「疲れたので、不労所得でちょっとFIREしてくる」って言いたい人の開拓日誌

邑楽 じゅん

序の1 書くにもカクヨムにも疲れて、自分の執筆を全否定せずにはいられない

 ペンネーム:邑楽おうらじゅん


 蟹座のA型。

 生まれた頃は左利き。矯正されて右利き。

 特技は、魚の開きを頭から尻尾まで骨だけ残して綺麗に食べられること。


 普段は会社員。

 昭和後期生まれのおっさん。

 

 

 はじめましての方は、はじめまして。

 お久しぶりの方は、ご無沙汰しております。

 お疲れ様です、邑楽です。

 カクヨムもほぼ9か月ぶりですね。

 この間、僕もいろいろあって間が空きましたが、いろいろあって恥ずかしながら戻って参りました。

 まずはいつもの調子で自分語りさせてくださいな。




 私が執筆を思い立ったのは2018年の暮れだった。

 おっさんってやつは、仕事で色々な文章を書く。

 報告書、提案書、稟議書、経緯書、始末書……。

 取引先や社内に送るメールもあったり。

 転職活動ならば履歴書や職務経歴書とかもそれに含まれる。

 

 要するに、おっさんは日本語に触れる機会が多い。


 なので、最初は本当に軽い気持ちで、

「こんだけ文章を書くなら小説というやつも書けるのではないか?」

 といった具合で始めてみたんだ。

 こういう人って割と多いと思う。

 まさに四十の手習い。趣味とするにしてもかなり遅い部類だ。


 というのも。

 おっさんはシンプルに疲れていた。

 会社員として働き続けることに。

 他人よりもメンタルが弱く、仕事も決して順風満帆じゃなかった。

 毎日の通勤も大変。雨風はしんどいし夏のうだるような暑さ、冬の凍てつく寒さに堪えながら年間で240回近く仕事に行く訳よ。それを40年も続けろなんて。


 そんな中で出会った創作や執筆は非日常に没入できる魔法のような時間だった。

 習うより慣れよ、でとにかく書きまくった。

 新しい趣味は楽しくて仕方がなかった。

 


 そしてせっかくだからと、書き上げた小説を公募に出してみたんだ。

 いきなりで無謀なのは百も承知だが、おっさんの日本語力を試してみたかった。

 シナリオの面白さよりも文章を添削してもらう程度の気持ちだったのだろう。

 おっさんは他社や上層部から評価されることに慣れているので。

 まるで人事考課みたいな軽いノリで試してみたんだ。

 この時はまだ夢の印税生活なんて考えていなかった。



 処女作が第17回MF文庫ライトノベル新人賞で一次選考通過。

『神のまにまに』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927861950427178


 あらまぁ。

 こんなラッキーなこともあるのね。

 こうなると更に楽しくなって仕方ない。

 もっと書いて、もっと文章を上手くしたい。

 もっと評価されたい。

 そこからは寸暇を惜しんではパソコンに向かい、キーボードを叩いた。


 そして自身の長編四作目。

『あの娘に「すき」と言えないワケで』

 https://kakuyomu.jp/works/16816700428502371673

 第28回電撃大賞、三次選考通過。



 いやぁ、これほどの評価を頂けるとは。

 こんなありがたいことが実際に有るのだろうか?



 こうなると当然ながら頭をもたげる考えはシンプルにひとつ。

「あぁ、プロデビューして印税でも貰えたら、人生ラクなのに」

 次第に妄想であった印税生活は、リアルな夢想として私を支配し始めた。


 四十を越えた、いいおっさんがこのような考えを抱くってこと自体が痛いってのは充分に理解しているのよ。

 画面越しの皆様の仰る通りです。

 しかし当時の私は必死に願っていたのよね。

 趣味として始めた執筆がやや軌道に乗ったから、というだけではない。

 ここから私の転落人生が始まるとも言える訳でして。


 それが何故かって?

 アラフォーは地獄の始まりだから。


 自称する精神年齢と実際の身心の乖離は相当なものになるし、若い頃のようにこれまで容易く出来ていた物ごとを素直に諦めるという覚悟も必要になる。

 それを誤魔化して生きているうちは楽しいが、それに気づいて自身も欺けなくなるのがまさに四十の壁だった。


 

 俗に四十は不惑の歳などと言われるが、現に今の私は未だ惑わされてばかり。

 2019年に母を亡くし落ち込む。

 2020年、仕事で盛大にメンタルを崩し休職からの転職を余儀なくされる。

 しかも世間はコロナ禍のまっただなか。先行き不安の中、文字通り社会と隔絶された私は孤立を深める。

 2021年、職を変えて出直すも前職のメンタル崩壊の影響は大きく数度、休職。

 そして以降も精神的な不調は続き、寛解とはならず。


 

 こうなるといよいよ焦燥感に囚われてしまう。 


 メンタルと私生活の不調に釣られるかのように、印税生活への渇望は増しつつも、私自身の小説執筆への熱量は次第に奪われてゆき、さらに迷走していった。



 電撃大賞さんでの『あのすき』三次選考通過が自身の鎖となり、自分の作風に悩み始めたり、あれこれと実験的な事を繰り返すが、上手くいかず。


 気分を変えてここ、カクヨムさんにお邪魔してみるも鳴かず飛ばず。

 それでも、自主企画にお邪魔したり、素直に投稿した作品に対して褒めてくれる

方が居るのは凄く嬉しかったし、執筆を続ける励みにもなった。

 しかし承認欲求の闇は、却って私の執筆に対する自信を無くす。


 そうやってカクヨムさんではお茶を濁すように短編2万文字程度のくだらない作品を掲載しつつも、なんとか新作として毎年、10万字超の長編だけは一篇でも執筆しようと続けてみる。



 そして二度目の事件が――。



『長野県に居る間はとにかく「おやき」しか食べてはいけない旅リターンズ!』

 https://kakuyomu.jp/works/16817330656239898995

 2023年7月、カクヨム公式レビュワーコメント獲得。



 おわぁ、こんな巡り合わせがあるなんて。

 いえ、ありがたいことですよ。

 私のような人間が改めてこうやって評価して頂けるのは、本当にありがたいです。

 書き続けてよかった。


 でもねぇ……。


 よりによって小説じゃなくて旅のエッセイだとっ!?

 お遊びで書いたエッセイがバズるだとぉっ!


 俺はエッセイストじゃねぇんだよおぉっ!

 ぐぬぅっ、うぎぃぃぃっ!! うぎゃあぁぁっっっす!!!



 私は腐って喚いて身悶えまくった。

 アマチュアのちっぽけな物書きとしての取るに足らないプライドが爆発してしまうという困った病に侵された私。

 以来、執筆の手はぱたりと止まった。


 カクヨムでの私の作品達は完全にエタり、冬に短編を一本発表したのみ。

 他人様の作品を読むこともできなくなった。


 それから一年。

 ログインしなくなると、カクヨムさんからの通知も自然と来なくなる。

 大したものだ。

 要するに私はもうここではお払い箱なんだね。

 カクヨムさんからのオススメ作品紹介や、フォロワーさんの新作通知すら届かなくなったメール受信箱を見ながら、仕事で疲れた私は自嘲気味に、電車の座席に背中を預ける。

 そんな日々の繰り返し。


 公募なんて無駄な作業だ、執筆で印税生活なんて一握りのプロがやっていることで私は単に現実を突きつけられて、それを早めに知る事ができたのだ。

 だったら本業である会社員として仕事に邁進した方が無難じゃん。

 その方が評価や昇給、昇進といった面でもメリット大きいもん。

 いやでも、その仕事が辛くて仕方ないんだけどさ。


 だけどもう土日だってパソコンの前にかじりつく必要もない。

 同じ姿勢で執筆ばかりしてて肩や腰を痛める不安もない。


 そう、執筆なんて所詮、趣味だよ。

 非生産的で無意味な趣味なんだ。

 無駄だよ、無駄。

 こんなものにワンチャン期待を寄せてた自分が愚か過ぎる。



 歳を重ねれば代謝も落ちてお肉も付きやすくなったし、自重で優雅に夜空を舞う事もできない。

 こうしてピーターパンのおっさんは徐々に飛行高度を落としながら、やがて地面へと降り立った。

 長い夢から醒めたのだ。



 しかし、敢えて言うなら自分が生み出してきたヒロイン達に申し訳ない。

 君達を満足にプロデュースできず本当に悪い事をした。

 今をときめく売れ線の作家先生にプロデュースして貰えたら、もっと明るい未来があったであろうに。

 でも気づいちゃったんだもん。


 普通の女の子になりたいキャンディーズのように。

 引退コンサートでマイクを舞台に置いた山口百恵さんのように。


 あたし普通のおっさんになるわ。

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