「先生、空気は読むモノじゃなくて吸うモノです」


 この発言に、教室がどっと沸いた。先生は困った顔をして、でもすぐに授業に戻ろうとした。しかし笑いの熱は収まらない。隣の席のあいつも、普段は喋らないあの子も、友人も全員が笑っていた。

(気持ちわる)

 僕はそう思う事しかできなかった。何も笑えなかった。正直に言うと、馬鹿だなぁって。そう思ってしまった。普段は嫌いな授業なのに、早く進めて欲しいとさえ思った。

 挙句の果てには先生まで笑い出した。気持ち悪いな。皆が皆同じ所で笑ってるのが。

 でもそこで普通は笑うんだなって。


 ネガティブ思考は考え出すと本当に止まらなくなる。

「普通はあんな事で笑うんだ」

 そうやって考えると、僕が普通じゃないみたいで、自分を俯瞰するとまるで憐れで、苦しい。


「あいつマジで面白くね?」

 隣のやつがそう聞いてきた。

「わかる。それな」

 おどけた口調でそう答える。顔には笑みをいっぱい湛えて。

 そうしないとすぐ捨てられるから、僕は普通で居る。普通を演じている。


 苦しい。まるで心が潰される様。だから消えたい。いつしかそう思うようになってしまった。

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吹く風は言ノ葉 花楠彾生 @kananr

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