第5話 時計塔へ
瑞穂が取り出した本には『
「こん時ヶ浜は昔、時津姫っち時の巫女と呼ばれた姫が治めちょったんよ。もしかしたらそれが関係あるんかもしれん。」
瑞穂はとりあえず私の話を信じて興奮していた。それは当事者の私よりも興奮していて私の方が少し引いてしまった。
―――そして興奮した瑞穂の勢いに押され、私達は次の日の土曜日に学校の時計塔へと行った。
「巴ちゃん、きっとあの時計塔になんか仕掛けが有るんよ。もしかしたら私たちは歴史的な大発見をして新聞やら載って国から表彰されたり…… 」
妄想と欲望がだだ漏れの瑞穂の話しに頷きながら私達は学校へと歩いた。
中学校の校門へとたどり着くと葉桜の列んだ通りを抜けグラウンドのフェンス裏に在る時計塔へと向かった。お昼前のグラウンドではサッカー部が練習をしていた。グラウンドで汗を流して走り回る彼らの姿を見ていると私も走りたくなってウズウズしてきた。
しかし瑞穂はそんな私を見逃さずに
「巴ちゃん、今日は大事な調査なんやから走りに行ったらつまらんよ。」
そうたしなめた。私は口をへの字に曲げながら
「わかってるよ〜。」
と相づちを打ち校舎とフェンスの間を歩いて時計塔へと歩いた。そして時計塔へあと少しという所で校舎の影から嫌な予感のする声が聴こえた。
「オマエなんとか言ってみろよ! 」
ドスッ
と鈍い音まで聴こえる。瑞穂はそんな事にもお構いなしに時計塔へとツカツカ歩いている。夢中になった瑞穂はいつもそうだ気に入った本を読んでいる時なんかは授業が始まっても読み続け、先生に注意されて授業が始まったことに気付くほどに集中してしまう。
しかしこんな時はそれが正解でトラブルは目を合わさなければ発生しない。だけど私は声の方向が気になって振り向いてしまった。
そこでは気の弱そうな少年が学校の不良グループ3人に囲まれていた。私は面倒そうなので瑞穂の所へ行こうと目を逸らしたのだけれど、何故か囲まれた少年の顔が気になった。色白で気の弱そうにおどおどとした感じ……
「もうウゼーからオマエ死ねよ。どうせ死ぬ度胸もねーだろ! 」
ガスッ
その言葉で私は思い出した。彼はあの時計塔から飛び降りた少年だ。そう、隣のクラスで名前は確か
思い出した瞬間に私の感情は沸騰したかのように怒りが湧いてきた。
「あんたたち止めなさいよ! 寄って集って一人を虐めて! 本当に死んじゃう人だっているんよ! 」
気付けばありったけの声で叫んでいた。その瞬間、不良グループの3人は手を止めてこちらを見た。その中で長身の金髪の男がこちらへ歩いて来た。私は叫んではみたものの喧嘩なんてしたこともなくて足が震えた。
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