第2話・プロローグ

 中学の頃に突然亡くなった両親が目の前にいる。


 ああ、これは夢なんだなと気付く。


 優しかった両親が亡くなり残されたオレを待ち受けていたのは、両親が残した保険金を狙うクズのような親戚縁者に無神経な友人ばかりだった。


 クズのような親戚縁者に保険金から家屋敷まで盗られかけたオレを助けてくれたのは両親の友人だった。


 オレはその人のおかげで親戚縁者と縁を切り無事に生きていく事が出来たが、そんな恩人が勧めてくれたのがギャラクシー・オブ・プラネットだった。


 人間不信になり中学卒業と同時に無職となり親の遺産で細々と生きようとしていたオレに希望を与えてくれた恩人。


 しかしその恩人も先月には亡くなってしまった。


 薄く浅い人間関係ながらなんとか生きていけるようにしてくれた大切な恩人。


 だからこそオレはその人に続きエル達との別れは本当にショックだった。



 願わくば彼女達と共に居たい。





『二度と戻れなくても?』




 構わないかな。




『汝に祝福あれ』





 誰かの声が聞こえた気がした。




「いってらっしゃい」


「私達はずっと見守ってるからな」


 男とも女とも分からぬ不思議な声が聞こえた気がした。


 そしてオレは夢の中の両親に見送られて意識が再び薄れていく。







「……エル? また夢か」


 気が付くとオレはまたギャラクシー・オブ・プラネットの中にいる。


 ここは要塞シルバーンの医務室だろう。


 側には医療型アンドロイドのケティとエルがいる。


「司令。夢ではありません。現在メインサーバーとの接続が途絶えて八時間になりますが司令は何故かログアウトされることなく……」


 一瞬さっき両親の夢を見た続きかと思ったが。


 オレはエルに抱き締められてしまい、その大きな胸の感触と窒息しそうな苦しさから、ここが夢の中でないことに気付く。


「エル。司令が窒息する」


「あっ、申し訳ありません!」


 なかなか離してくれないエルに、オレは何とも言えぬ心地の中で苦しみ悶えていると、医療型アンドロイドのケティが抑揚がない声で止めてくれたのでなんとか窒息は免れていた。


 少し泣き腫らしたような顔で必死に謝るエルと、無表情ながら少しだけ口元が笑っているケティの姿に、オレはここが夢の中でないのだと再認識する。


 ケティは医療型アンドロイドとしてオレが作ったのだが、エルと違いスレンダーで黒髪のショートヘアーに小柄な身体の見た目は高校生くらいのアンドロイドだ。


「エル、ケティ。一体何が起きたんだ?」


「不明です。現在把握しているのは、司令がログアウトする時間にログアウトされなかったこと。ログアウト時間に司令は倒れられて、同じタイミングで要塞シルバーンが謎のエネルギーにより、突然未知の宙域に飛ばされたことです」


「医療部からは一点。司令の肉体及びアンドロイドのボディに、謎のエネルギーと同類の未知のエネルギーが宿ってます。肉体とボディへの影響は薄いと思われますが、追加検査と調査研究部との合同研究を希望します」


 夢の中で両親に会ったからか今一つ現状を把握できないが、エルとケティの報告は驚きとしか言いようがない。


 ログアウト出来ないなんて昔のラノベじゃあるまいに。


 そういえば何か声を聞いて答えたような気もするが、あまりよく思い出せない。


「エルは現状の確認と宙域の調査を。但し戦闘は極力回避で。ケティは未知のエネルギーの検査と調査を頼む。オレに何かあった場合には、エルに全権を委譲するからそのつもりで」


「……了解しました」


「了解。任せて」


 一体何が何だか分からないが、ログアウト出来る気は全くしないんだよね。


 ギャラクシー・オブ・プラネットでもそうだが、近代戦の第一は情報収集だ。


 元々エル達アンドロイドは、アバウトな命令でもプレイヤーの意思を汲む高性能だし最低限の指示で問題はない。


 エルは全権委譲に少し不満げだったけど、万が一の時の指示は必要だろう。


 これがイベントや運営のちょっとしたサービスの可能性もなくはないけど、不思議と現状がゲームには思えなかった。


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