第9話 美魔女の教え
2015年の春~初夏、村の開拓は一旦のストップ。
この頃の私は転職活動で忙しかった。
と言っても、「あ~こりゃ低収入の会社に居ても仕方ないな」と覚悟を決めて求人サイトに登録し、応募先をあれこれ閲覧して履歴書を送ったりしているのではない。
人づてに求人のご紹介があった、とだけ申しておく。
コネと言われればそうかもしれない。
しかし内定は確約されていない。
「ダメ元で応募だけしてみれば?」と、ある企業の役員を紹介されたのだ。
まぁ、ゆくゆくは入社するこの応募先の会社の事は今でも思い出したくない。
本当にトラウマレベルで精神を病んだ元凶でもあるから、できれば割愛したいが、全てを晒すエッセイである以上はなるべく全てをお伝えする責務が私にはある。
だからこの転職が無ければ、私は低所得ながらも日々の仕事は充実していた、この時に在籍していた会社に、まだしばらくは勤め続けていたであろう。
だもんで、同僚たちはこの転職活動に理解をしてくれた。
お互い低賃金なのは知っての通り。
私の人生を考えたら止める事はできないと、背中を押してくれた。
ありがたいことだ。
そんな仲間のひとりが、美魔女さん(仮)だ。
美魔女さんには私と同じくらいの歳の息子が居る。
そして私が産まれた頃には既にそこでパートタイマーとして働いていた。
ご実家もご主人も事業をされていて、お金なんか腐るほど持ってるのに世間に出てパートに勤しむ姿勢は非常に尊敬できた。
いっぽう美魔女さんも、私が必死に蓄財して投資をするにあたりアドバイスをくれたり、転職活動では応援もしてくれていた。
美魔女さんはいつもこう言っていた。
「いい邑楽っち。なんでもあるうちに大切に育てないとダメよ」
つまり美魔女が美魔女たらしめる要因として、やはり外見的な美しさがあるが、単に加齢に抗い、美容外科手術を繰り返すだけの人工的な違和感ある美しさということではない。
最低限のお肌のケアで、加齢を受け入れながらも年相応には見えない若々しく溌剌とした外見であり続けるための努力を怠るな、という意味だった。
当時はまだ美容男子なんて言葉も無い時代。
風呂上がりと髭剃り後のスキンケアローションを欠かさず行う。
別に高級品じゃなくて良い。
市販の廉価版でもよいから、お肌ケアを欠かさないこと。
さらに男ってのは薄毛っちゃうリスクもある。
なのでシャンプーの後には育毛剤をスプレーして。
自分には若さも残された時間も髪もフサフサにあるのに、いったいこんな事をして何の意味があるのだろうかと、正直なところ私も最初は乗り気ではなかった。
当然である。
若いということは特権だ。
でも若いからこそ気づかないものもある。
それは自分が若くなくなった時だ。
失って初めて持っていたものを実感するのが、老いであり、時間である。
しかしこれは全て投資にも通じる。
資産を大切に育てていきたいのならば、大切にケアをしないといけない。
お肌や髪だけでなく、お金もまた同様で、大切にされたものは恩返しとして大切にしてくれた人に応えようとする。
それが巡り廻って自分の自信にもなる。
物理的なケアだけではない。
今あるものはすぐに無くなる、だからあるうちに感謝して育てろ。
これが美魔女さんの教えであり、薫陶だ。
いまや世間から見れば単に私は、街に溢れるおっさんの一人だろうが、おかげさまで四十なかばの割には髪はそれなりに残って、お肌のトラブルも無く過ごしている。
ストレスで吹き出物がでやすいのは昔から変わらないが。
週1回はピーリングジェルで角質を除去してから化粧水パック。
もちっとした仕上がりに満足する。
知らぬ間に美容ゴリラへと変貌してしまった。
またしても余談だが、『お値段以上』ニトリさんの似鳥会長は、北海道から出発した家具屋を拡大する際に、本当は財務状況が良くないのに顔にドーラン塗って顔色を良くして銀行に向かったようである。
代表の顔が血色よく肌艶あるなら、事業も安定しているに違いない。
そうやって銀行の人を騙して融資を受けていたらしい。
しかし失礼ながら、芸能人でも無いシロートなのに女性がお化粧をされるように、当時会社の代表だったおっさんがドーランを塗ってきたら、銀行の人も相当に驚いたであろう。
それくらい人工物は傍目に目立つのも忘れてはいけない。
私は飲み会やら忘年会やら、折に触れて出し物で化粧をしたことがあるから。
第一印象を良くしたいのならば、ボタニカルに気をつけるのも大事という話。
2015年7月。
春のパン祭りを終えてしばらくしたのち、私に一本の連絡が入った。
それは最終選考まで進んだ会社からの内定通知。
私はついに初めて自力で自分の人生を切り拓いた。
いつもネガティブに退職してから職探しをしていたが、今回は在職しながらなので金銭的なセーフティネットや社会保障、なにより『無職』という肩書きではなく今も会社員でもある。
例え応募先の企業とご縁が無くても、今の企業の会社員で居られるし、何より最終面接を終えて自分はやり切ったという充足感でいっぱいであった。
そこにこの連絡である。
やっぱ、お天道様はちゃんと見ててくれてたんだね。
年収は200万円台から一気に300万円台へ。
実際には業績連動ボーナスと残業代コミコミで400万円なかば突入となった。
ほぼ倍だ。
まぁ男の三十代なら、世間的にはまだ全然多い方じゃない。
とはいえ、入金力が上がれば村づくりも一気に加速する。
実家暮らしならば、月収の半分だって村に投資できるのだから。
2015年10月。
停滞していた村づくりも、ようやく再始動。
転職のおかげで給与収入が増えたし、転職活動の間は金を遣うこともできなかったので、証券口座に回す買付け資金も増えた。
最初に村に設置したのは水力や風力を用いた自家発電設備。
ようするに家電大手のビックカメラさん<3048>。
ビックカメラさんは半年に一度、お買い物券をくれる。
百株なら8月の本決算は千円券2枚。2月は保有期間に応じて最大3千円。
これはありがたい。
なにかにつけて家電は購入するからね。
他に上場している家電量販店ならケーズさん、ヤマダさん、ノジマさんとあるが、私がビックカメラさんを選んだのは単純に優待利回りが一番良かったのとポイントを貯めていたからだ。
執筆歴よりも投資歴よりもずっと早い。
ビックさん購入歴は20年近くに及び、現在のビックポイントは8万を超える。
これは最終的には30万ポイントを貯めてマッサージチェアを全額ポイントで賄うためだ。私のもうひとつの人生の目標でもある。
しかも決算短信や企業情報など株主に寄せるパンフレットの中に株主専用クーポンがオマケで付き、店舗やオンラインショップで使用すれば付与されるポイントが3%アップする。
ビックさんは実店舗で現金以外の決済や、JREスイカビックカードなどではない提携外のクレカで支払いするとポイントが2%減額されるが、このクーポンを使用すれば11%還元となり、当初の10%還元よりも儲かるのでありがたい。
もちろんECサイトの「
なお優待券の額面ぶんはポイントが付かないので注意。
続いてNECキャピタルソリューションさん<8793>。
こちらもカタログギフトで、年に一回、百株保有で2千円。
一年以上保有していれば3千円に増額されるありがたいもの。
しかもこちらオンラインカタログギフトなので、紙の冊子が届くことも無く、パソコンやスマホで商品申し込みができるので非常にエコロジー。
ギフト申込期限も12月末までと、かなり余裕を持たせてくれているので、安心して交換ができる。
さらにリコーリースさん<8566>。
こちらの優待はクオカードもしくはカタログギフトが貰える。
なのでリコーリースさんは家族ではなく自分のために選んだものだ。
最初は百株から5千円分を。
現在は3百株保有しており、1万円ぶんのクオカードをゲットしている。
クオカードは全国のコンビニや書店、SSなど各地で使用できるし、現金と同等の扱いなのでポイントもゲットできる。
私はよくマツモトキヨシ(2021年にココカラファインと経営統合し、現マツキヨココカラ&カンパニー)さんで使わせていただいている。
日用品や医薬品を購入し、支払いはクオカードで。
そこにマツキヨポイントとdポイントもしっかり貰える。
還元率102%の脅威の優待品がクオカードだ。
さらにマツキヨ公式アプリから割引クーポンを利用すれば、日用品や医薬品もお得に買えるからありがたい。
芙蓉たん、NECキャピさん、リコーリースさんとやや金融系セクターに偏った感はあるが、申し分ない配当利回りに事業内容の安定性、成長性を考慮すれば御の字。
この時点で保有銘柄は15種類となった。
その年の暮れ。
9月期中間決算に伴う配当金が振り込まれだした。
いわば秋のパン祭りだ。
そして中間配当を含む2015年の配当合計は一気に57,937円。
ヴィレッジからタウン、シティとなり、ついに5万都市キャピタルに!
足掛け2年で私の村はキャピタルになった。
次の目標は10万都市メトロポリスだ!
それいけゴリラ村長!
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