第33話 ゴリラ過ぎたるは、なお及ば猿がごとし

 日常のトピックは無い。

 仕事は退屈だった記憶しか無い。

 なので村の開拓だけをお届けする、この三年間。


 今回は2022年春~同年暮れに関する取引だが、そんな中でも長期投資すぎるのも良くないね、という話題を自戒を込めてお伝えしたい。



 第31話で書いたが、ニチリンさんを購入した際に優待のクオカードの額面がMAXになるまで3年以上を有するのだが、長期保有縛りがあると優待イナゴ投資家は途中で脱落するから長期株主の優遇銘柄は良いよ、と書いた。


 んで、この間に購入したいくつかの銘柄のうち、そんな長期保有優遇銘柄をご紹介しておこう。



 まず5月に購入した、ツツミ<7937>。


 貴金属・宝飾品の小売大手。

 だいたい駅前の路面店か、ショッピングモールの中に店舗を設けている事が多い。


 ツツミさんは3月決算にクオカードを、9月中間決算には自社宝飾品15%オフ券を配っていた。

 しかもツツミさんのクオカードもニプロ貫一と同じく中々の夜叉銘柄で、百株を3年未満だと2千年、3年以上で3千円、5年以上で5千円になる、という超長期保有優遇銘柄。

 大半の優待投資家は5年も待てないのではないか、と踏んだ。

 いや、俺なら待てるね、全然いける。



 さらに10月には、トーセイ<8923>。


 こちらはオフィスビルや賃貸住宅が事業の柱で、自社運営ホテルの3千円割引券だけでなく、1年以上保有していればクオカードを千円、3年以上で同2千円。

 さらに5年以上でようやく3千円ぶんが貰える。

 いや、俺なら待てるね、全然いける。



 そして11月には、丸山製作所<6316>。


 農家向け農業機械の大手で、刈払機、噴霧機、工業用ポンプなどを手掛ける。

 こちらのクオカード優待はもっと時間がかかり、百株以上を1年保有して千円、3年以上で同2千円、5年以上で3千円、そして満額の5千円になるには、なんと7年かかる!

 10年は一昔なんて言うが、小学生なら既に卒業して中学生になっているレベル。

 これはさすがに……いや、俺なら待てるね、全然いける。



 私は前年に続き、優待投資家に人気の金券類で、その中でも特に使い勝手の良いクオカード銘柄を買い漁っていた。

 もちろん菱洋エレクトロさんの5百株会員限定サービスを受けるために細々と買い増しする企画と、並行しながらである。

 こちらも第31話を参照のこと。

 


 そんな額面フルMAXになるのに5年以上はかかる長期優待銘柄達を保有していたのだが2024年3月、早々にツツミさんは優待の廃止を発表された。

 自社商品割引15%オフ券は残った。

 クオカードだけの廃止であった。


 のっけからつまづく。


 こうなると、トーセイさんや丸山さんもどうなるかわからない。

 ましてや丸山さんに至っては7年かかる。

 クオカードが満額になる頃には、私は五十の声を聞こうかという歳で、それくらいは余裕に待てるくらい握力を鍛え上げてきたのだが、優待の廃止そのものの可能性を考えていなかった。



 また、10月に購入したE・Jホールディングス<2153>さんも百株なら千円分のクオカードが貰えた。

 EJさんは官公庁工事が主力の建設コンサルタントである。

 このEJさんも結局は一度クオカードを頂いたタイミングで廃止になった。



 加えてみずほたん、ことみずほリースさんもたった2回クオカードを貰っただけで廃止になってしまった。

 他にフジ・コーポレーション<7605>さんは2百株で5千円ぶんの三菱UFJニコスギフトカードが、東京特殊電線<5807>さんは保有期間に応じて最大5千円になるクオカードが、どちらも1回貰っただけで、優待廃止となる。

 東特電線さんに至っては、古河電気工業さんのグループだったのがアメリカの投資会社TTCグループに吸収合併され、上場廃止にまで至った。



 こればかりは購入した時期にもよるのだから仕方ないのだが、あんまり長期保有にこだわり過ぎると、自分の握力に足元を掬われるという事がわかった。


 長期投資による資産形成というのは、それこそ数年~数十年というスパンで考えるべきなので村の開拓日誌も12年目に突入するし、当然ながらポイ活サテライト村や菱洋エレクトロさん企画だって、ロケ一本で簡単に1,000日近くの日を割く。

 その間に、こうやって優待の廃止も当然に起こり得るのだから、多少はその可能性も踏まえて投資した方が無難だったな、と反省したのがこの年だ。



 ただし、ツツミさんはその後の「全ての株主様への公平な還元策」が顕著であるため、現在も売却はしていない。

 アフターコロナの需要回復や、低価格帯の自分にご褒美アクセサリーが奏功した。

 EJさんもクオカードぶんくらいは増配された。

 他者買収も弾みになっているのだろう。


 みずほたんや日本取引所さん、JTさん、オリックスさん、宝印刷さんも同様だ。

 いずれも優待廃止組だが、まだ保有している。

 長い時間を保有していれば含み益も充分に出るし、購入時価での利回りは相当なものになるので、優待を廃止したが「全ての株主様への公平な還元策」に至らなくても闇雲に売るのはもったいない、と気づく。


 いよいよシン・ゴリラへの進化が近づいた村長。

 もちろんそうではない銘柄は吟味をしたうえで売却し、村の新陳代謝にもちゃんと目を向けている。

 そういう意味では敢えて売った上記の……いや、やめとこ。



 あと各社様に、これだけはお願いしたいところだが。


 優待ってのは、あくまで配当とは異なるオマケで頂戴していたものなので、廃止は仕方ないにしても、『前回決算期の配布をもって終了します』って過去に遡って急な発表は止めてほしいな。


 ちょっと騙し討ちっぽくないすか?

 JTさんやオリックスさん、日本取引所さんは発表から優待廃止まで1~2年度は猶予があったし。

 単に優待をやめるんじゃダメなのよ。

 発表した以上は、中止までキチンと毅然と株主に還元する。

 そして株主はその言葉を噛み締め、最後の優待を覚悟を持って受け止める。

 株主と企業ってそういう関係なんすから。

 切腹前の辞世の句ぐらいの感じじゃないと。

 だって突然に「もうやめるって決めたから前の優待が最後っす、サーセンw」ってズルくないすか?

 JTさんやオリックスさんのような懐の深さと男気を、廃止他社も見習って欲しいところですね、なんて思ったりしますが。


 第5話にも書いたけど、企業はあらゆるステークホルダーにとって誠実でなければならない、と個人的には感じます。

 まぁ僕ら百株かそこいらの個人株主が、あーだこーだ言ったところで、企業にとってはコストでしかないんですけどね。

 そういう評判って割とネットでは延々と残るので、大口の株主にしか目が向かない企業様の姿勢はNot So Goodですよ。




 ってな感じで資産リバランスや再確認に適しているのは、まさに今日この投稿日のような年末年始だと思うのよね。


 新年の計は年末にあり。


 マーケットも仕事もお休みで、時間がある年末年始の間に、自身の資産の棚卸しを行い、かつ来年以降購入したい銘柄の再チェックできるゆとりがあるのがこの時期。


 例えば平日に有給休暇を取ったとしても、マーケットが動いていれば、どうしても刻一刻と変わる情報に気持ちが引っ張られるから、年末年始が一番良いというのは私の経験則でもある。



 凛とした真冬の空気と、年末を各々おうちで過ごす静謐としたご近所。

 この空気感が好きなのよ。

 我が家はブッディストで、私個人は神様や日本神話も好きだから、エネーチケーの『ゆく年くる年』で除夜の鐘がゴーンとか、神社で新年参拝の様子を観るのが最高だし、逆にクリスマスに讃美歌を歌ってお祈りするクリスチャンの気持ちもなんとなく分かるわ。

 年末の空気感って心も自然と浄化されるもんね。

 日本人にとっては年越しが一番最高潮だと思う。


 逆に年を越したらもうダメね。

「あぁ、また退屈な仕事の日々を240回も繰り返すのか」

 とか考えるだけで憂鬱になる。

 三が日のテレビなんか、お笑い芸人がワチャワチャやる番組ばかりだし、そしたらBSチャンネルで静かに旅鉄道もの紀行もの歴史ものでも観ようかと思うが、ここ最近はそんな番組もなかなか無い。

 結果として大晦日の夜から三が日の午前中も、井之頭五郎がご飯食べるシーンばかり観てる気がする。

 


 なので仕方ないから投資情報に触れるしか楽しみが無い訳ではないけど。

 四季報が更新されていればそれも読む。

 場合によっては会社のホームページにも飛ぶ。


 例えば業績、配当、優待などが目を引くもので「これ欲しい」とチェックリストに入れておいた銘柄でも、四半期も経てば状況が変わるのは当然。

 そのまま「欲しい」にしておくのか「やっぱこっちが欲しい」と銘柄の入れ替えをするのか、時間の赴くままに思索を深めるのもよろしいかと思う。

 それをするだけの充分な時間が許されるのが、年末年始なのだから。



 さて、皆様はどのような年末を過ごされますでしょうか?

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