第8話 出発
「おはようございます」
翌朝、パーティメンバー全員がギルドのエントランス脇に揃った。
全員といっても僕含めて三人しかいないけど……。
「リーダーはレオンなんだから、レオンに丁寧な言葉遣いされるとなんか変な感じがするのよね……」
「それはそう。レオンはこのパーティーのリーダー、それに私の師匠だからもっとフランクな話し方でいい」
シアは20歳くらいだし、ヴァイオレットに至っては、侯爵令嬢だし歳は15で僕よりも三つは上。
ゆえに丁寧な口調を意識していたんだけど、二人にとってはそれがやりずらいらしい。
「わかったよ……なら対等な口を聞かせてもらう」
そう決めると二人は満足そうに頷いた。
「それはそうと、このパーティー名前が無いのよね……あった方が何かと便利だから名前をつけたいんだけど」
シアが切り出した。
「僕はまだ11歳、人生経験が浅いからこういうのは二人につけて欲しいかな」
人生経験が浅いだけじゃなくて語彙だって乏しい。
「そう……?なら私はドラゴンスレイヤーズを提案するわ!レオンのように私もヴァイオレットもドラゴンスレイヤーを目指すのよ!」
なんかちょっと恥ずかしくないか?
そんな名前で呼ばれるのは嫌だし名乗りたくもない。
「私なら、エーリュシオンかな……みんなにとっての理想郷、そんなパーティになって欲しい」
なるほど……居心地のいい関係を築いていくということなのかな……?
「レオン、選んで……?」
二人の視線がこちらへと集まった。
選べって言われても、選択肢がその二つなら選ぶまでもないと思うんだけど……。
「シアには悪いけど、エーリュシオンがいいかな」
「決め手は……?」
ヴァイオレットが一歩踏み込むような質問をしてきた。
「ドラゴンスレイヤーズはちょっと名乗りづらいかなって……」
素直に答えると
「何よそれーっ!」
ムキーッとシアは不服そうな態度をとったのだった。
◆❖◇◇❖◆
「そろそろ行きましょう、二人は僕の手をとってください」
二人は小首を傾げた。
そして顔を赤らめた。
「な、なんでよ!?」
「白昼堂々のラブロマンス……?」
全くもって見当違いだし、僕はラブロマンスなんてものを知らない。
「飛ぶんですよ」
見本がてらに浮いてみせる。
「何それ、面白そう!!」
エリスは興味津々、僕を見つめた。
一方のヴァイオレットはというと
「原初魔法……!?師匠は凄い!!」
こちらもまた食い入るように浮いた足を見つめていた。
「僕の魔力を循環させれば、二人は魔法のの効果対象になるから一緒に飛べるんだ」
いつかは、直接接触しなくても効果対象にする仕組みを発見したいと思っている。
「わかったわよ!!」
「ん……師匠の手、ちっちゃくて温かい」
エリスはそっぽを向きながら、ヴァイオレットは撫で回しながら、それぞれ手を繋いでくれた。
「なら行くよ!」
もう地図で方角はバッチリだし間違うこともないと思う。
【
「もう馬車要らずね……」
「本当に飛んでる!?」
二人は目を白黒させながら眼下の街並みを見つめていた。
「これなら今日中に着きそうだね」
正確には夕方までには、といったくらいだろうけど。
「もう一々驚いてたらキリがないわ」
「さすがは師匠!」
どうやら二人とも飛ぶことには慣れてくれたらしかった(違う)。
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