第125話・皇女様の事情

「そもそもスキルとは一体どのようなものなのでしょう?」


「うむ。わらわの覇王スキルは初代皇帝が異邦からもたらした神の御技じゃな。覇王スキルは幾つかの能力があっての。その一つは人のステータスという能力が見える。お主は宇宙要塞の主という、変わった称号があるのじゃ。宇宙要塞とはなんぞや?」


 スキル。ファンタジー風に言うならば、特技とか技能とみるべきだけど今一つ見えてこない。


 なので直接皇女様とメイドさんに尋ねたが、その答えにやはりという驚きと、まさかという戸惑いを感じてしまった。


「宇宙要塞ってのは城のことだぜ。場所は言えねえがアレックスは異邦の城を持ってる」


「なるほど。異邦の城か。凄いのう。ならばこのような立派な船を持ってるのも納得じゃ」


 ステータス。いわゆるオレ達の情報が見られてることに危機感を感じたが、見えるのは皇女様一人のようでメイドさんには見えないらしい。


 しかも宇宙要塞まで見抜かれて返答に困るが、そこはジョニーさんが嘘を吐くことをせずに上手く話を収めてくれた。


 嘘が吐けない人かと思ったけど、対人スキル高いんだね。


「もしかしてジョニーは勇者の称号でもあるのかい?」


「うむ。空の勇者殿にも勇者の称号があるのじゃ」


 そもそもオレ達にステータスというのが適応されることに驚いたが、ジュリアは聞きたいけど聞くのが怖いジョニーさんの称号を聞いちゃったよ。


 やっぱり勇者になってたんだね。


「姫様。そのくらいで。覇王スキルのことは他で話してはなりません」


「じゃが、助けてもらうのに隠しておけまい」


「ですが、人の内側を見れると話すと必ず争いが……」


 ステータスに称号か。興味深いね。


 島にあった海賊のお宝に物の鑑定ができるメガネがあったらしいけど、人の鑑定も出来るとは。


 ただメイドさんは顔色を悪くして皇女様を止めてる。


 何処まで見えるかしらないけど、人のステータスを見えるなんて知られていいこと無かったんだろうね。


「それで私達に何を求めてるのです?」


「母上を助けて欲しいのじゃ。母上は皇宮に捕らわれておる」


 何となく予想していたけど、ジョニーさんのお土産は本当に厄介だわ。


「捕らわれてるとは皇帝陛下にですか?」


「いや、陛下は二年程前から寝たきりなのじゃ。母上を捕らえてるのは、事実上国を動かしておる宰相と第一皇子のバルバドスじゃ。わらわと母上は帝位にも帝国にも興味はない。母上の田舎で静かに暮らしたいだけなのじゃが、それも認めてくれん」


 そのまま皇女様とメイドさんに話を聞くが、現皇帝は覇王スキルを持つ者が皇族に生まれたのは、世界が荒れる予兆だと考えたようで皇女様に帝位を継がせたいらしい。


 だが周りの皇族や貴族には賛成派は少なく、皇女様本人も母親もそれを望んでない。


 ならば皇位継承を放棄すればいいのではと思うが、皇帝はそれを許さないらしい。


 それに皇女様の皇帝継承を反対してる者達も皇女様を自由にする気はないらしく、皇宮で生涯監禁しておこうとしたので母親が少数の護衛で逃がしたところ、追手に見つかり殺されそうになったと。


 なんか滅茶苦茶だな。


「幾つか聞きたいのですが、皇位継承に関して決定権があるのは皇帝陛下でしょうか? あと過去に覇王スキルを持った皇族は、どれくらい居てどうしたのでしょう?」


「皇位継承は皇帝陛下の専権事項です。私も詳しく存じませんが、代々の皇帝陛下しか知らぬ秘密もあるようなんです。過去の覇王スキルに関しては、歴史として残されてるのは初代様と姫様を除いて僅かニ例。いずれも皇帝陛下に即位してます」


 どうしようかとエルに視線を向けると、エルは追加で質問をして状況を更に見極めるつもりらしい。


 なんかあまりにドロドロした話に、ジョニーさんはお手上げだと言わんばかりの表情をしてる。


 こういう白黒はっきりしない問題苦手なんだろうね。


「問題はその先例がの。いずれも魔王が世に現れた時なのじゃ。偶然なのかどうかしらぬがの。陛下はまた魔王が世に現れると思っておるようでな」


 しかも御家騒動の話に魔王まで出てくるってどうなのよ?


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