5「好き勝手言ってるみたいじゃね?」②





「だ、大丈夫ですよ。誰もまともに相手にしていませんから。クラスメイトとして、松島さんとは関わらない方がいいと思います。彼女と親しくすると、その誤解されると思いますので」

「もうすでに気があると誤解されているんですけど。うわぁ、憂鬱」

「そうじゃなくてですね……その、非常に言い辛いのですが、松島さんは一部の男子と、とくにバスケ部の男子と仲がいいんです」


 都の言いたいことがわからず夏樹は首を傾げた。


「バスケ部の女子がバスケ部の男子と仲がいいのって普通じゃないの?」

「言葉が足りませんでしたね。松島さんは、バスケ部の男子と『だけ』仲がいいのです」

「んん? それってどういう?」


 どこか遠回しな言葉に、夏樹が怪訝そうな顔をする。

 すると直接言わなければ駄目かと思ったようで、なぜか少し顔を赤くした都が夏樹に耳打ちした。


「松島さんはバスケ部の男子の一部と、その、関係があるそうです」

「……関係ってあの?」

「あの、です」

「うわぁ」


 詳しく聞くつもりはなかったが、女子の中では結構有名のようだ。

 優斗とお盛んであることは知られており、悪ノリした男子が優斗と付き合っていないのなら自分にもチャンスがあるのではないかと誘ってみたところ、見事に行為に至ったという。その男子が武勇伝のように語るので、次から次に男子がアタックし、関係を持ったそうだ。

 一応、好みがあるようで断られた男子もいたようだが、一部の男子と女子たちの中では松島明日香の評判は相当悪い。


(優斗ぉ……繋ぎ止めておけてねーじゃん! あの女も、俺を優斗と比べたりしていた割には他の男と関係を持つとか――っ、これが破廉恥)


 と、話を聞いたところで、最近の若い子はやーねー、くらいにしか思わなかった。

 襲われたとか、脅されたとかならいざ知らず、お互いに合意の上なら問題ない。もちろん、不特定多数の相手とそういうことをするのはいかがなものかと思うが、人の趣味嗜好に口を出すような趣味ないのだ。


(だけど不思議なのが、相手がよりどりみどりなら、なんで俺を誘ってきたんだろう。あ、駄目だ、考えられない。もう興味が、無くなるぅ)


「そんなことよりも聞いてください。今度の日曜日、お姉ちゃんと遊園地デートしてくるんです!」

「そうなの? 姉妹が仲良くてなによりだよ」

「本当はお母様も一緒に行けたらよかったのですが、なんでももうみずち様の代わりに土地神としてきてくださる神様がお決まりのようで」

「昨日の今日でもう?」

「ええ、神界の上層部の方からお電話があったそうです」

「……神託とかじゃなくて電話が来るんだ。がっかりすぎるだろ」


 神様たちが現代社会に順応していることに驚くと同時に、ちょっと残念だった。


「水無月家は、今、変わりつつあります。みずち様はいなくなってしまいましたが、新たな神様と一緒に向島市の守護に励みたいと思っています。私も次期当主としていくつか仕事を任されました」

「大変ねぇ」

「そのひとつが……三原優斗の再調査です」








 〜〜あとがき〜〜

 那岐爺「あ、もしもし? 水無月さんのお宅です? ご当主はいるかな?」

 茅さん「お電話変わりました」

 那岐爺「新しい土地神を送るんで、最低限の世話をしてやって」

 茅さん「はぁ」

 那岐爺「ビッグネーム送るから、楽しみにな!」


 的な、やりとりがあったとかなかったとか。


 優斗くんの再調査ですが、彼は特別登場しないのでご安心ください。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る