第7話 もはやオレには、組めるパーティはいない
ニックたちのパーティを追放されたその晩、オレは王都を歩いていた。
繁華街に入ると、様々な人間が酒を飲み交わしているが、オレはそれには目もくれず、黒いフードを目深に被って繁華街を抜けていく。
全身黒づくめのオレだったが、とくに不審がられる様子もない。冒険者は多種多様な服装をしているから、様々な人種が行き交う王都では、いちいち気に留めていてはキリがないのだろう。
(もしも、この討伐作戦が成功すれば……)
オレは、心の中でこれから行う作戦を復習する。
そもそも、ニックたちのパーティを追放されることは、けっこう前から予想できていたのだ。ニックたちは魔法士を交えた戦闘方法を知らなかったし、だからオレが足枷になっていた。
彼らも徐々にレベルが上がっていたから、もう半年もすれば、クエストの難易度も上げたくなってくるだろう。
そうなれば、オレはますます邪魔になるし、戦場では自身を守れない魔法士のオレでは危険度も増すのだ。
だからオレは、新たな借金までして一本のスクロールを購入していた。
魔法具全盛の時代に、魔法士用のスクロールは高額だったが、まだ一億ペルは残っている借金が多少増えたところで大したダメージもない。
そうして購入したのは
この魔法は、魔獣に気づかれることなく接敵したり、逃亡したりするための魔法だ。人間の匂いを消して、自分が出してしまう物音──足音や衣擦れも消してくれる。本当は姿も消して欲しいところだが、残念ながらそこまでの効果はない。
ただもちろん制限はあって、自分より上位の魔獣には効き目が弱い。魔獣の場合、明確なレベル付けがあるわけではないから、同種の魔獣であっても、その個体が強ければ効かない場合もある。
だから確実性はそんなに高いわけではないので、お世辞にも人気のある魔法とは言えなかった。あやふやな魔法よりも、パーティで防御編成を作ったほうが確実なのだ。
(だが……もはやオレには、組めるパーティはいない)
オレはこの隠行魔法を使って、道中の雑魚はやり過ごし、大物を狙う算段でいた。
さらに姿を隠すために夜の時間帯にして、黒いローブで全身を覆っている。
オレのレベルなら、なんども出向いた魔窟の森であれば、単独討伐でもやれるはずだ。
もし、この討伐作戦が上手くいけば……オレはパーティを組む必要がなくなる。
単独だから得られる報酬も数倍になる。
そうすれば借金だって繰り越し返済できるし、魔法士が単独でも活躍できると証明できれば、魔法士の必要性だって世間に再認識させられるかもしれない。
(きっと大丈夫だ……何もかも、上手くいく……)
だからオレは、気合いを入れて王都を出たのだった──
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