第6話 天才美少女
怨嗟の混じった視線とともに訓練場で賭けをやっていた男たちはギルドホールへと戻って行った。
「レオンー見てこれ!!」
机の上に置かれた大量の金貨や銀貨をシアが抱え込んでいた。
「もうホントに大穴だわ!」
ウィルヘルミナの元を去ってから一度もお金を使ったことのない僕にその価値は分からないがシアが喜んでくれたので、いいことをした気分になった。
「先程は助かりました」
ヴァイオレットと名乗った少女(と言っても僕より四つ以上は年上)のお陰で、正々堂々の勝負だったことが示されたわけだ。
「そんなのはどうでもいい。私が気になるのは貴方のその実力」
じぃ〜っと腰元の剣と僕とを交互に見比べるヴァイオレットさんは、首を傾げた。
「どうしたんですか?ヴァイオレットさん」
「私のことはヴァイオレットと呼び捨てで構わない。貴方は魔術師?それとも剣士なの?」
魔法が使えることがバレているのか……?
ひょっとしてステータスを看破されたか?
「なぜ魔術師だと?」
「私は鑑定のスキルを持っているから。でも貴方の鑑定スキルの方からレベルが高いのか、不明なところばっかり……」
ここに来てわかったことがある。
おそらく僕が思っているほど強い人は極めて少ない。
もちろん自信過剰になるつもりは無いし比較対象もローレン一人では情報不足もいいところだ。
だが事実がそうであるならある程度は実力を隠すべきなのかもしれない。
「何が見えた?」
「これは口外にしてもいいの?」
頬を赤らめ目を背けながらヴァイオレットは訊いて来た。
「僕の前だけなら」
そう返すと頷いたヴァイオレットは小声で
「スキルの属性魔法っていうのと……き、きょ、『巨乳愛好家』っていう称号があって……」
「なっ……!?」
よりにもよってそれを見られたのか!?
僕最大の汚点とも言っていいそれは、全てニナベルさんのせいなのだ。
「わ、私のこともそう言う目で見てたりする……?」
恥ずかしそうに腕をモジモジとさせるヴァイオレットさん。
その腕がたわわな胸をふにゅりと強調させていた。
「い、いや……そんなことないんじゃないかな〜。うん、この称号はある人に教育される過程で付けられちゃったやつ的な?」
信じてもらえるかは別としてそれでも誤解されないためには言い訳をせざるを得ない。
「そんなことないって言われるのは女性として見られてない気がして傷つく……」
なんなんだ?これが女心っていう奴なのか?
そういったものはあるということだけで、具体的に教えて貰ってはいない。
「それはそうと僕は魔術の方が剣術よりは得意なんだ」
気まずい話題と空気ゆえに強引に話を変えた。
「じゃあ上級魔法の上、超級魔法も使えたりするの?」
果たして素直に答えてもいいものか……。
そう思ってヴァイオレットの方を見ると、純粋な好奇心に爛々と目を輝かせていた。
邪な考えは無しか……。
それなら答えてもいいのかもしれない。
「うん、一応全て使えるも思う」
そう答えるとヴァイオレットは、僕との距離を詰めた。
「なら教えて!!私も上級魔法以上の魔法を使えるようになりたいから!」
その言葉に対して僕は迷うことなく答えた。
「いいよ、教えるよ」
今思えば僕は多分、反則みたいな人たちに魔法や剣術を教えてもらったのだろう。
ところが目の前の彼女はそういうわけじゃないけど。
それでも上級魔法が使えるというのだから、才能もあってそれでいて努力家なのだろう。
そこに興味が湧いたのだ。
彼女のそばにいれば、きっと僕も大きな刺激を受けると思う。
「でも実は弟子がもう一人いてね、それでもいいかな?」
机の上で金貨を積み上げて遊んでいるシアの方を見つめた。
称号には『
きっと今回の大勝ち味をしめてしまったのだろう……。
ヴァイオレットの方に向き直ると彼女は
「うん、一緒に励む人がいた方が楽しいから!!」
相変わらず爛々とした目をして言うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます