第28話・流星のジョニー
「久しぶりだね。ジョニー。米ならうちのを分けてやるよ」
「やっぱりジュリアか! セレスに乳神様までいるじゃねえか!」
やっぱりローブの男がプレイヤーか。
ニヤリと意味ありげな笑みを浮かべたジュリアが、米を分けてやると言うと満面の笑みで喜んだよ。
続けてセレスの名を呼んだまではいいけど、最後にエルの姿を見て言ってはいけない言葉を。
「ジョニー。そのアダ名はダメだって。米無くなるよ?」
「やべえ!? 忘れてた! すまん! 本当にすまん!」
乳神様のエル。
ギャラクシー・オブ・プラネットでのエルの二つ名なんだけど、馬鹿なプレイヤーが胸のことばっかり騒ぐから本人が嫌がった二つ名だ。
明らかに不満げなエルの顔が見えたのだろう。
先程まで態度が大きかったジョニーは平謝りしてる。
これもしかして米の為に謝ってるの?
「知り合いか?」
「まあ、そんなとこだね」
ただこれにはまさか知り合いだとは思わなかっただろう、ボルトンさん達が一番驚いている。
「それにしても誘拐ばっかりか、海賊と傭兵使って殺そうとは穏やかじゃねえな」
「ああ。あんた達が居なきゃオレ達は今頃どうなってたか。まさかここまでするとは、正気とは思えねえ」
場の雰囲気が一段落するとボルトンさんは状況を整理するように話し始めるが、ジョニーさんが言うように穏やかではない。
何か急ぐ訳でもあるのか、それともこの惑星ではこれが日常茶飯事なのかオレには分からないが。
「ボルトン。あんたの部下の女子供を確かめた方がいいね。アタシがマーチスなら次はそうするよ」
「……ゴルバ! 今夜は海賊退治のパーティするから、みんなの家族を呼べ。来られねえ奴はお前自身で顔見て確認してこい! それと他の商会にも誘拐に気を付けるように知らせを出せ」
最早次に何が起きてもおかしくはなく、ジュリアは今後の対応に悩むボルトンさんにアドバイスをしていた。
ちょっと性格に難はあるが、ジュリアが優秀なアンドロイドであることに変わりはないし、ここまで来れば次が身内の弱い者であることはオレにも分かる。
ボルトンさんはすぐに部下に指示を出していた。何事も無ければいいんだけど。
「よう。いいか?」
その後ボルトンさんは、自分も仲間の商会を見に行くと出てしまった。
オレ達はボルトンさんの屋敷の宛がわれた部屋でゆっくりしながら、今後の対応を話そうとしたらジョニーさんが部屋にやって来た。
「あっ、どうぞ」
「改めてオレはジョニー。銀河旅団の戦闘隊隊長を務めてた」
「アレックスです。ソロであまり人前に出ないので初対面ですね」
他の人が居なくなったことで、ジョニーさんはわざわざ挨拶に来たらしい。
ジュリアが粗暴だが義理人情に厚いと言っていた意味を、少しだけ理解した気がする。
「まあギャラプラだと人前に出ねえ奴は珍しくねえけどな。アレックスほど素性が謎を呼んだ奴も珍しいだろ。一時期NPC説まであったくらいだしな。まさかこんなところで会うなんてな」
「ところでジョニー。あんたの相棒はどうしたんだい? まさか単身で来た訳じゃないだろ?」
「ああシューティングスターなら、ゴルバニアって町の西の森にあるよ。エネルギー切れてるし最後に特攻したから壊れてな」
悪い人じゃないんだろう。ただしあまり人の心情を察するのは得意ではないと。
エルを乳神様と呼んだし、オレが他のプレイヤーを避けてたことを理由も気にせず懐かしそうに語る辺り、好き嫌いが分かれそうな人だけど。
「お前らは何で来た?まさか宇宙戦艦か?」
「要塞シルバーンよ」
「要塞シルバーンだと!? お前ら銀河を征服でもする気かよ! あの魔改造された要塞ごと来るなんて! うちのクランでも持ってなかったのに!!」
「まさか。うちの司令、そんなことするタイプじゃないの知ってるでしょ?」
「なあ、物は相談なんだがオレのシューティングスターを回収して直してくれねえか? 代金なら分割してでも払うからよ」
「構いませんよ。代金は……」
「ジョニーさん。代金はよろしければ、貴方がこちらに来てからの情報でいかがでしょうか?」
ジュリアとはどうやら気が合うみたいで親しげに話しているが、オレ達が要塞シルバーンでこちらに来たのを教えると、今日一番の驚きを見せた。
まあ個人のプレイヤーがクランに対抗するにはアンドロイドを増やして艦隊を増強するしかないんだけど、要塞シルバーンはその上を行く。
並のプレイ時間と課金では、クラン単位でも完成させることも出来ないからね。
そんなジョニーさんに戦闘機の修理を頼まれたオレはすぐに快諾したが、エルに代金をどうするか振るとエルはお金よりもジョニーさんの情報を求めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます