3「新たな刺客が現れたんじゃね?」②
「あー、おっかしい。んで、君は俺にどんな用事があって来たの? そろそろ学校に行きたいんだけど」
「あ、ごめんごめん。優斗とはもう関係ないから、そろそろ夏樹と元通りになってあげてもいいかなって」
「んんん?」
「優斗にはいろいろさせちゃったけど、代わりに夏樹に悦んでもらえることたくさん知っているから、ね?」
なにが「ね?」なんだろうか、と夏樹は悩んだ。
真面目に相手をするべきか、放置するべきか悩む。
そもそも元通りと言うが、幼い頃少ししか遊んだことがないのに、なにを元通りにするのかもわからない。
もっと言うと、優斗と『いろいろ致した子』とこうして会話しているのも嫌だ。
「あのー、じゃあ、学校行きますんで。さようなら」
「あ、うん。さような――っじゃなくってさ、ああ、まどろっこしいなぁ! あたしが付き合ってあげるって言ってるの! そのくらい察してよ!」
「……なんで?」
「なんでって……ほら、あたしって優斗の相手をしてあげているときに、理由はわからないけど夏樹に酷いこと言っちゃったでしょう? だから、お詫びっていうか、ごめんねの代わりっていうか」
「えー。普通に謝ってくれればいいんですけど。いえ、その前に、特に気にしていないんで。もういいです。はい、じゃあ、そういうことで」
正直、引いていた。
明日香は以前、夏樹と優斗を比べる発言を多々していた。明らかに見下す態度もあった。それに関して『酷いことをした』という実感と罪悪感があるのはいいことだと思うが、お詫びで付き合うとかありえない。
正直言って、明日香のことは幼い頃に遊んでいたときも男子だと思っていたし、女子だとわかっても「へー」くらいにしか思わなかった。
ボーイッシュで人当たりのいい明日香は、年頃の少年たちには受けがいいだろうと思う。しかし、夏樹的には『ない』の一択だ。
興味がない。
関心がない。
優斗関係者はもうお腹いっぱいだ。
なによりも、小梅と銀子という美女と一緒に楽しい生活をしているのだ。同級生の女の子に魅力を感じるかと問われると、残念ながら難しい。
魅力的な年上のお姉さんであると同時に、家族同然に、長い付き合いの友人のように、遠慮なく明け透けに接することのできるふたりとの時間がとても大切なのだ。
明日香に関わって、その貴重な時間を消費したくない。
(悪いと思っているのも本当だと思うけど、この子の目はさ……俺を利用した異世界人と同じなんだよねぇ。こんな気持ち悪い目をしていながら、俺が靡くわけねーじゃん)
「ちょっと、もういいですってなによ!? あたしが何度男子から告白されたのか知ってるの? あたしは夏樹がいいって思っているんだから、それに応えてくれてもいいじゃない?」
「遠慮しますー」
「夏樹って女の子と付き合ったことないでしょう? 女の子が気持ちいいって事たくさん教えてあげるから、ね?」
「いいですぅー」
しつこい勧誘を断るように、バッグで身を守りながら夏樹はそそくさと去っていく。
明日香が追いかけて来たため、夏樹は走り出すと、さすがに追いかけてはこなかった。
(なにあの子、怖い! 中学生なのに、なんか嫌! エロいとか何にも思わないんですけど、むしろキモいんですけど! おえぇ!)
明日香が優斗に未練も何にもないことはいいことだと思ったが、代わりにこっちにくるとは思いもしなかった。
夏樹は明日香から覚えた生理的嫌悪を払うように、中学校にたどり着くと、唯一事情を話すことができる一登に泣きつこうとして、途中で教師に見つかった。
「くぉら、由良ぁ! お前、何日学校サボったと思っているんだ!」
「ごめんなさーい!」
新たな自称幼馴染みが現れるし、教師には怒られるし、散々な朝だと夏樹は肩を落とした。
〜〜あとがき〜〜
新たな刺客……ではなく自称幼馴染み明日香さんですが、いろいろお察しください。
詳細はまた次回にて。
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