質問コーナー

◇◇◇



「私は陰陽師である」



はっきりとした声で、堂々と。

先ほどの公園で話し始めてくれた。

サチちゃんと別れた後、なんでも質問に答えるというから、正体を問うたら教えてくれた。


「神社の子ではあるが、陰陽師の子でもある。

もっとも、そんな有名な家柄…5代家とかじゃないが」

「5代家ー?」

「…安倍晴明の子孫の系統のことだ。私は全く違う家柄の子なのだ」

だからよくわからないけどパワー的なのが使えて、出現とか気配とか見れたのか。


「これで私は何者なのかという質問には答えた。さて、次の質問は?」


「陰陽師ってー?」

「暦を図り、星を見、陰と陽の交わる大地から力を受けるもののことだ」

「そんなRPGっぽく言われてもわからないです…」


「ふむ、では天文学と地学を一般人より研究してきたため、無駄に崇められてきたから霊力を有すようになり、さらに信仰を受けてきたいわゆるスターの家だ」


かなりぶっちゃけた話をし始めた。

でもこれなら咀嚼すれば飲み込める内容だ。


信仰心=霊力


天文学と地学を専門に研究した彼らは一般人からすごいすごいと崇められ、信仰につながり、霊力を持つようになった。


人間よりも神よりな存在になった彼らは、さらに人間の信仰心を集め、不動の地位となった一一こんなところか。


元は普通の人間。



「次の質問は?

「はーい!さっきの槍の作り方ー!」


「あれは簡単だ。

槍を神にしただけのこと」


すんなりと手を挙げて白状しはじめた。え?神?


「神…まあ私は神のようなもの、だが。

その神のようなものが祈れば、崇めれば、それは神となるのだ」


「わー!変な宗教みたーい!」

「なっ、さっき生でみたではないか

意志を持った神としたことで、こちらが命令したことを受け取り、それに沿う行動をとっただろう?

大きくなった」


わかりやすくすれば、ただのものに祈ることで魂を宿したのか。

それに祈ることでその物は自ら姿を変え、協力してくれた。


「ちなみにその服もそうだ。お守りに名前を言えば起動する仕組みになるようにお願いしてある」


ようはプログラミングである。


「札もそうだ。

神聖な儀式を行い、祈ることで、紙というものに神を閉じ込めることが出来る。

中にはロープの神のようなものが入ってるぞ」


だから捉えることが出来るのか。使ったことないけど。



「さあ次の質問はなんだ」


「…じゃあ、どうすればあれをやっつけられるんだ?」


一番の問題を突きつける。


あれの倒し方。


「霧を倒すなんて不可能だ。

実体化したところを狙うと言ったって、刀しか実体化しない。

倒すなんてどうすれば…」

「その刀を倒せば良い」


さも当たり前だろうと言うように。


「もともとあの辻斬りは、刀への思いが強すぎて成ったものだ。

本体は刀。

刀を倒せば滅びる」


「刀って倒せるのー?」


「折る」


「折るって…」


確かに折れば倒せたと言えるかもしれないが。


「えー、ヒナそんな馬鹿力ないですよ…」

「僕もだ。自慢じゃないが体育は2だ」


「…刀というのは、力で倒すのではない。

薄いとはいえ鉄だ、簡単に折れるものじゃない。


刀には折れるツボがある」


「壺?」

「カレンなら言うと思ってた」


「弱点というべきか。

とにかく、力任せではダメだ」


でもたしかに、鉄が折れるなんてめったに出来ることではない。

ツボを叩き切ることで折れるのだろう。


「そのツボってどこだ?」

「それは自分で戦いながら探してくれ」


え、嘘だろ?

自分で何とかしろなんて、スパルタすぎる。

カレンもヒナちゃんも呆然としていた。



「あ、カモくん。

もう5時だ、おうちの人が心配するんじゃないのか?」

もう日は暮れはじめている。

小学生があまり遅くなっては、カモくんの親は心配するだろう。

「…そうか、もうそんな時間か。

なら帰ろう」

「おうちどこですか?送りますよ!」

「…いや。いい。年の離れたお友達は、さすがに怪しまれる」

それもそうだ。


「今日は本当に助かった。倒せなかったとはいえ、一人の女の子が救えたのだ。無力とは思わないでくれ」


深々と頭を下げて、真摯に言う。


そうだ、倒せなかったとはいえ救えたのだ。

無力じゃない。

同じ被害者が出ないうちに倒さねば。


「明日も校門の前で待ってる。

だからぜひ、来てほしい」


必死な目で。


「よろしく頼む」


バイバイと子供らしい挨拶をすることなく、灰色の髪を夕日に照らして帰っていった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る