第124話・ジョニーのお土産。返品不可

 ジョニーさんとの合流は帝都から少し離れた場所だった。


 遊牧民でも居そうな広野を流れる川辺が合流地点らしい。


 開発もされてなく周囲には街道もないので、第三者に見られる心配がないのは救いか。


「よう。元気そうだな!」


 まるで何日か前に会った友人のように、気軽に声を掛けてきたジョニーさんは変わらない様子だった。


「おお! 空の勇者殿と似た船じゃな!」


「姫様。危のうございます」


 でもちょっと待って。


 見知らぬ人も一緒に居るんだけど。


 クリスティーナ様より豪華なドレスを着て、銀髪に褐色の肌をして耳が尖った……推定六歳程度の少女が一人と。


 同じく銀髪に褐色の肌と尖った耳をした、メアリーさんのようなメイドさんっぽい女の人。


 ジョニーさん。まさか荷物って人のことじゃないよね?




「わらわはミレーユ・シルフ・ド・オストローダじゃ!」


「オストローダってまさか……」


「現皇帝陛下の第九息女にございます」


「いや、助かったぜ。オレは子守りだけは苦手でな」


 先に到着していたシューティングスター号の隣に輸送機を着陸させると、向こうから挨拶をしてきたけど皇女様ってどういうことよ?


 ジョニーさん! 子守りとかそんな問題じゃないから!


 まさか本当に襲われてる皇女様でも助けたの!?


 誰だ!? さっき襲われてる馬車を助けたらなんて言ってたのは!


 父さん、母さん。のんびり旅行は早くも終わりそうです。




「どうだ? うめえだろ?」


「本当に美味いのじゃ!」


 合流したジョニーさんが最初に求めてきたのは、腹へったから飯を食おうぜという一言だった。


 話は飯を食いながらしようぜと、いつものノリで言われても困るんだが。


 クリスティーナ様も村のみんなも、流石に皇女様なんかが出てくるとは思わなかったようで驚いてるわ。


 だけど結局みんなで白いご飯を囲んで、本当に食事をしちゃうところがジョニーさんって凄いなって思う。


 皇女様とメイドさんも、普通に見知らぬオレ達の出したご飯と焼き魚と味噌汁食べてるし。


 少しは疑おうよ。


「それにしてもジョニー。あんた本当に次から次へと、いろいろやらかすね」


「普通に目の前で襲われてる馬車を見付けたんで、助けただけだぜ」


 食事は進みジュリアはニヤニヤと笑みを浮かべながらジョニーを笑ってるけど、本当にジョニーさん襲われてる馬車から皇女様なんて助けちゃったんだ。


 冗談抜きでファンタジーらしく、勇者の称号とか持ってないか?


 たださすがのジョニーさんも、駆け付けた時には二人以外は亡くなっていて、二人が殺されそうな瞬間に助けたみたい。


 本当にファンタジーを満喫してますね。


「それで皇女様達を帝都までお送りすればいいので?」


「それはいけません!」


 食事も終わりお茶にしながら詳しい事情を聞くが、ジョニーさんはやっぱり厄介事を持ち込んだのね。


「実は……」


 皇女様は食後のデザートにと出した、きな粉餅を美味しそうに頬張ってるけど、メイドさんは険しい表情で事情を話し始める。


 皇女様の緊張感の無さはなんなんだろう。


 クリスティーナ様もそうだったけど、皇女様は本物の皇家の姫様なのに。


 事情はめんどくさいでは済まない感じ。


 皇女様は七十才になる現皇帝の末娘らしいが、彼女は覇王という初代皇帝が持っていたスキルを持ってるんだって。


 なので皇帝は皇女様を跡継ぎにしようとしてるけど、皇女様の母親は皇帝が若い頃に惚れ込んだ、異民族のダークエルフを側室にした人らしい。


 平均的な人族の寿命が百年いかないこの世界で、ダークエルフは平均八百年ほど生きる長命種になる。


 ああ、皇女様の年齢は見た目通りらしい。


 なので皇女様を皇帝になんてしたら、異民族の王に数百年も支配されるだろと、他の皇族や貴族が嫌がり対立が生まれてると。


 また御家騒動なの?

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