第38話 付いてきてくれ。スラムのほうだ

 リセプと情報交換をした翌々日の、深夜1時。


 オレは、オッフェンが入り浸っている酒場を訪れていた。


「オッフェン、話がある」


 酒場の大半を陣取って、パーティメンバーと呑んでいたオッフェンの背後から、オレは声を掛けた。


「ああ? ……テメエか、なんの用だ」


「ちょっと顔を貸してくれ」


「はぁ? 何を偉そうに……」


「クラスナのことなんだが、この場で話してもいいのか?」


 オッフェンの眼光がうろんなものに変わる。それから取り巻きに視線を巡らせて、さらに周囲の気配を探ってからから答えてきた。


「……なんのことだか分からんが、まぁいい」


 ここにいる面子は、オッフェンを含めて総勢六人。対するオレはもちろん一人だ。クラスナも付いてきていない。


 大方、クラスナ不在で六人もの仲間がいれば、魔法士であるオレ一人なんてどうにでもできると踏んだのだろう。


「おい、テメエら行くぞ」


 六人全員が一斉に立ち上がる。


 オレはそいつらを一瞥してから言った。


「付いてきてくれ。スラムのほうだ」


 そしてオレは、オッフェンたちを引き連れて酒場を後にした。

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