第28話 新騎士団長の就任
新たな騎士団長に就任したエルウッドは、騎士団の再編成と装備の更新を行い、騎士たちの意識改革に取り組んだ。
騎士団の規律を正し、市民からの信頼を取り戻すために奔走した。
まずは騎士団全体のモラル向上を目指し、犯罪行為の取り締まりを強化した。特にスラム街への巡回を増やした。
これは汚職や横領の温床となっている場所なので、騎士団の人員を総動員して徹底的な捜査を行った。
その結果、幾人の騎士が不正に関わっていた事が発覚。彼らは厳しく罰せられ、騎士団からも追放された。
これらの仕事で連日忙しく、エルウッドは団長室に泊まり込む日々が続いた。
屋敷に帰らない日々が続くと、フィーがよく様子を見に来てくれるようになった。
彼女はお手製の差し入れ――サンドイッチやフルーツをバスケットに入れて、疲労回復用のポーションも調合して持ってきてくれる。
「はい、これ今日の分ね」
「ありがとうございます!」
「頑張るのもいいけど程々にしなさいよね。まだ若いからってオーバーワークは良くないわ。執事さんたちもエルウッドに会いたがってるから、近いうちに帰ってきなさいよ」
「はい。屋敷をフィーさんに任せっぱなしにして、すみません」
「いいのよ、気にしないで。ところで最近、下町の方じゃ騎士団の悪口を言う人が減ったらしいわよ。これもエルウッドが頑張ったおかげね」
「いえ、俺はそんな……。俺はただ、騎士団の誇りを取り戻したいだけです」
「それが大事なのよ。エルウッドは頑張ってる。あんたは愚直で融通が利かない頑固なところはあるけど、サルマンのせいで地に落ちた騎士団の評判を取り戻すにはエルウッドのような人が必要だと思うわ。だから自信を持ちなさい。あんたはあんたのままでいいのよ」
「フィーさん……。俺は……騎士団の誇りを取り戻してみせます。必ず」
「うん。期待しているわ」
フィーは微笑むと団長室を後にする。
団長室に残ったエルウッドは、フィーの言葉を思い出しながら再び書類の山に向かった。彼女と話しているとやる気が湧いてくる。彼女と話せる時間が増えるように、今日もエルウッドは仕事を頑張ることにした。
そんなある日。
頑張った甲斐あって、エルウッドは久しぶりに休日を取れる事になった。久々に屋敷に戻ると、執事を筆頭に使用人たちが歓迎して出迎えてくれる。
「エルウッド様、おかえりなさいませ!」
「ああ、戻った。みんな変わりないか?」
「はい! エルウッド様のおかげで我が屋敷の評価も上がりましたし、皆も喜んでおります」
「それは良かった」
「それにしても団長職というのは大変ですね。ここ数日だけでも随分とお疲れのように見えます」
「そうだな……だがやりがいのある仕事だと思っている。それに今度の休みが取れたら、下町へ行こうと考えている。人任せにせず、自分の目で直接見るのが大切だからな」
「さすがです、エルウッド様! それでこそ我らが騎士団長です!」
「やめてくれ、恥ずかしい」
エルウッドが照れていると、彼の帰還に気付いたフィーが二階から降りてくる。
「おかえり、エルウッド。それならちょうどいいわ、私の買い物に付き合ってくれない?」
「フィーさんの? もちろん構いませんが、一体どんな用件ですか?」
「調合用の素材を入手したいの。ちょっと調べたんだけど、下町に良さそうな素材を売ってるお店があるらしくてね」
「なるほど。そういう事でしたら喜んでお供します」
「ありがとう、助かるわ!」
こうして明日の休日には、下町でデートをすることになった。
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