第17話 こうなったら幸せになるしかありません

 ゼルダの顔がパッと輝きました。


「じゃあ、マギーとずーっと一緒ってことだよネ!

 うん! 侍女でも執事でも奥さんでもなんでもなっちゃう!」

「くっっ……」


 執事!?

 執事の格好をしたゼルダ!


 絶対に似合うに決まってます。

 男装なんてしたら、もうもうもう、それこそ白馬の王子様ですよ貴女!


 しかも男装して美少年になったゼルダに甘く囁かれたりしたら。

 私、たちまち陥落してしまいそうです。


 いえ、そもそも、ゼルダがどんな姿をしていようと甘く囁かれたりしたら。

 私、たちまち陥落してしまうでしょう。


 それに、今、奥さんとか言いましたよね!?

 空耳じゃないですよね!?


 ゼルダが奥さん。私の。私の奥さん。


 落ち着くんです私!


 ゼルダは見習いメイドです。奥さんじゃないです。

 メイドのお仕事をしてもらうだけなんです!


 でも、メイドさんが奥さんでもっっ!


「ねぇ。例えば侍女とかメイドってどんなお仕事するの?」

「め、メイドは過酷ですよ!

 例えば! 御主人様であるお嬢様が寝る前にベッドを暖めてさしあげねばなりません。

 そのとき、人肌に温めるために、裸でベッドに入っていなければならないのです」


 言ってしまった!

 言ってしまいました!


「裸でっ!?」

「は、裸でです! 私につく侍女ならそれくらいして当然です!」


 って、訂正しないとか、どうかしてる私!


 だ、だめ欲望がだだ漏れに!


「い、今のは――」

「わかった! 頑張る!

 マギーじゃなかったら恥ずかしすぎて出来ないし、マギー相手でも恥ずかしいけど。

 でも、マギーがそう言うならちゃんとやる! ベッドに入って待ってる!」


「くはっ」


 この子、する。絶対にする。

 どどどどうしましょう。今更そんなことしなくていいとか訂正とかできません!


「まっ、まぁ、そういうことです。ですけど、もう甘い顔はしないと――」

「これからもずっとよろしくネ!」


 抱きつかれてしまいました。


 ああ、いいにおいです。


 あまくて、やさしい。おひさまのにおい。


 ベッドの中に裸のゼルダがいたら。

 私の理性は保つでしょうか?


 ムリです!


 そして一度ゼルダという誘惑に手をだしてしまったら。


 保養期間中だけで済むでしょうか? 私が我慢できるでしょうか?


 ムリです。ムリに決まってます。


 踏み出してしまったら、引き返せないのは判っているんです。

 私は彼女の身も心も独り占めにしたくなってしまうでしょう。


「マギー大好き!」


 ああ、こんな笑顔で言われたら降参です。


 もうほんとうに……しょうがないんですから。


 彼女も私を好きだと言うなら、止まれません。


 どんなモラルもルールも因習もくそ食らえです。知恵を使って乗り越えるしかありません。

 私が挫けそうになったり、流されたりしそうになっても、ゼルダが勇気をくれるでしょう。


「私も貴女が大好きですよ」


「えへへ」


 はやくも甘い顔をしてしまいました。


 でも、しょうがないですよね。好きなんですから。


 こうなったら幸せになるしかありません!

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私は真実の愛を見つけてしまいました。こうなったら幸せになるしかありませんね マンムート @NOMINASHI

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