第106話・王国側の近況
「やっぱ、このまま終わらないよな」
「小粒なのが多いの」
島の生活は順調だけど、伯爵様の祖国ワイマール王国の混乱は未だ収まってない。
国王以下ミューラー公爵などあの日王城に居た者は、なんとか国の取りまとめとオルボア公国との戦争に備えている。
しかし逆に言えばあの日に王城に居なかった、もっと言えば王都に居なかった貴族には寝耳に水の話だった。
いつ死んだか分からぬ伯爵様が、英霊となり現れ国の危機を救った。
そんなリアリティの無い話、まともな人間ならそのままは信じないだろう。
それに伯爵様のような中立派はともかく、王太子派と第二王子派は振り上げた拳をはいそうですかと下ろせない貴族も多いらしい。
「これ陽動か?」
「当人達はそう信じてるようです。確証は掴めてませんが、かなり前から分断工作が行われていた形跡があります」
なんとこの状況で一部の王太子派の貴族が、伯爵様が貴族を辞めたのと同じ建国の盟約を理由に蜂起していた。
その状況確認と対策の必要の有無も含めて検討する為に、オレはエルと伯爵様と、宇宙要塞の中央指令室と通信しながら説明を受けている。
素人のオレでも分かる不自然な蜂起の裏には、やはりオルボアが居ると。
随分と地道に工作してたんだね。
まるで白蟻だな。
「オルボアの動きは?」
「ワイマール王国の王位継承問題の事件は、自分達とは無関係だと抗議してます。それと国境を封鎖された対抗措置として、国境に軍を張り付けていますので、いつでも侵攻は可能です」
まるでどっかの世界にある、世界の中心を自称する国みたいに厚かましいな。
「ただ帝国も軍の一部を、オルボア公国の国境近くに移して圧力をかけてます。現状では実際に侵攻するのは難しいはずなのですが」
「何が狙いかのう」
対抗する王国は軍と周辺貴族の諸公軍で討伐隊を結成して、冒険者や傭兵まで雇用して鎮圧するつもりらしいが、何かおかしい気がする。
伯爵様もそれを考えてるのだろう。
ここまで見えないように食い込んでいた白蟻君が、勝ち目のない蜂起をさせるだろうか?
「狙いは王都ではないかと私達は考えてます。王国側もその可能性に気付き兵力を残してますが。またあの化け物を使われると被害は相応に出るかと」
エル達アンドロイドの予測では狙いは王都か。
確かに今王都が落ちれば国家としてのワイマール王国はどうなるか分からないけど。
問題はどうやってオルボアが王都を狙うかだよね。
「そもそもオルボアの目的って何なんだろうね。世界征服?」
「過去に何度かそんなことをしようとした国があるが、成功したことはないぞ」
「エル。帝国は?」
「現皇帝はオルボアを警戒していますが、帝国内には親オルボア派もそれなりに居ますね」
「狙いは帝国だったりして」
「帝国内は情報収集を開始したばかりで、情報不足な為なんとも言えません。ただ大国ですから、そう易々とオルボアの策に嵌まるとは思えません」
本命は王都で対抗は分からず大穴が帝国かな?
このまま終わるとは思えないけど、現状では見てるしか出来ない。
介入するのは構わないが、責任取れない介入はちょっとね。
英霊様か空の勇者が暴れれば何か分かる気もするけど、国と国の問題に個人が安易に介入するのはね。
今は情報収集を強化して見守るしかないか。
幸い王国側は国王が目を覚ましたからな。
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