の旋風がヒュドラの足元より吹き出し、ヒュドラは堪らずGAAAAAAAAAAA!!!! と声を上げる。
「〈
私が発動した魔術により熱に強くなったフィルは一気に炎の中に飛び込んだ。
そして、その身体を傷つけようと剣を振った。
ドゴォッ!!
凄まじい音と共に床が砕け、ヒュドラが叩き付けられる。〈
「こちらも行きます、〈
雷が放たれ、ヒュドラを撃つ。
フィルが逃げきれないが…
「〈
私が援護魔術で守る。
「レーナ、援護して欲しい! 今なら出来るような気がするんだ」
「分かりました!」
フィルが大きく飛び、剣を振り上げる。
「ギガントブレード———スラムッ!!!」
その一撃は、武技ではなかったが途中から武技の輝きを帯び、一気にヒュドラへと叩き付けられる。
ズガアァァァァンッと轟音を立てて、ヒュドラが吹き飛ぶ。
伝わり辛いが、針金でぎっしり詰まった本棚を吹き飛ばしたのと同じようなものだと私は思う。
「凄い…私も! 〈
レーナが両手を挙げると、そこから魔法陣が展開される。
その陣から1本の極雷が上に向かって放たれ、それは無数の雷の鎖となってヒュドラを縛る。
ヒュドラは動けなくなり、暴れるが鎖が破壊されることはない。
そして、雷が上に収束し…一つの迅雷となってヒュドラに降り注いだ。
GYAAAAAAAAAAA!!!!
ヒュドラが苦痛に咆哮を上げるが、雷の鎖は雷を閉じ込める結界へと変じ、中で起きるヒュドラの魔力を変換して起きる雷の爆発を閉じ込め、その威力を増大させていく。
それが終わった時————既にヒュドラは生き絶えていた。
「あ……な、なん…この魔術…?」
「〈
「はい、ケイト!」
「いや、僕が言いたいのは…雷魔術って第61位階の〈
「それは人間の限界ですから、私はもっと上を知っていたので教えました」
今レーナは、全ての魔術を私ほどではないが使える状態だ。
最低でも第100位階より上を使えないと生きていけないと思うのだけれど、第100位階ともなると使いづらいから仕方ないかも…
「…まあいいや、これで終わりかな?」
魔術で作られたヒュドラの身体が、光の粒子となって空気に溶けていく。
そしてそれは完全に消え去り、再び静寂が戻った。
ギィィィィ…ゴゴゴゴゴゴッ!
聞こえた音に振り返れば、奥の扉が開き始めていた。
「どうやら、攻略完了のようだね」
「はい…次の階が最後ですけど…?」
「行ってみたらわかるよ」
私たちは、扉の向こうへと歩き出した。
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