第122話・新婚旅行の手前
帝国。正式にはオストローダ帝国は、ワイマール王国がある大陸の西方で最大規模を誇る国の一つだ。
オルボア公国も元は帝国の一部だったらしいが、百年程前に軍事と外交の一部を帝国が握る帝国の保護国として独立したみたい。
ただ元々砂漠や乾燥地帯で統治の苦労の割に実入りが少ないことから、帝国の関心が薄い隙に力を付けて、事実上の独立国家として振る舞ってるとのこと。
肝心の帝国についてはおよそ八百年前に成立した国らしく、近隣では最も歴史ある国家の一つらしい。
「ワイマール王国建国の際にも、帝国が支援していたという話よ。立場的にも建国の経緯としても上だから、王国では帝国が属国にしようとしてるって警戒してるけど、帝国が王国に過剰な要求をしたことはないそうよ」
「詳しいですね。クリスティーナ様」
「常識よ。帝国とすれば近隣が安定してれば、他国に介入まではしないだろうってお祖父様が言ってたわ」
ちなみに帝国の情報を語ってくれたのは、クリスティーナ様だった。
ちょっとお転婆な子だけど流石に、貴族としての教育は受けていたみたい。
うちのアンドロイドも最近はオルボアに絡んで帝国でも調査をしてるけど、帝国は名前に似ずにと言えば怒られるかもしれないが、領土的な野心はあまりないらしい。
というか現状の文明レベルでは、国家としての維持がギリギリといえるほど領土が広いみたい。
地球でいうローマ帝国に似てるかもしれなく、帝国の辺境では名ばかりの独立自治をしてる場所が結構あるんだってさ。
「流石はお嬢様ですね」
「フフン。当然よ。……って実は私も帝国に来たの、初めてなのよね」
新婚さんと家族のみんなは、クリスティーナ様の帝国の説明に感心した様子で聞いていて、クリスティーナ様自身は褒められると嬉しそうにしてる。
村のみんなは帝国という国があるのは知ってるけど、それ以上はよく知らないようだ。
平民は冒険者や商人にでもならない限りは、ほとんどが生まれ育った町や村とその近隣しか行くことはないまま人生を終える。
地球でいう海外旅行よりもハードルが高く、宇宙旅行にでも行く感覚なのかもしれない。
「フフフ。新しい冒険だよ!」
「ジュリア。そういうのジョニーさんだけで、十分なんだけど」
「襲われてる馬車を助けると、そこにはお姫様が!」
「ジョニーさんなら普通にありそうだなぁ」
ただ久々に島を出たからか、ジュリアはまた冒険だって騒いでるのが気になる。
いやジョニーさんは本当不思議なほど騒動に巻き込まれたり、首を突っ込みながら冒険してるけどさ。
普通は、そうそうイベントに遭遇しないよ。
「アレックスも何だかんだって、巻き込まれそう」
「クリスティーナ様。そういう不吉なことは言わないでください」
「お人好しなのよ。アレックスもジョニーさんって人も。異邦人は歴史的に見ても、お人好しが多いってお祖父様も言ってたわ」
「お人好しというか、困ってる人は見捨てるよりも助けた方がいいのは同じでしょう?」
「お祖父様ならそうするわね。でも普通は助けない人も多いわよ」
今度は本当に普通の旅行でいいんだからね?
クリスティーナ様までもが、ちょっと期待した表情なのは何故!
それにお人好しって、そんなつもりはないんだけどな。
ジョニーさんもそれは同じだと思う。
自分の為に、自分が満足する生き方のためにやってるだけだからね。
世のため人のためなんて、少なくともオレは最優先で考えてはない。
「まあ、なるようになるか」
「アレックス達もジョニーさんっていう、空の勇者みたいに凄い空中船があるんでしょ! ドラゴンだって余裕よね!」
「ジョニーさんは本当にドラゴンを何匹か倒してますよ」
「一緒にされると辛いなぁ」
クリスティーナ様は勇者に憧れがあるようだけど、オレにも同じことが出来ると期待されると辛い。
まあ撃てと命令するだけなら出来るけどさ。
ジョニーさんも何気にハードル上げないで欲しいな。
このあとに来るかもしれない同胞のためにもさ。
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