17「ケジメの時間じゃね?」②
夕方の公園で夏樹と千手はジャックとナンシーが来てくれるのを待っていた。
最初こそ、夏樹は千手をふたりに会わせて良いものかと悩んだ。
ナンシーを解剖しようとしたのは千手ではないにしても、手を貸していたのは間違いない。人間が宇宙人に解剖されかけていたら、誰だって怒るだろう。ならば、その逆だって当たり前だ。この世界に、勝手な理由で奪われて良い命などないのだから。
しかし、千手は反省していると言った。
夏樹にも、祐介にも、フレンドリーに触れ合っていた。少なくとも、祐介は千手の励ましに感謝していたのは間違いない。
善人と断言できないが、悪人であるとも思えない。
ならば、ジャックとナンシーに託してみたいと思った。
千手の存在が、ナンシーの恐怖とジャックの焦燥感を思い出させるのなら、会わないほうがいいと思う。
ふたりはもう過去を乗り越えて前に進んでいるのだから、千手の謝罪がなくてもいいと考えてしまう。それでも、謝罪したいという千手のことを無視するには、少し一緒に過ごし過ぎた。
夏樹は、デート中のジャックたちの邪魔をすることを申し訳ないと思ったが、メールをしてみた。
夏樹から見た、千手の人となりも伝えた。
万が一、千手がジャックたちを前に、豹変し、隠していた本性を明かすようなことをするのなら、責任を持って夏樹が対処することも約束した。
――言うまでもなく、ジャックはもちろん、ナンシーは千手と会うと言ってくれた。
改めて親友たちの懐の深さに感服するばかりだ。
かつて、夏樹は異世界で、地球という異なる世界から来た勇者、に興味を持った宮廷魔法使いから奴隷になるように言われたことがある。他の奴隷と子作りをして、勇者の血を増産しろ、そして用済みになれば解剖したいと言った、その宮廷魔法使いは――夏樹にドヤ顔で馬鹿なことを言い終わった瞬間、縦横に斬られて絶命した。ついでに、その魔法使いの門下生という奴らも、憂いを残さないように殺しておいた。
夏樹ならば、ジャックとナンシーと同じことをされて、千手と会うのなら、殺すだろう。しかし、夏樹のように暴力で物事を解決するようなことをしない紳士淑女なグレイは、千手の謝罪を受け入れるようだ。
許すか、許さないかはまた別の問題であるだろうが。
ブランコに座る夏樹から少し離れたところで、緊張気味に立ちながら待っている千手がいる。
つい電子煙草に手が伸びそうになっているが、必死で我慢しているようだ。
夏樹としても、どう声を掛けたらいいのかわからないので、見守っているだけだ。
そうこうしていると、人の姿となったジャックとナンシーが公園に現れた。
カジュアルな格好で、たくさんの紙袋を持っているのは観光していたので仕方がないことだ。
「すまない、待たせたようだな」
「遅くなってすみません」
少しジャックとナンシーも緊張しているのが伺えた。
千手は、「ど、どちら様?」と言った顔をして夏樹を見たので、
「あんたの会いたがっている宇宙人さんの人としての姿だよ」
教えてあげると、目の前の美男美女があの時の宇宙人だとわかった千手は、その場に膝をついた。
そして、ジャックとナンシーが止める間も無く、地面に額を擦り付けて謝罪した。
「謝って済む問題じゃないのは百も承知だが、それでも、申し訳ございませんでした!」
〜〜あとがき〜〜
千手さん、真っ直ぐに謝罪しました。
ちなみに、ナンシーさんをガチで解剖しようとした人たちは、記憶を消され、なんか犯罪をやらかしたこととなって逮捕されています。本人たちは覚えがないので困惑していますし、無罪を主張していますが……相応の罰を受ける予定です。
楽しんでいただけましたら、フォロー、レビュー、コメント頂けますと励みになります。
よろしくお願い致します!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます