第12話 カレーパン争奪戦!

 臼杵くんがだんだんと理解してくれて話しを進めると遠くから聞き覚えのある声が響いた。


「あっ! 川村おったぞ! 」


柔道部の国東くんが私達を捜していたのだ。その後ろから瑞穂が息を切らして走ってきた。


「ハァ、ハァ、巴ちゃん…… もうすぐ授業始まるんにどっか走って行ったけん国東くん…… に協力して捜してもらったんよ。」


私は二人に目一杯謝り、振り向いて


「臼杵くんも教室戻ろ。また何かあったら相談乗るけん。」


そう言って4人で教室へと戻った。瑞穂は私の隣で小声で


「どうしたん? 」


と訊ねてきたので、私も小声で


「何か居ても立っても居られんくなって、細かいことは後で話すね。」


そう言うと瑞穂は「わかった。」と小声でうなずいた。国東くんはそんな私達へあまり興味を示さず


「おい、武内。川村見付けたんやから昼にカレーパンな。」


「カ、カレーパン!? パン奢るち言うたけどカレーパンとか人気ですぐ売り切れるやん! 焼きマヨパンにしない。」


「え〜、カレーパンが美味しいんに。」


「いいよ、国東くん瑞穂、迷惑かけたん私やし私が2人にカレーパン買っちゃる。」


「なら契約成立やな。」


とカレーパンに上機嫌で教室へと戻った。



―――私達は授業へ間に合い事なきを得てお昼休みとなった。



 私はお昼のチャイムが鳴るとダッシュで教室から走り出て購買部へと向かった。お昼の購買部は競争が激しく、多くの生徒が教室からダッシュで走り出した。中でも野球部やサッカー部の腹ペコ男子達は最大の好敵手ライバルであった。


 教室を出てすぐに野球部の佐々木くんが隣へ並んで走り出した。流石に男子の足は早く私は抜かれそうになったので


「佐々木くんごめん! 」


と言い上履きのかかとを踏むと佐々木くんは


「ブピャッ! 」


と変な声を上げて転び私はライバルを一人減らし購買部へ走ると、次は目の前にサッカー部の田嶋くんが走っている。私は横へ並び足を掛けようとすると、田嶋くんは上手く足さばきで交わし笑った。ならばと私は通路の丁字路の曲がる所でカーブ内側から田嶋くんへ体当たりをした。田嶋くんはその衝撃には耐えたが曲がりきれずに


「エバラ! 」


と謎な言葉を発しながら壁へ衝突した。


「すまない田嶋くん。これもカレーパンのためだ。」


と呟き走り続けた。すると思わぬ伏兵、野球部補欠の栗橋くんが前を走っている。私は更に速度を上げて栗橋くんへ追い付くと栗橋くんは


「レギュラーに成れなくてもパンを買うことだけは負けられない! 」


とよく解らない意気込みを見せて私を追い越した。私も負けじと追い越そうとするが購買部へ向かう栗橋くんの気持ちは強く追い越せず栗橋くんが先に購買部へ辿り着き私は負けてしまった。


 しかし勝負はまだ終わっていなかった。栗橋くんはポケットから財布が引っ掛かって出てこないでいる。その隙に私は


「徳子さんカレーパン3つ! 」


と注文を終え握りしめていた千円札を購買部のおばちゃんへ渡した。おばちゃんは


「はいよ! 」


と威勢よくカレーパンを3つビニール袋へ入れてお釣りと共に渡してくれた。私の勝ちである。栗橋くんはそんな私を見て膝から崩れ落ちた。




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