第3話 泥棒猫は7点中7点満点


 顔だけの間抜け婚約者アホ様は、私を哀れみの目で見下すと。


「高貴なオレ様は、金と欲にまみれた卑しいお前とは違うのダァッ!

 オレ様は真実の愛に生きるッ!」


 出ました真実の愛。

 つまり浮気してます宣言です。バカです。

 はい。アウト。慰謝料戴かせていただきますね。


 以前から次々と女に手を出してましたから……でも、本当にやらかすとは。

 人間というのは理性では測れぬものですね。


 さて、どんなお相手かしら?


 といっても、今までの数々のお相手からして、今度の相手も大体推測できます。


 その1 実家が子爵以下――圧倒的に上から目線でつきあえるからでしょうね。

 その2 背が低くて――庇護欲をかきたてられるからでしょうね。私は長身ですし。

 その3 垂れ目で――攻撃的でないのがいいんでしょうね。私はどちらかと言えば吊り目ですし。

 その4 ほわほわの金髪で――もふもふな小動物っぽさがいいんでしょうね。私は黒のストレートですし。

 その5 ほそいのに胸はぼいんぼいんで――ロリコンのくせに胸が好きなのよね。私の胸は普通ですし。

 その6 妙にひらひらのついた趣味の悪い派手なドレス――安っぽい美意識のかた同士惹かれ合うんでしょう。

 その7 舌っ足らず――自分より頭がいい相手とつきあいたくないんでしょうね。私はハキハキ話しますし。


 全員この7点のうち最低3点は備わってましたから、その路線なのでしょう。

 暴走するくらいですから、5点以上は確実ですね。


「ミュンヒハウゼン男爵令嬢エリザベータこそが真実の愛の相手なのダァッ!

 その姿を見て、女としての格差に絶望するがよいッ!」


 フリードリヒがバサッとマントをひるがえすと、小柄な女性が現れました。


 実家が子爵以下、背が低く、垂れ目、ほわほわの金髪、ほそいのに胸ぼいんぼいん。

 そして妙にヒラヒラのついた趣味の悪い派手なドレス。


「あたちがー、えりざべーたですぅ。うふふ」


 加えて舌っ足らず! 7点全部盛りです。全部は初めてですね。

 確かにフリードリヒの好みがそのまま形になった女です。


 だけど、ミュンヒハウゼン男爵家? そんな男爵家あったでしょうか?


 私は、我がコストレリア王国に属する貴族の顔と名前は全部把握しているんです。

 人間関係の正確な把握は商売にとって重要ですから。

 だけど、こんな美形かつ小動物系令嬢は記憶にありません。変ですね。

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