第2話 剣術の師匠はエルフの剣士

 「魔法はあらかた覚えたようだし、次は剣を習うわよ。己の実力を過信した魔術師は大抵、近接攻撃で負けるわ」


 十歳になった頃、僕は大抵の魔法をマスターしていた。

 

 「ウィルヘルミナが教えてくれるの?」


 生活の術も、魔法も何もかもウィルヘルミナが教えてくれてきた。


 「私は本来の姿になれば近接戦闘のことは考えなくていいの。だから私は剣を使えないわ」


 ウィルヘルミナに出来ないことがあるなんて意外だった。


 「だから剣術は別の先生に教えて貰うことにしたの」


 ウィルヘルミナが言い終わるか否かのところで、玄関をノックする音が聞こえた。


 「来たみたいだわ」


 ウィルヘルミナが玄関へ向かうと


 「ミーナ、久しぶり〜」

 「ニナこそ、随分早い到着じゃないかしら?」


 と賑やかな声が聞こえてきた。


 「で、早速だけどお弟子さんは何処?」

 「こっちよ」


 ウィルヘルミナの知り合いということは、きっと相当の実力者だ。

 そう考えると無意識のうちに僕は居住まいを正していた。


 「あら〜可愛いじゃない!?」


 現れたのはエルフだった。


 「私はニナベル・フェルドラン、ボクの名前は?」


 僕の身長に合わせてニナベルさんはしゃがんだ。

 心做しかウィルヘルミナよりも大きい胸元が目の前で揺れる。

 慌てて目を逸らした。


 「ウィルヘルミナがレオンってつけてくれました」


 訊けば勇敢な男に育って欲しいというウィルヘルミナの願いを込めた名前なのだという。


 「素敵な名前ね〜レオンくん」

 「うちのレオンに手を出したら今度こそ殺すわ」


 ウィルヘルミナは、ものすごい形相で二ナベルさんを睨みつけた。


 「うふふ、あれは八百年前だったかな〜?お互い決め手がなくて引き分けたじゃない?」

 「あの頃からさらに強くなっているから不覚は取らないけれど?」

 「それは私も同じよ〜?」

 「ぐぬぬ……」


 へぇ……ウィルヘルミナと勝負して引き分けに出来る人なんているんだ。

 しかもニナベルさんは剣士、どうやって戦ったんだろ……。


 「ニナベルさんは、凄腕なんですね!!」

 「あら〜わかってるじゃない!」


 ニコニコと微笑むとニナベルは、手招きした。


 「なら早速だけど、お稽古しましょうね〜」

 

 ウィルヘルミナの様子を窺うと


 「ふん、さっさと強くなりなさい」


 と、どこか不機嫌だった。


 ◆❖◇◇❖◆


 「まずは握り方から〜」


 そう言ってニナベルさんは後ろに回って後ろから僕の手の上に自分の手を重ねて丁寧に教えてくれる。

 でもまったくもって集中出来ない。

 なぜなら――――たゆん、たゆん♪

 そうちょうどニナベルさんのおっぱいが頭の上にあるからだ。

 頭上で揺れるそれが気になってしょうがないのだ。


 「覚えた〜?」

 「ひゃっ、ひゃいっ!」

 「ホントかな〜?別のところが気になってたんじゃないの〜?」

 「えっと……それは……」

 「そうねぇ〜お姉さんから一本でも取れたら、ご褒美に好き放題していいわ〜」


 考えるような素振りとともに、おもむろに胸を両手で押し上げ揺らして見せた。


 「なっ……べ、別に僕はご褒美が欲しいわけじゃ……ないです」


 口ではそう言いつつ目が追いかけてしまうわけで、そんな僕を見つめながらニヤニヤと笑っていた。

 そして恥ずかしさを覚えつつも、俄然やる気が出てきたのだった。 

 絶対に一本を取ってみせる――――と。

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