4「好き勝手言ってるみたいじゃね?」①
「由良くん、おはようございます!」
「あ、都さん。おはようございます」
教師に謝罪して職員室から出てくると、いつの間にか待っていたらしい水無月都がにこにこ笑顔を浮かべて挨拶をしてきた。
異世界に居たせいで存在を忘れていたクラスメイトとの再会をしたとき、第一印象はお世辞にもいいものではなかった。
最悪にならなかったのは、やりたい放題の優斗と、自分勝手の杏の存在がいたからだ。
紆余曲折あり、都から謝罪を受けた夏樹は、クラスメイトということもあり良い関係を築いていこうと思っていたのだが、
「さっそく鞄をお持ちします!」
「ちょ、いいって、いいですから、鞄をぐいぐい引っ張らないで」
監視者という話も出ていた都だが、まるで舎弟のように夏樹のスクールバッグを持とうとする。
もう学校に居て、教室まですぐということころでスクールバッグを持ってもらう必要などないし、中身はすっかすかなので重くもない。
和風美人の都に、クラスメイトの男子が鞄を持たせているなどと他の生徒に見られたりしたら、どんな悪評が立つかわからない。
「バッグはいいんで、ね、お願いだからはーなーしーてー」
バッグを取り返すと、抱きしめて守る。
少ししゅんとした都だったが、すぐに気持ちを切り替えたようで夏樹と一緒に教室に向かって歩き出す。
「改めて昨日はどうもありがとうございました。お姉ちゃんとちゃんと向き合うことができたのも由良くんのおかげです。昨日も、一緒に寝たんです。お姉ちゃんってスレンダーなのに柔らかいんですよ、ぐへへ」
「女の子がしちゃいけない顔してるよ」
「おっと、失礼しました。ところで、由良くんは朝だというのに何やらお疲れな顔をしていますね。やはりみずち様との件が、尾を引いているのですか?」
心配してくれる都に、「違う違う」と苦笑する。
みずちは強かったし、力もそれなりに出したが、翌日に持ち越すほどではない。
原因はもちろん、松島明日香にあった。
夏樹は、都を見て、ちょうどいいと思った。あまり関心のない明日香のことを都に聞いて見たら、なにか知っているかもしれない。特に、女子視点なら男子にはわからないなにかを教えてくれる可能性がある。
「朝からいろいろあったんだよ。都さんって、松島明日香って知ってる?」
自称幼馴染みは放置でもよかったのだが、放置したせいで面倒なことになってら面倒などでなんらかの対処ができれば、と思い尋ねると、都ははっきりとわかりやすい嫌悪を顔に浮かべた。
「松島明日香ですか? もちろん、あのクソビッ――ですよね」
「え? 今、すごく汚い言葉を使わなかった?」
「気のせいです」
「で、でも」
「気のせいですよ。それで、そのビッ――じゃなくて、松島さんがどうかしましたか?」
「やっぱり汚い言葉使ってるよね!?」
清楚な見た目の都から聞きたくない言葉が出てきて、夏樹はドン引きだ。
しかし、都が汚い言葉を使うほど、明日香への印象は悪いのだろう。
「えっと、なにか知ってるの? 俺さ、朝からうざったく絡まれたからさ」
「そういえば、松島さんは由良くんの幼馴染みらしいですよね。よく言ってます。必ず、その次に三原優斗と比べてどうこうという発言を繰り返すので、女子はスルーですが」
「ちっちゃい頃、少しだけ一緒に遊んだって幼馴染みなのかなぁ?」
「少しだけってどのくらいですか?」
「一ヶ月くらい」
「……それって、ただの知り合いでは?」
「だよねぇ!」
第三者からただの知り合い認定してもらえて、夏樹は心底ホッとした。
「しかも、遊んでいたときは、男の子だと思っていたんだよ。あとで女の子だって知っても、へーって感じで」
「……そうなんですか?」
都は少し驚いた顔をしていた。
「なんで驚くのかな?」
「いえ、あの、松島さんは、由良くんが自分に気があると常日頃から言っているので」
「――許せない!」
〜〜あとがき〜〜
夏樹くんおこです。
異世界で駆逐したモンスターが、実は人間が殺した精霊の成れの果てだったと知った時くらいおこです。
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