第15話・医療と薬
それから一週間ほどは、要塞シルバーンと地上を行ったり来たりしている。
無人島の拠点設営状況を眺めたり、唯一オレにも理解出来る畑作りを指揮しながら時間を過ごしていた。
「この惑星の回復薬出来た」
「へ~、飲み薬か? ポーションみたいだな」
そんなこの日はケティが、回復薬だという栄養ドリンクサイズの飲み薬の試作品を持ってきてくれた。
ここ数日姿が見えないと思ったら、医療部のアンドロイド達とこの惑星の薬の調査研究をしていたらしい。
実はすでに戦闘部のアンドロイド数体が、この惑星の文明の情報や品物を手に入れる為に知的生命体の街に行ってる。
無人島で駆除した敵性生命体の肉や皮に骨などを売却して、食物の種や薬などを研究用に入手していたんだ。
今回医療部はそれを再現することが出来たみたい。
尤もナノマシンを操り、治療が出来るケティには必要ない薬だけど。
ギャラクシー・オブ・プラネットでは、誰でも使えて怪我が瞬時に治るナノマシン治療薬など医療分野でも発達してるんだ。
正直なところ島にいる限りは必要とは思わないけど、外部へ販売とか島の外に出る時には使えるから、技術蓄積の為に頑張って開発したようである。
「私達アンドロイドの負傷も治るから、あっても邪魔にはならない」
ただこの回復薬の問題は、現時点では魔物と言われる敵性生命体のコアとも魔石ともいうらしいエネルギー結晶体が必要らしい。
一定の質のエネルギー結晶体を砕いて粉にして、薬草などに混ぜる必要があるんだって。
その分リアルの薬と違いナノマシンのように瞬時に傷が塞がり怪我が治る、まさに魔法の薬なんだとか。
「薬草か。栽培してみるか」
「今は森にいっぱいあるけど、森を減らしたら少なくなる」
「じゃあ薬草が生えやすい環境とか調べてみるか。要塞で栽培出来ればして、ダメなら生える環境は残す形で」
「それがいいと思う。ナノマシンと既存の治療薬が、効かない場合を想定して研究してる」
今のところ作れたのは海賊の宝にあった書物でレシピが判明していて、この島で手に入った薬草や敵性生命体の臓物の一部で作れる物だけ。
この惑星でも比較的安価な回復薬と、毒性の弱いものならば解毒出来る解毒薬のみだった。
しかしそれが作れたということは、レシピと素材さえ手に入れば、この惑星の回復薬はアンドロイド達にも作れるらしい。
「いずれは効果は飛躍的に上げられる。それにこの惑星の動植物のDNAと魔法技術の解析が進めば、我々のナノマシン治療薬と同等の万能薬も造ることも可能」
「未知の力に未知の金属とくれば、未知の病も有り得るか。もうリアルなんだから医療研究は特に手を抜けないな」
ケティによればこの惑星の医療技術は、ファンタジー世界らしいというか中世のようだという。
なまじ魔法があるせいか未熟で、一部の回復魔法が使える神官や回復薬などに頼るだけの医療体制だとか。
大概の病や怪我に身体の欠損すら高難易度の魔法や高価な回復薬で治せるが、問題はこの惑星では病の研究などが、一部の魔法や回復薬の効かぬもの以外は全くされてないことなんだって。
魔法で治せるものをいちいち研究しないんだろうが、あまりの事態にケティ達医療部はビックリして独自に研究を始めたらしい。
現状ではナノマシンがこの銀河でも有効なことは確かめてる。
しかしこの銀河や惑星にはギャラクシー・オブ・プラネットにはない力がある以上、新たな病なんかもある可能性も十分ありナノマシンが全てに有効かまでは検証出来てない。
「旅に出るなら直接ナノマシンの実地検証もしたい」
「医療の実地検証ってあんまりいいイメージないけど、最初は敵性生命体と動物でやりながら実験しなきゃダメか」
「コンピュータ上のシミュレートだけでは不安」
「やらざるを得ないよな」
ゲームならば当たり前に用意されてる答えを見つけるだけだろうが、リアルになり全ての可能性がある以上は必要と言われるとやらざるを得ない。
ジュリアは気楽な冒険の旅に出たいようだし、オレも旅行気分なんだけど意外に重要な旅になるかもしれないな。
「とりあえず今日は薬草と毒消し草の分布の確認と、生育環境の調査するか」
「がんばる」
まあ旅の目的が少し増えたところで構わないか。
今は回復薬と解毒薬に必要な植物の調査をしなくては。
オレ元々こういう地味な単純作業嫌いじゃないんだよね。
ケティや他の医療型アンドロイドと手分けしながら、オレはついでに島の植物の分布図を作りこの日一日過ごすことになる。
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