序の3 そもそも投資を始めた理由
2013年秋の邑楽じゅんのステータス、オープン。
年収:200万円台
貯金:200万円台
属性:こどおじ
これは嘘偽りないリアルな数字である。
本当に目も当てられない冬の時代だった。
だがその時に話を戻す前に、いったん時間を更に遡っていきたい。
それは私がまだ二十代の頃。
まだ若くて心に嘘偽りなく、いつも人生は『持ちつ持たれつ』。
でも次第に生きる世界は変わり始め、私の心は涙に暮れるようになる。
「死ぬのは奴らだ」――と。
当時の私はブラック企業の総務に勤めていた。
担当業務の主なもののひとつに、採用ってのがあった。
当然ブラック企業なので、先に入社されていた先輩や、後から採用した新人も飛び降りるかのように次々と辞めていく。
なので採用業務も忙しい。
求人媒体の広告費をケチってハローワークに求人を出していたが、それもしばらくすると新着の求人の中に埋もれて応募が来なくなる。
そうなると役員から私が叱責される。
なので、待遇面以外の部分をちょこっとだけイジる。
そうすると、あら不思議。
新着求人として検索上位に再浮上するのだ。
ハローワークの求人は、実は求職者だけでなく企業の採用担当も閲覧できるので、そうして無事に新着に掲載された自社の求人を見て、ほっと胸を撫で下ろす。
拙作、『異世界転生した元社畜で人事部のオレ、冒険者ギルドも「ブラック求人あるある」だらけで困るんだが』
https://kakuyomu.jp/works/16816927861525505786
もともとは最近流行りの、長文あらすじタイトルを茶化したものだが、中身はほぼ実体験である。私が総務として、採用担当として、自社や他社の求人をたくさん見てきた事を書いただけのものだ。
もちろんその後、自分が求職者になった際には大いに参考になったけどね。
さて、改めてその会社での末期の自分をお伝えすると。
メンタルはまだ壊さなかったが、かなりギリギリな部類。
出社こそするものの、会社に行きたくなくて仕方ない。
毎朝、電車に乗ると胃がキリキリと痛み、吐き気がして、えずく。
なので電車も、降車駅の階段から一番遠い、先頭車両か最後部車両に乗っていた。
そんなことをしたって、会社は逃げてくれないし、仕事からは逃れられない。
意味の無い事だとは承知している。
それでも毎朝の儀式として、そうせざるを得ない状況だった。
同期や後輩とは憂さ晴らしに、週3~4回飲み歩く。
そんな訳だから、四十を越えた今よりも遥かに体重が大きかった。
このままではマズいと思い立ち、自分に課したのが『社会的重責を負うこと』。
すなわち、住宅ローンやカーローンなど、やむにやまれぬイベントのせいで働かざるを得ない状況に追い込めば、頑張れるのではないか、と安易に思った。
ということで新車を買った。
頭金を50万円用意して、あとは割賦。
だけど、私自身が借金嫌いでもある。
実家暮らしなら、これくらい大丈夫だろ、とまさかの24回払いにした。
ところが、その数か月後。
私は愛車に乗って日本中を旅していた。
けっきょく社会的重責を負うどころか、全てを投げ捨て、単に愛車で逃避行をしたい欲求が強くなっただけ、であった。
わずかな貯金と失業保険だけで、もちろん家計は火の車。
自転車操業でカーローンを払い続けたが、親に借金もせず、残高不足で信用情報にキズが付くこともなく、なんとか24回払いを終えた。
そんななか逃げ込むように入社したのが、冒頭の会社だ。
大した将来への目論見やビジョンも無く、逃げるように会社を辞めて、中途半端な事務職をしていた私への社会からの風当たりは強かった。
転職活動も苦労した。
まさかブラック企業で総務をしていた私が、ブラック求人を幾度も見る羽目になるとは。
でもまぁ、なんとか綱渡りだが人生が繋がった。
最初こそ24回払いの鬼畜カーローンを補うための当座の生活費として、そこの会社に採用になったことを喜んでいたが、ある日、ふと気づく。
「あれっ? …私の年収、低すぎ…?」
カーローンを支払い終えた後、私は
「やっぱ生きてくためには現金だ」
と考えを改め、稼いだ分だけ使い倒すという、こどおじの悪い癖を直した。
しかし先述の通り、なにせ給与が低い。
将来の展望を考えた際に、絶対的に金銭で困るのは目に見えていた。
だがどちらかと言えば、私は他人を押しのけて出世するとか目立ちたいような人間でも無いし、のんびり、まったり、ズボラなやつだ。
それでもその頃のメンタルは前職や現在よりも遥かに健全であった。
年収に不満こそあれど、仕事には満足していたし、与えられた職務はキビキビこなしていた。小さな会社なので上層部の評価もそれなりだった。
一方その頃、近しい友人の中には、二十代で早々に投資を始めているのも居た。
しかし私は当時、大した興味も無く聞き流していた。
「投資は危ない。ギャンブルと同じ」
そう言っては怪訝そうにしていた母親の影響も大きい。
家族の中で、きょうだいがいち早く投資を始めていたが、話を聞いてもやはりどこかギャンブルっぽい匂いがして、拒否反応を示していた。
なので、コツコツと貯金をして、普通定期預金を作るだけ。
ところがまぁ、なにせベーシックインカムが低い。
入金力が弱ければ、当然ながら貯金だってはかどらない。
これは投資にも通じるものがある。
やっぱり蓄財ってのは入金力がモノを言うし、そういう入金力がある人はやっぱり素晴らしいと思う。
そんなこんなで2年後の2013年。
なんとなく日々を悶々と過ごすうちに、私はぼんやりと考えるようになる。
「やっぱ投資とかしないとダメかな?」
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