第14話 バレバレです。

「え、な、なんのことかなぁ~?」


 目が泳いでいます。

 ゼルダは、まったく正直でまっすぐ過ぎます。


 この子に欺されたあのアホってば本当に節穴ですね。


 それとも、それだけ必死に私のために演技してくれたってことなんでしょうか。

 そう思うと、胸がキュンとしてしまいま――


 おほん。


「貴女は私が唯一愚痴をこぼす相手です。

 そして私のことマギーって呼んでいい唯一の人です」

「わ……ちがちがちがう! アタシ、あの時、マギーなんて呼んでないもん!」


 バレバレです。

 この子、絶対に犯罪とかできないです。


「それだけじゃありません、私と婚約して以降にフリードリヒが手を出した女は17人。

 アレの浮気遍歴を全部知ってるのは、私とお父様とブホン以外、私の愚痴を聞いていた貴女しかいないんです。

 お父様とブホンは、あの場にいたから除外すると、17発殴るなんて発想、貴女しかできないんですよ」


「え、ええと……あ、アタシもあの場にいたからちがうよー」

「どこに?」

「あいつをボコボコにしてた! えへん」


 自白したわ。あっさり。なんておバカなのかしら。


「今のは、バラバラの騎士とやらが自分だって自白したのと同じなんですよ」

「バラの騎士だい! あっ……」

「あーはいはい。

 それに、髪の毛の根元が黒いまま。相変わらず不器用ですね」

「うわ。よく洗ったつもりだったのに」


 頭を抱えるゼルダ。


 ほんとうは明るく輝く茶髪に洗い残しなんかないんですけど、意地悪言いたくなったんです。

 期待にたがわずかわいい反応。


「あの趣味の悪いドレスはどこで手に入れたんですか?」

「あの男と前つきあってた女の人をつけてたら、古着屋に売り飛ばしてたからその場で買ったの。結構高かったんだよ。貯めてたお小遣い全部つかっちゃった!」


 ゼルダは、うちの奉公人達を手伝ったりしてお小遣いをもらってるんです。

 みんなこの子が、男爵令嬢だってこと忘れて、猫かわいがりしてるんです。


「目は? どうやって垂れ目にしたんです?」

「糊で目尻をちょっと張って。うまく垂れてたでしょう?」

「確かに、垂れてました」

「やったー。大成功!」


 無邪気に喜んでいますね。

 ほんとうに……かわいいんですから。もう。


「ナニが大成功ですか。

 もしあのバカが貴女よりお酒に強ければ、けがされてたところだったんですよ。

 それにもし、うちの奉公人達に捕まってたら、いくら貴女とはいえ庇えませんでした」


 といっても、ゼルダはこう見えて、高名な剣士だったお祖父じい様仕込みで、剣の腕と酒に関してはスゴイんです。

 ゼルダの実家の唯一の収入源は、屋敷の地下で作ってるやたら度の高い無許可の酒なので。

 まぁ、それを販売してるのはウチなんですが! 幻の名酒として高値で取引されてるんです。


 それに捕まえても庇ってしまったでしょうけど。

 うちは上から下まで貴女には甘いですから。

 ブホンは気づいてたから、捕まえる気はなかったでしょうし。


 ですが、二度とこんな危ない真似をしないように、念入りに釘を刺しておきましょう。

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