第109話・閑話・ジョニー。また財宝を見つける

「良かったですね。ジョニーさん。また財宝ですよ」


「そっちにやるよ。こんなもん何処に置くんだよ」


 遺跡のダンジョンも地下十階に来たら、高そうな白銀の石像が居やがったぜ。


 何発かレーザーライフルも防ぐ魔法のバリアを張っていたが、オレとアンドロイド達でレーザーライフルを撃ちまくったらバリアごと破壊した。


 石像には悪いが、こっちは知恵と勇気で勝負するファンタジーのプレイヤーじゃないんでね。


 物量と技術で勝負するSFのプレイヤーなんだよ。


「うちの司令が呆れて笑ってましたよ。財宝を邪魔だと言う人が居ると思わなかったと」


「財宝で米の飯が食えるならオレも喜ぶぜ。対価は米にしてくれや」


「前回の財宝は、国を幾つか余裕で買えるほど価値があったようです。あまりの価値に表に出せば、価値が暴落する程です。米に換算すると千年でも食べきれませんよ」


「そいつは良かった。米が食えなくなるのだけが心配なんだよ」


 石像が守ってやがったのは宝物庫だった。


 金銀財宝からマジックアイテムに、どっかの勇者でも持ってそうな武器や防具がズラリと。


 別にオレもカネは嫌いじゃねえよ。


 ただ限度があるだろ?


 飯は補給と現地で食うのと半々くらいだが、金貨だって田舎じゃ釣が無くて使えねえ時があるんだぜ。


 ちょっといい酒飲んで女を抱いてもたかが知れてるんだ。


 家なんて持つ気もねえし、堅苦しい貴族様になる気もねえ。


 あんまり邪魔なんで田舎の孤児院に幾らか置いてきたら、涙ながらに拝まれちまうしよ。


 おかげで空の勇者だなんて、中二病みたいな二つ名貰っちまったじゃねえか。


「これは凄いですね。魔法の道具袋です」


「ほう。本当ゲームみたいだな。どういう仕組みだ?」


「現状では推測しか出来ませんが。何処か別の空間と繋いでるか、空間自体を広げているか。転移魔法があると考えると、恐らく前者ではないかと思われます」


「まるで昔のアニメのタヌキのポケットだな。まあ邪魔なお宝を運ぶのが楽でいいじゃねえか」


 宝物庫はかなり広く、学校の教室くらいはあるな。


 アンドロイド達の話だと、ここの遺跡は元シェルターか何かだったのではと言ってるが。


 ダンジョン化しておかしくはなってやがるが、食料を生産してたらしい地下農場やらもあったしよ。


 おかげで植物やら家畜の魔物があちこちに居るぜ。


 まあご丁寧に宝物庫に、魔法の道具袋なんか置いていた先人に感謝するかね。


 流石に地下十階をこんな物抱えて往復するのは御免だからよ。


「ん?」


「ジョニーさん。危ないですよ。罠があるかも」


「おう。大丈夫みたいだぜ」


 アンドロイド達が財宝を魔法の道具袋に詰め込むのを見ながら宝物庫をぶらぶらしてたら、偶然妙なスイッチを見つけたんでつい押しちまったぜ。


 そしたら更に地下に行く階段が現れたんで慎重に降りていくと、そこはかなり広い何かの研究施設のような場所だった。


「こいつは……」


「流石ですね。ジョニーさん。またとんでもない物を見つけましたね」


 あいにくとほとんどの物は朽ち果てているが、そこには白骨化した部屋の主と共に、でかい何かの機械やらそれの制御装置のようなものが幾つもありやがる。


「何だか分かるか?」


「一つはこの遺跡の動力でしょう。 他はよく分かりませんね。技術レベル的には全体として二十世紀後半から、一部抜きん出た物はあるようです。動力源は魔法力ですかね?」


「ファンタジーらしくねえな」


「ここの遺跡は科学的な思考の元で作られています。要は基礎になるのが物理学か魔法学かの違いだけです」


 あんまりいい予感はしねえな。


 なんでこんな技術を持った連中が滅んだんだ?


「アレックスに伝えてくれ。油断するなってな。嫌な予感がする」


「了解しました。ここは調査隊が来るまで、触れぬ方がいいでしょう」


「同感だ」


 この白骨化した野郎はここで何をしてたんだ?


 この星にはこんな遺跡がごろごろしてるのか?


「ジョニーさん?」


「酒でもありゃ良かったんだがな」


 事情は知らねえが安らかに眠ってくれ。


 本当は酒でも供えたかったんだが、ねえからコーヒーで我慢してくれや。


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