第31話・海賊退治のお祝いパーティー
その夜ボルトンさんの屋敷では海賊退治の祝いが行われた。
商会の部下や船乗りとその家族に、仲間の商会の人間に捕まっていた人達を集めて、広い庭でバーベキューのような直火で肉や魚を焼いて振る舞うパーティだ。
「うめぇ! ここに来る途中の町や村は、当たり外れが激しくてな!」
味は少し濃いめだけど、直火で焼いた香ばしさに肉や魚の焼けた脂が相まって、口の中で噛むとじわっと染み出してくる肉や魚の脂と旨味が、より一層広がるようで本当に美味しい。
肉や魚も素材がいいようで、直火故に下手な調味料が不要だと思えるほどだ。
ボルトンさんは味付けに塩と胡椒に唐辛子系も使い香辛料を贅沢に使ってるけど、ジョニーさんいわくここに来るまでは全体として塩が薄い傾向にあったようだ。
香辛料もここまで使うのはなかったというので、かなり奮発したんだろうね。
まあ、港町なので塩や香辛料が比較的手に入りやすいのかもしれないが。
ジュリアはセレスと一緒に、海賊と戦った人達と海賊退治の話で盛り上がり、子供たちなんかが瞳を輝かせて聞いてる。
ケティも海賊のアジトで助けた人達に、入れ替わりお礼を言われながらバクバクと食べている。
オレはエルと少し端の方で大人しく食べてたけど、直接戦ってもないオレ達までお礼を言われるもんだから、少しむず痒くなるね。
「よう。味はどうだ?」
「美味しいですよ。ちょっとビックリするくらい」
「ガハハ。そうだろ。陸に上がった時くらいは、腹一杯美味いもん食わねえとな!」
「そういえばみんな無事だったみたいですね?」
「ああ、ホッとしたよ。狙いはオレなんだろう」
そんなオレとエルの所に、ほろ酔いのボルトンさんがやって来る。
意外にと言っては失礼だが、ボルトンさんは招待した人達一人一人に話し掛けて歩いてたんだ。
単純な人なんだろうけど、こういう裏表のないところが好かれる原因だろう。
「ボルトンさん。仮定の話で申し訳ありませんが、仮に代官との癒着の証拠があったとして、代官やノーマン商会をなんとか出来ますか?」
「……難しいとこだな。代官は五年で交代するだけの木っ端役人だが、人選は有力な貴族様が持ち回りでやってるから、王都に訴え出てもたいした額じゃねえなら握り潰されるだろう。ノーマン商会はよく分からん。町や国のことを考えりゃあやり過ぎなんだが、あの狡猾な野郎のことだ。あちこちに金ばら蒔いてるだろうしな」
「そうですか」
ジュリアが指摘した部下や商会の人の身内も全員無事だっただけに機嫌はいいが、突如エルが代官とノーマン商会との不正の話を持ち出すもボルトンさんの返答は芳しくない。
代官との不正の証拠なら見つかったのかな?
しかしこの国はあまりいい国には思えないな。
ジョニーさんの冒険者ギルドの話も凄かったし。なんというかテンプレ主人公みたいに絡まれて倒したんだから。
ただジョニーさんの違うとこは、それでギルドにあっさりと見切りを付けたことだろう。
社会人とすればある意味当然なんだけどね。
仮の身分を保証し仕事を斡旋するのはいいが、それだけのための代償が緊急時に戦力として強制動員されるとか、実力に合わせて管理されるなんて冗談じゃない。
何よりジョニーさんが言ってたが、信頼出来ない相手の仕事なんて信頼出来るはずがないんだよね。
「まあ、代官よりは先に冒険者ギルドのギルド長がくたばりそうだがな。あの傭兵どもはここいらの冒険者ギルドの中でも、かなりの腕利きらしくってな。それが半分死んじまって残りも明日処刑だからな。すぐに王都にあるこの国の本部が動くぞ」
「ボルトンさん。今夜は招待した人達は?」
「家に泊めるさ。念のためな。みんな家族みたいなもんだから、雑魚寝でいつもやってるしな」
ボルトンさんは単純だが決して愚かではない。
エルが一つ聞くと関連する情報をあっさり教えてくれるし、それを聞いたエルの反応も見てる。
まあ海賊のアジトの襲撃の時に、陸地から回り込むように進言したのはエルだしね。それなりに信頼はしてるのだろう。
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