第123話・旅行だよね?

 帝国領に入った輸送機は、光学迷彩バリアで機体を隠しながら一路帝都に向けて順調に飛行していた。


「意外に空中船がいるね」


「普通の空中船の動力は八割が帝国産よ。王国も含めて他は遺跡から出てきた物を直して使ってるだけだけど、帝国は動力を作れるらしいわ」


 ただ帝国領に入ると、王国では見掛けることすらなかった空中船を何隻か見かけている。


 帝国産空中船は、見た目は地球でいう、飛行船を小さくしたような形だけど、飛行船ならば浮力を得るためにガスが入ってる船体にも人が乗ってるみたい。


 浮力はヘリウムとかのガスじゃないっぽいね。


「凄いじゃないのさ」


「帝国領内は広いから、空中船で各都市を回る定期便があるんだって。王国だと王家と大貴族が少し持ってるけど、費用がかかるみたいで使ってない貴族も多いらしいわ」


 クリスティーナ様、帝国のこといろいろ詳しいね。


 もしかして来てみたかったのかな?


 それにしても帝国ってすごいじゃないか。


 この危険な世界で町と町の定期便を運行するなんて。


 まあ月に一度の定期便が普通で、帝都と主要都市でも月に二回くらいみたいだけど。


 料金はとにかく高いし、場合によってはワイバーンや飛竜などの空飛ぶ魔物に襲われて墜落することもあるみたい。


 ただ何より移動時間が早いのと、地上の旅も安全などあってないようなものだから、貴族のみならず平民でもお金さえあれば利用してるんだってさ。




「アナタ。ジョニーさんも合流するって」


「メルティ。その呼び方勘弁して」


「照れなくてもいいのよ?」


 敵襲もなく快適な旅だけど、輸送機を操縦してるアンドロイドのメルティが、ジョニーさんの名前を口にしたら少し嫌な予感がする。


 というかメルティさんや。まだ妻のふりをしていたのね。


 メルティは青い髪のショートボブにした、エルと同じ万能型のアンドロイドの一人。


 造った時のコンセプトは、二十代前半のエッチな雰囲気のする色気むんむんなお姉さん。


 いやジュリアが姉御みたいになったからさ。


 その反省を生かして造ったつもりなんだよね。


 思わせ振りな態度をしながらも、意外にガードが固い小悪魔的な女性をイメージしたんだけど。


 造ったの大分前だからさ。若気の至りってやつ?


 うん。反省してる。


 でも心の中では後悔はしてないんだな不思議と。


 彼女は胸元を常に開けてるから、昨日なんかも若い男の注目を集めていたけど。


 ケティとクリスティーナ様の視線が、少し冷たい気がするのは気のせいだきっと。


 メアリーさんとか花嫁さんは呆れてる気もするけど、それも気のせいだよね。


「ジョニーのやつどうしたんだい?」


「ちょっと困ったお土産があるそうよ」


「やるじゃないか。ジョニーのやつ。さあ冒険だよ!」


「なになに? またなんかあるの!?」


 周りの反応はともかくジョニーさん。


 困ったお土産は要らないです。


 厄介事の匂いがプンプンします。


 ジュリアばかりか、クリスティーナ様までも喜んでるのは何故?


 物語のような大冒険なんかしないよ?


 このまま島に引き返そうかな?


「手遅れだと思う」


 ケティさんや。人の心を読まないでおくれ。


「司令はわかりやすい」


 新婚さん達まで結構嬉しそう。


 娯楽代わりの厄介事なんて御免なんだが。


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