第14話 なんか腹立って
私達は一瞬そんな国東くんの方を見たが話しの方へ戻った。それからすぐに香我美は立ち上がり
「次の授業が別棟なんでそろそろ私は戻ろう。」
そう言って教室を出て行った。瑞穂は香我美が出ていくと私へ言った。
「香我美ちゃんの前では訊けんやったけど、そんなに臼杵くんに一生懸命になるってことは未来でなんか有ったんやろ? 」
「うん。実は私の居た未来では来月ぐらいに時計塔から飛び降りたんよ。イジメが原因で。」
瑞穂はその言葉に驚くと顔を近付けて更に小声で
「じゃあもしかして臼杵くんも未来から来たん? 」
「いやそう言えば臼杵くんは未来のこと知らんやったから違うと思う。」
「時計塔から飛び降りて過去へ戻ったんは巴ちゃんだけなんやね。それは何かのヒントになるかも。それで巴ちゃんは臼杵くんを助けたいんやね。」
「それがそうでも無くて、なんか説明できんけど腹立つんよ。それに死ぬ必要も無いって言うか、未来ではイジメた人達はお咎め無しやったし。助けるって言うか変えたい。この腹立つ状況を。」
「巴ちゃんらしい。」
瑞穂はうなずきながら
「でも先生も動かんし、臼杵くんが警察にも言わんなら解決は難しいよね。守ろうにも巴ちゃんも危険な目に遭うし。」
「そやね。今日は部活も無いしとにかくもう一度放課後に臼杵くんと話してみようと思う。」
「解った。でも無茶したらつまらんよ。」
そう話し終えるとお昼休み終わりのチャイムが鳴り、私と瑞穂は机を戻して次の授業の準備をした。
―――そして放課後
私は終礼を終えて隣のクラスを覗くともう誰も居らずにみんな帰っていた。こんな事なら連絡先を聞いておけば良かったと思ったが、仕方ないので帰り道に彼を捜すことにした。
とりあえずメッセージで香我美に臼杵くんの家を時ヶ郷方面の校区境目付近でドンコ婆の店のとこら辺だと教えてもらった。私は軽くランニングしながらドンコ婆の店方面へ向かった。
余談ではあるが私は中学校からドンコ婆の店までの道のりが好きだった。この海沿いの道を走るとキラキラした陽の乱反射を受けてまるで光の中を走り、何処までも早く走れそうな気がしてくる。そして自分が光になったような気さえして心地好いのだ。
私はこの数百メートルを走り抜け、時ヶ郷の地域へと入った。海岸線を抜けてちょっとした住宅街へ着くとその先にドンコ婆の店がある。そしてこの近所に臼杵くんの家が在るのだがとりあえず私は各家の表札を見ながら臼杵くんの家を探した。
しかし中には表札の無い家もあり、玄関口でいきなり犬に吠えられたりとでなかなか臼杵くんの家を見付けるのは困難であった。ひと通り探し回ったのだが結局判らずにドンコ婆の店で休憩することにした。
「ドンコ婆、ハム玉とコーラ頂戴。」
「鋭子さんって言いないって言いよるやろ。ハム玉とコーラね。」
「あっ、そうだこの辺で臼杵さんって家在る? 」
「はいよハム玉とコーラ。」
ドンコ婆のコーラとハム玉を受け取るとドンコ婆は
「臼杵さんならそっちの奥の茶色い屋根の家だよ。」
あっさりと教えてくれた。私はドンコ婆の指差した方向を振り返り見ると確かに灰色や黒の瓦屋根が並んだ中に茶色い屋根の家が見えた。
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