第28話 怒れるゴリラと胃荒れるオウラ

 ってな感じで、新しい会社でも早々につまづいてしまった私。


 だから仕事に行くのも億劫。

 日曜の夜から月曜の朝にかけてはメンタルが沈む。

 土日は死んだように寝るか、パソコンで執筆ばかり。

 なので外出もしなくなる。

 仕事もミスが怖くて仕方ない。

 なので新しい業務を習得するのもしんどい。


 私が一人暮らし時代からお世話になっていた主治医には、

「ファモチジン(胃酸の分泌を抑制する薬)だけではなく、レバミピドかテプレノン(どちらも胃の粘膜や細胞を修復する成分)もくれ。ナウ・オン・胃が痛い時にすぐ効く薬も欲しい。ファモチジンじゃ待ってられない」

 と訴えていた。

 病歴が長いと中途半端に薬剤の知識を得る素人患者の末路である。

 佐々木倫子先生の『おたんこナース』を参照のこと。



 こうなるともう切望するのは、ただひとつだけ。

 FIRE(Financial Independence, Retire Early=経済的早期自立)だ。


 第2話以来だが、私は松山ケンイチくん主演の大河ドラマ『平清盛』で井浦新さん演ずる崇徳上皇のように悪鬼羅刹へと変貌し、呪詛を唱えながら苦しみのたうち回る日々を過ごしていた。最初のサッポロさん暴落事件から8年ぶり二度目の出場。


 この資本主義の構造的欠陥から早く抜け出さねばならない。

 社会の歯車になんかなりたくない。

 実家ではない古民家でスローライフがしたい。

 過疎ってる地方に住みたい。

 誰とも関わり合いを持ちたくない。

 軽自動車で緑の森の中をいつもドライブしていたい。


 こんなことばかり考えていた。


 だとしたら、やる事もひとつだけ。

 村の開拓すなわち資産形成のみ。



 実家に戻ったのを良い事に、ゴリラ村長は再び生活費以外の手元資金を証券口座に全ツッパして村の拡大にいそしむ毎日となった。

 全てはFIREのために。


 ということで、2021年の4~6月には、更に4銘柄を買い増ししている。

 この一年だけで言うと9銘柄の増加だ。

 いったいあの時期にどうしてこれだけの種銭が用意できたのやら。

 我ながら執念の一言だと思う。


 それだけではない。

 数年前まだ私がアパート暮らしだった時、生前の母に、

「こういう新しいスーパーがあるよ」「またマルエツに行くようになったよ」

 などと家庭内で宣伝していたので、家計支出はUSMHさんやマミーマートさんに全振りできるようになった。もちろん優待のお買い物券も父に上納している。


 これで出資先の企業も潤うし、それが株価や配当となって戻って来る。

 オマケにポイ活も面倒くさがる家族を差し置いて、私のポイントカードはどんどん貯まるようになっていった。

 しめしめ、上手くいったわい。

 こちらはサテライト村で活用するとしよう。



 という感じで、配属先を変えた2021年初夏~春のパン祭りまでに購入した銘柄をお届けする。


 

 まず最初は、JSP<7942>。


 社名の由来は『日本スチレンペーパー』で、樹脂発砲素材の大手。


 こちらは元々、三菱系列の三菱ガス化学が親会社であった。

 今は独立されたようだが、筆頭株主が三菱ガス化学であることには変わりない。

 それでも高配当でお馴染みの三菱さん一族である。

 すなわちイオn系列とは異なる安心安定の配当銘柄だ。


 優待は百株以上を保有していれば3千円のクオカードが貰える。

 しかもこれは社会貢献寄付つきの、『緑の募金おもいやり』クオカードと言って、発行一枚あたり10円が国土緑化推進機構へと寄付される。


 

 これは余談だが、私は投資を始めて少し経ったあとから10年ちかく毎月ヤホーでⅤポイント募金をしている。

 もちろん大した額ではないけど。

 でも単に儲けるだけじゃない。

 まだまだ資産形成中の身だが、当然おすそ分けはしたい。


 持てる者こそ与えなければいけない。

 私は刀剣のなんとかは良く知らないので妹の話はちんぷんかんぷんだったが、愛の文字を兜に掲げた直江兼続のように、前年の停滞期を救われた私は義に生きる兜町のゴリラになることにした。


 まぁそれはさておき、ヤホーのネット募金も、どうしても災害支援や動物愛護とか「手術を待つ難病の○○ちゃんを救おう!」みたいなものばかりだと、私の身体ひとつでは全ての応募先に等しく募金が出来る訳では無い。

 加えて募金したからには使途が明確でないと困る。

 なので申し訳ないが応募先も厳選して、毎月同じ所へ募金しているものの、やっぱ活況なのは災害支援や医療支援である。

 個人的にはもっと環境問題とか持続可能社会に目を向けてもえぇじゃなかろか、と思うのが正直なところ。

 でも対案も無く反射的に原発不要論だとかはノーサンキューだし、対極にある自然発電ビジネスが横行しているのも困ったものだ。


 私の作品ではよく山の稜線に囲まれた地方の町ってのが出てくるし、普通に今ある緑の地球を守るために出来る事をしようね、っていう支援があってもいいのかなって感じるんすけどねぇ。



 話が逸れたが、JSPさんは2026年3月期以降は優待に長期保有制限が加わって、1年以上の保有で千円、3年以上保有して3千円ぶんのクオカードになる。

 移行期間である次期2025年度決算のうちに購入するのがベター。



 次は、ジョイフル本田<3191>。


 関東ではお馴染みホームセンターの会社で、圧倒的品揃えと売り場面積を誇る。

 本社は茨城県土浦市。決算期は6・12月期。

 優待は百株以上から保有数に応じて、以下のラインナップのうち一点を選べる。

・自社商品券

・茨城県産米

・茨城特産品カタログギフト


 私は百株保有で、いつも商品券2千円を貰っているのだが、しかしジョイフル本田さんって近くに無いんだよね。

 商品券の消費のために毎度結構な移動をする。

 株主のくせに実店舗にお邪魔しないのも申し訳ないのでお邪魔していたが、ガソリン代と移動拘束時間というコストを考慮したら、ぼちぼちお米かカタログギフトを頂戴してみたい。


 ちなみにジョイフル本田さんはもともとTポイントが貯められていたが、2023年1月末をもって終了し、現在はdポイントが貯まる。

 あと九州を地盤としてファミレスを展開するジョイフル<9942>さんとは全く別の会社である。


 さて、ジョイフル本田さんと言えば2021年8月、総発行株式の30%近い2,900万株もの消却をし、その後も2023年5月に142万株を、2024年5月にも317万株の消却を行い、トータルで38%近く減少したが、これは本当に英断であったと思う。

 総発行株式数を消却するということは会社の価値が下がるという意味でもある。


 最近はどこの会社も自社株買いばかりで、もちろんこれはこれで配当比率が増えるから歓迎している投資家も多かろうけど。

 私個人としては完全消却の方が嬉しい。

 市場に流通していた株を文字通り消し去ることで、一株価値は当然増える。

 すなわち既に保有している私の株の希少性が増すという意味でも、ありがたい。

 ほかの優待投資家がおいそれと手を出しにくい金額になってくれれば尚嬉しい。

 他者より先行している投資家の特権でもある。



 まだまだある。

 続いて、植木組<1867>。


 新潟地盤の建設会社で、配当は3月期決算の年一回。

 こちらも優待でクオカードが貰える。

 百株なら保有期間に応じて500~1,000円、二百株なら同2,000円に増額される。


 いやぁ、本当は植木組さんはここに書きたくなかったんだよなぁ。


 優待銘柄だというのに、総株主数は4,800名程度と少ない。

 それでいて配当利回りは2024年9月時点で4.4%。

 PER(株価収益率=ひと株あたり純利益に対して現在の株式価値がどの程度かを測る)は6倍、PBR(株価純資産倍率=企業解散時の株の価値が現在とどの程度乖離しているかを表す)は0.42倍と明らかなお宝銘柄なのに。

 本音ではこういうの知られたくない、私と他数千人だけの秘密にしておきたい。


 四季報オンラインやマネックスさんの銘柄スクリーニングで、こういうマニアックな銘柄を探すのが楽しいのよね。


 あとは極端に高配当や優待利回りに全振りしている投資家は、こちらのようにクオカードが保有期間に応じないと増えていかない企業を選ばないことが多い。

 権利取り日にだけ保有して優待をゲットしようとするからね。

 そしてその優待額面も千円とか五百円とかだと、人気薄でもある。

 チリツモなのに。


 逆に私は優待を導入ないしは大幅改善して、クオカードを年に何万円も配っている会社の方が危ないと踏んでいる。

 それで優待投資家が大量に飛びつけばコスト増は明らかだから。

 自分で言うのもなんだが、優待投資家なんてイナゴみたいなものだもん。


 どこの会社とは申し上げないが、そのうち廃止ないしは改悪があると思う。

 私も某社が3千円のクオカード優待を廃止するとの発表を受けて売却したものの、それから半年も経たずに優待は3百株持っていただければ維持します、となり、更に時を経てクオカードを16,000円に大幅増額します、との変更があった。

 こういう会社は信用ならない。

 皆さんもお気をつけ願いたい。



 話を植木組さんに戻すと私は二百株を保有してクオカード2千円を頂戴している。

 優待が届くのは秋のパン祭り、すなわち9月の中間決算後だ。



 一気に村も賑やかになってきた。


 さて、文字数が長くなるので、続きは次回。

 春のパン祭りで購入した残す最後の1社と、夏~秋にかけての取引、そしてポイントだけで賄うサテライト村の様子をお届けする。

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