第30話・アレックスとジョニー

「ああ、そうだ。一応聞いとくが、元の世界に戻れそうか?」


「現時点では手懸かりすら掴めていません。そもそも私達アンドロイドとプレイヤーが、同じく現実世界に転移してきたことの説明すら出来ませんので」


「そうか」


「なんだいジョニー。帰りたいのかい?」


「いや、米がないなら帰りたかったが、米があるならどっちでもいい。ただリアルがどうなってるか、少し気になるがな」


 結局現時点ではこちらから討って出れないことにため息を溢したジョニーさんは、ついでにあまり期待してない様子で肝心の元の世界に帰る情報を尋ねてきた。


 元の世界にさほど未練はないようだが、帰れるかどうかはやはり気になるようだね。


 まあオレなんかと違い、人付き合いもありそうだし当然だろう。


 でも本当に心が強そうな人だね。


「貴方の体を調べさせてほしい」


「おいおい、お嬢ちゃんいきなりどうしたんだ?」


「司令と私達の身体には、この世界の魔法の力が宿ってる。貴方の体がどうなってるのか、確かめたい」


「あー、別に構わんがお嬢ちゃんは噂に聞く医療型か?」


「うん。ケティ」


「すげえな。開発コストがバカ高い医療型まで居るんだ」


「うちはアンドロイドだけで百二十体居るからね。最高ランクの」


「ひゃ、ひゃくにじゅったい!?」


「医療型アンドロイドは医学とか遺伝子工学とかの技術進歩には必要ですし、有機アンドロイドの独自開発にも必要なんですよ。一体でも居ると、次からアンドロイドの開発費が下がっていきますから」


 ある程度情報交換が終わると、ケティは突然ジョニーさんの身体を調べたいと何の前置きもなく言い出した。


 ジョニーさんはそんなケティの言葉に驚いたみたいだけど、それ以上に医療型の存在とアンドロイドの数に驚かされたようだ。


 元々アンドロイド自体が開発コストが高い上に、医療型のアンドロイドは更に高い開発コストが必要だった。


 そもそも生体強化されたプレイヤーには、医療なんて市販のナノマシン治療薬があれば十分だし、直接戦力にもならない医療型は持ってないプレイヤーの方が圧倒的に多い。


 ただプレイヤーの技術には分野とレベルがあり、医療や遺伝子工学など医療型アンドロイドにしか技術開発出来ない分野が幾つかある。


 そこに投資して技術力を上げないと、独自に自由なアンドロイドの開発は出来ないんだ。


 もちろん要塞シルバーンも、全ての分野で最高レベルにならないと作れないものだけど。


「廃人プレイヤーってすげぇな」


「アンドロイド屋をしてた人達は、みんな医療型を持ってましたよ」


 人を目の前にして廃人呼ばわりするし、この人やっぱり口が悪いね。悪気がないだけにタチが悪い。


「簡易検査だとやはり貴方も同類の力がある」


「じゃあオレも魔法が使えるのかい?」


「その可能性が高い」


 ケティの簡易検査では、やはりジョニーさんも未知の力を体内に宿してるらしい。


 やはりこの銀河に来ると得られる力なんだろうか。


 そういえばケティは海賊のアジトで奴隷にされていた人達を治療する際に、ナノマシンも使ったようだ。


 効果はギャラクシー・オブ・プラネットの時と、変わらず問題もなかったようでひと安心だな。


 この惑星の回復薬が足りなかった為の緊急措置だったようだが、おかげでケティは回復魔法の使い手だとボルトンさん達に感謝されている。


 ボルトンさんいわく回復魔法の使い手は、人気で貴族から商人に冒険者まで引っ張りだこで食いっぱぐれがないとか。


 実質的な医者だしね。当然と言えば当然なんだけど。



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