第29話 お母様は、クラスナ様に来て欲しいと申しておりました
その知らせは、朝食を食べ終わった時分に突然来てしまう。
通信魔法が宿った魔法具──通称・通信機から、切羽詰まった執事長の声が聞こえてきた。
「お父様が、昨日から帰って来られないとの旨を、今し方お母様からご連絡頂きました……」
「え? どういうこと……?」
この連絡は、最初、王都のクラスナ邸に入ったのだろう。それを聞いた執事長が、南国にいるクラスナへと繋いだわけか。
オレはクラスナの横で、二人のやりとりを固唾を呑んで見守っていた。セルフィーも、通信機のスピーカーをじっと見つめている。
そのスピーカーから、執事長の声が流れてきた。
「昨日の昼過ぎに、お母様は夕食の買い物に出掛けたそうなのですが、帰宅すると、お店にいるはずのお父様はおらず、店内も少し荒らされた形跡があったということで……お母様は、クラスナ様に来て欲しいと申しておりました」
店内に荒らされた形跡があったということは……強盗だろうか? だが店の金を強奪するならまだしも、店番をやっていた父親がいなくなるのは不自然だ。
もしかすると……強盗の犠牲になってしまい、その遺体はどこかに隠されたのか……?
オレは最悪のシナリオを思い浮かべてしまい頭を振ったが、クラスナの顔は青くなっている。同じ考えに行き着いてしまったのかもしれない。
クラスナは震える声で言った。
「わ、分かりました! すぐ実家に戻ると、お母さんへ伝えてください」
「承知しました」
そうして通信を切ると、クラスナは青い顔をオレに向ける。
「ごめんカルジ……わたし、行かなくちゃ……」
「もちろんだ。それとオレも同行するからな?」
「え、でも……巻き込むわけには……」
「パーティメンバーに水くさいこと言うなよ。セルフィーだって行くんだろ?」
オレがセルフィーに顔を向けると、さも「当然です」と言わんばかりの顔で頷いて来る。
しかしクラスナは逡巡したままだ。実家は危険かもしれないと思っているのだろう。
だからオレは言葉を続けた。
「オレだって魔法士だ。近接戦闘じゃ役に立てなくても、こういう場合だったら役に立てるはずだから、魔法士が多いに越したことはない。セルフィーだって頭が回るから、現場に行けば何か気がつくかもしれない」
それからクラスナの頭を撫でた。
「それに案外、捜索魔法を使ってみたら、近所の酒場で酔い潰れているだけかもしれないだろ? そう早合点するな」
オレの言葉に幾分か落ち着きを取り戻したのか、クラスナは不安げな表情を無理やり和らげた。
「うん……そうだね。ありがとう……カルジ」
「例には及ばないさ。そうしたらさっそく行くか?」
「ええ……着替えたらすぐ行こう。地元にも転移魔法のゲートは設置してあるから、ここから地元に転移するよ」
(今日は飲み会なので短めです(^^; 明日につづけ〜)
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