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名和がこんな大がかりな計画を立ち上げた目的はただ一つ、
それを業界で共有し、教材とすればよりリアリティのある演出、演技、特殊効果を実現でき、それが
世界的な映画監督の常軌を
だから計画が
ただ少なくともその相手が共犯たちでないことは断言できた。
彼らもまたオーディションで選ばれた面々だった。彼らは
役割に応じてばらつきはあるが、各々かなりの報酬を受け取っていた。しかし何より彼らの動機となったのは、
「俺の映画で使ってやる」
という名和の誘惑だった。そんな条件で彼らはあのような狂気の片棒を
ただ田口だけは例外的に強姦の実行役を買って出たという。彼は濡れ場を
しかしこちらも例外的に、彼だけが実行犯のうちで
裁判の結果彼には殺人
共通点ならば被害者たちにも存在した。全員両親がいないか、あるいは
これに加えて共通しているのは、全員が比較的立場の弱い人間という点である。六人ともモデルや俳優としてはまだ駆け出しで、さらに里香さんらの所属する事務所は小さく、残りのメンバーに至っては皆フリーランスだった。つまり社会的には犠牲になったところで何ら
里香さんが取材を承諾する条件には私が五人の
私はなるべく残酷な場面は
交換条件として、今度は彼女が彼女だけの「確信」を明かす番だった。どうしてそれに至ったのか、私は尋ねた。
「やはりお金ですね」里香さんは涙をぬぐいながら答えた。「他の皆に対する慰謝料はその遺族の
里香さんの実の両親は彼女が小学五年生のとき交通事故によって共に亡くなっている。まもなく母の姉夫婦に引き取られたが、
前の事務所にスカウトされたのはその
「たとえば私が芸能界デビューしたと知った途端、たびたびお金を要求する電話をかけてきました。まだ新人だからそんな稼ぎなんて無いと
里香さんは責任を感じてその事務所を自主的に退所し、継親とは絶縁状態となった。だからこそ疑いは強まった。
「そんなことをしておきながら、事件のあと、職員さんを通じてここの費用を負担すると言ってきたんです。もちろん
不審な点はまだあった。
「それで思い出したのは仕事を辞める時に感じた違和感でした。当時の事務所はかなり小さなところだったんですけど、
――今思えば両方とも罪悪感からそういうことをしたんだと思います。私が生きて帰ってくるなんて思ってなかったから……。
それで分かったんです。私は事件の前から見捨てられてたんだって。あの人たちにとってお金に
彼女からでなければ得られなかったこの証言によって私の推論は裏付けられた。私は核心を突いた。
「では裁かれるべき人たちというのは?」
「はい。そのお金を出した人たちのことです」
慰謝料は名和を始めとした加害者の資産から
それはしかも慰謝料だけにとどまらないだろう。いかに名和が芸術界の
取材を終えた別れ際、里香さんはこんな希望を口にした。
「最後にお願いを聞いてもらってもいいですか? 皆の遺族や関係者のところに、どこからお金が支払われていたか調べてほしいんです」
私は了承した。最初からそれが目的だったからだ。今回の取材と彼女の言葉で決意はさらに強まった。何としても「出資者」の正体を
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