第3話 ミイラは日本にいる
「しかし日本政府もよくそんなものを国内に運び込むことを許しましたねえ」
動くミイラをそんなものと言い切るサトルもサトルだが少将も二人に慣れてきたようでスルーする。
「まあそのあたりは政治的にな」
とだけ答えるが、石油など日本が欲しい物を提示したことは容易に想像できる。
極秘裏にミイラが運ばれたのは日本の地方空港だったのだが、と少将が話始めると興味なさそうにサトルが
「で、結局どうなったんすか? 直近のとこだけでいいですよ」
と冷たく言う。
「あ、ああ。すまん、ミイラは結界を破り突然暴れ出した。結界を張っていたイレイサーの一人が死亡し、他の者も負傷してしまった。そしておそらくミイラはこの付近に潜伏していると思われる」
「そんで俺らが呼ばれたってことですかあ」
サトルが気怠そうに言うと ちょっと待ってくれ、とアフマド少将は二人を止める。
二人は何事かと少将を見ると、少将は無線機を取り出し何かを話し始めた。
すると少将の後ろの壁の一部が音を立てて横にスライドし、中から迷彩服姿の屈強な男たちが現れ、三人の正面で陣形を組むと、男達は一斉に銃を構え始める。
その光景を見てマナミは驚き声を上げ、サトルは興味なさげにしている。
どうやら少将の部下たちが到着したようだ。
「アフマド少将、これは?」
マナミが尋ねると少将はミイラを捕獲するためだと短く言った。
「少将、お分かりになられていないようですので一応申し上げますが、軍の装備でミイラを捕獲することは不可能だと思いますよ。しかも日本国内でエジプト軍が発砲とか、ただでは済まないですよ?」
マナミはあきれたように言うが少将は苦しそうに
「すまん。上からの命令に私は逆らえない」
と短くつぶやいた。どうやら少将自身はわかっているようだ。
一呼吸おいて少将が部下たちにミイラの捜索を命じると特殊部隊は一斉に散開していった。
特殊部隊がミイラを発見した場合は速やかにその場を離れ連絡、攻撃はせずミイラが移動を開始したら追跡し、可能であれば捕縛するということだ。
少将によると動くミイラはカフラ王一族の魂を持つ者であり、それをそのままにしておくことはカフラ王に対する冒涜になるらしい。
「でも俺らがカフラ王一族の魂をイレイスするって大丈夫なの? 日本人がイレイスしちゃって」
サトルがとぼけて聞く。
それを聞いた少将は苦虫を噛み潰したような顔をして黙ってしまう。
マナミはサトルを睨みつける。
二人のやりとりを見ていた少将は
「ミイラをイレイスせずに捕まえることはできるのか?」
というと、マナミは
「まず無理ですね」
と答え
強力な結界で守られていたはずなのにミイラはそれを突破した。
生半可なイレイサーでは歯が立たないだろう、と続けた。
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