第32話 46×48=47

 2021年は日経平均株価の上昇により、実際の投資額より含み益の増加が目立ち、長期保有と精力的なFIREのための努力が少しずつ実り始めた。

 こう書くと『資産形成で引退するために努力する』とは思えば矛盾だらけだ。


 この年の暮れには全保有銘柄は48銘柄となっていた。

 2013年にサッポロさん1銘柄で始まった『KYTかぶゆうたい48』結成から足かけ8年、ついに華々しい劇場デビューの瞬間である。

 プロデューサーさんは嬉しくて仕方ないよ。

(しかしその間に坂道シリーズの方が……いや、やめとこ)



 そして私の総資産はついに評価額で1,000万円を超えた。

 年収200万円台のこどおじから始まり、一人暮らし、母の死、メンタル崩壊の休職からの転職も経た。

 紆余曲折はたくさんあった。

 実際の投資額はもっと少ないから、私自身が凄い訳ではない。

 単に長期投資によって上昇トレンドに乗っただけのことだ。


 それでもやっぱ8桁は見える景色が全然違う!

 こうやって誰でも努力すれば叶うものなのさ。

 別に投資じゃなくてもいいの。貯金でもまず貯めてみることが大事な一歩よ。



 もちろんFIREには程遠いが、配当金はそれなりになった。

 この年の税引き後の総額は212,249円。


 だが、これでもまだまだ50万都市メガロポリスには至らない。

 スーファミゲーム『シムシティ』でお馴染み、あのメトロポリスのBGMが延々と脳内に流れ続けている。

 子供の頃は、実際のプレイでもだいたい20万都市で挫折している。

 村だってメトロポリスになってから4年も経っているのに、まだ足踏み状態。

 この永遠と等しい発展期間に、早くも辟易としてしまう。


 商社やBtoBの企業は増配も顕著だし、小売やサービス業、飲食業もコロナ禍の影響も小さくなり、少しずつだが復配するようになってきた。

 ニプロ貫一の一千株保有というのはツンデレ要素ながら配当額は大きいし、優待のJCBギフトカードも満額の15,000円をゲットできるようになった。

 芙蓉たんも税引き後配当が1万円は堅い。ジュニアタレントから成長して世界的な銀幕スターの誕生を迎える瞬間でもあった。

 まさにハニー・パイ。

 彼女はハリウッドで……いや、若い子は別にわからなくても構わないよ。


 ついに来たなって感はある。

 でも全然足りない。

 これは単なる通過点にすぎない。


 

 なので2022年もガシガシ株を買い漁るしかない。



 あ、そういえば前年購入した銘柄でひとつ忘れている所があった。

 何故かと聞かれると、実際の株のように背番号(証券コード)が割り振られている銘柄なのだが、厳密には株ではなくREIT(不動産投資信託)なので取引履歴の閲覧から株以外のものを排除して検索していたせいでもある、サーセン。



 投資法人みらい投資証券<3476>。


 三井物産ほかが母体となり運営する投資法人で、購入者は一口単位で申し込みができて、実際に賃貸借された商業施設やオフィスビル等の不動産からの収益を分配金として収受するというものだ。

 例えば同法人は、12月15日現在の一口申し込み価格が38,900円。

 分配金は年2回で合計がおよそ2,400円程度。

 利回りは6%を越える。


 個別株は業務運営上の不安要素や外的要因もあって、業績や配当が上下することもあるが、こちらはいわゆる投資信託のようにプロが勝手に運用してくれる気楽さもあったりする。

 加えて私的には4月10月という絶妙な決算時期が気に入っている。


 これは前回お伝えした「1月~12月まで全ての決算企業を網羅して、毎月どこかから配当が貰えるようにしよう作戦」の一環でもある。

 菱洋エレクトロさんが新会社になって1月7月決算企業は無くなってしまったが、この瞬間、私は間違いなく全ての月の決算企業を網羅していた。

 いやまぁ、それがどうしたのかと言われたら、それだけの話だけどさ。

 毎月お小遣い貰える方が嬉しいじゃない?


 なお、みらいさんにも優待があるが、保有するホテルを出資者特別料金で宿泊できるというもの。

 旅好きの私はその点も見込んで購入したが、なかなか都市部のホテルだとお邪魔する機会にも恵まれず、単なる配当銘柄になっているのは東急不動産さんと一緒だ。



 余談だが、投資界隈では各地で騒がれている話に、

「REITはオワコン」「いや、割安になって投資妙味あり」

 と正反対の意見が見られる。


 コロナ禍に始まったテレワークの普及により、都市部一極集中でなくなったことで撤退や移転をする企業が増えてオフィスビルの賃料は下落。

 加えて新築ビルの開業ラッシュが続くことで、空きテナントだらけになる『2023年問題』と言われたのも、昨年のこと。

 都市部の喧騒を離れてゆったり働くという『ワーケーション』も謳われていたが、実態はコロナが収束したらまた満員電車に揺られて通勤する日常が戻った。

 日本人ってホントにこういうの好きだよなって思う。

 

 だもんでオフィス供給過多が心配されていた『2023年問題』も杞憂に終わった。


 さらにコロナ真っ只中の2020年頃は110円以下で推移していたドル円レートも、今は150円台を行ったり来たり。

 円安特需に沸く外国人観光客のインバウンド消費によって、ホテルやレジャー施設といった建物もどんどん増えている。

 なんでも東京ではビジホすら2万円ちかくになり、出張族が泣いてるとか。


 日本国家単体で、日本人と日本企業だけでは市場規模も縮小していくのは明白だし確かにREITはオワコンかもしれない。

 だが、あらゆるジャンルの建物を複合的に運用するのがREITでもある。


 そういう意味では、いまのREITは確かに過小評価されてるのかもしれない。

 結構割安に……いや、むしろ含み損が出て何度もナンピンしている。 

 

 だからこそ「もっとしっかりしろ!」と𠮟咤激励する意味で、私はREITを保有しているのだが、実際は「毎月どっかから配当が欲しい」と選んだのが正直なところ。

 個別の優待銘柄ばっかり持ってるのもアレなので、リスクヘッジの分散投資ということにしておいてちょうだい。



 暮れにあった秋のパン祭りも終わり、配当も優待も無い冬は商いが閑散とする。

 私も2022年1月~3月はだいたいが節税のナンピンか損出しで終わっていた。


 そんな中、ひとつの銘柄を購入している。



 みちのく銀行<8350>。


 青森銀行<8342>さんと、みち銀さんは、共に株主優待がある。

 どちらも青森県産品のカタログギフトというものだ。


 そんな両行が2022年4月に合併するという。

 その名もプロクレアホールディングス<7384>。



 その時、私は何故か直感的に「新会社でも優待を続けるに違いない」と思った。

 まだこの時点では何の情報も無かったのだが。


 青銀さんとみち銀さん、新会社との株式交換比率は、1:1,と1:0.46だ。

 そんで株価もだいたいそのくらいで推移していた。


 なので青銀さんよりも半値以下にお安いみち銀さんを100株持っていれば、新会社の46株になる。これが200株なら92株という計算だ。

 あとは単元未満株取引で8株を買えば新会社の最低単元である100株になり、それできっと優待が貰えるに決まってるんだ。

 妄想に近い確信を掴んだ私はまず、みち銀さんを200株購入した。


 新会社のプロクレアさんは、株価1,899円でスタートを切る。

 みち銀さん時代を含めた私の取得単価は1,751円。

 なかなか幸先良いではないか。

 今は(2024年12月21日現在)もう少し下落して、損が出ている。


 プロクレアさんは一年以上保有すると、百株で3千円相当の地元特産品カタログギフトをくれることとなった。

 珍しくビシッと読みが当たったではないか。



 で、何故プロクレアさん?

 邑楽、お前は青森の聖地作品を書いたか?

 と思われた方が居るか居ないかは知らないが。


『たま』と同じイカ天バンド『人間椅子』のコアメンバーが青森県出身だから。


 ただそれだけ。

 好きになった芸能人の出身地が青森ってだけの話よ。

 ホント人間椅子って改めていいバンドだなって思う。

 だもんで、好きが高じて購入しただけ。


 でも、単に好きだから購入して終わる訳では無い。


『異世界転生した元社畜で人事部のオレ、冒険者ギルドも「ブラック求人あるある」だらけで困るんだが』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927861525505786

 ラノベ業界で飽きもせず引きもしない、昨今流行りの長文タイトルとテンプレ設定の退屈なやつを茶化したものだが、作中にリルというキャラを登場させて、中途半端な怪しい津軽弁を喋らせてみた。ビートルズを聴いているうちに、怪しいリバプール訛りの英語を習得するのと一緒だ。

 もっとも彼女の本当の元ネタは、青森じゃなくて上海シャンハイ帰りのリル……いや、若い子は別にわからなくても構わないよ。



 私は優待カタログギフトを使用期限ギリギリまで保有して、その時点で家計に必要なものを選択するというスタイルで消費している。

 なので本当はプロクレアさんも抽選商品のためにすぐ申し込んだ方が、ワクワク感があって楽しいのかもしれないが、私のようにカタログギフトはゆっくり鑑賞しつつ商品を吟味したい人達は、世間の喧噪に関係なく選べる青森特産品で充分だったりもする。


 ただしカタログギフト優待あるあるとして、申込期限までに商品を選択をしないと権利を失効したり、なんだか余り物みたいな、おせんべいやおかきセットが届く羽目に遭うので、披露宴ご祝儀や葬儀お香典の返礼、盆暮れのご挨拶等でカタログギフトを貰った人はいつまでも大切にせず、まず期限を確認された方が良い。


 家族で何を貰うかワイワイ会話する時も、カタログギフトの楽しさだから。

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