7「捕まったんだけど冤罪じゃね?」②





「ちょ、待って、なにこれ? なんなのこれ? 待って待って、拳銃はやばい! やばいって! いやいや、なんで俺が拳銃を向けられているの!? あんたたち誰!?」


 突然、警官たちに囲まれただけでも驚きなのに、拳銃まで向けられたら動揺するのは当たり前だ。

 思わず魔法を使いそうになって、我慢する。

 悪いことをしていないのに、拳銃を向けられるなど理解ができない。

 そもそも平和な日本で、純真な中学生がこのように拳銃付きで包囲される意味がわからなかった。


「黙れ! 手を上げろ!」

「わ、わかりました。ていうか、あんたら本当に警官!? 手帳見せて手帳! ほらドラマでFBIが出すようなあれ!」

「我々はFBIじゃない!」

「そんなことは知ってるよ! そういうことじゃなくて、脅す前に身分をちゃんとして! あと、なんで俺がこんな目に遭わなきゃならないんだよ!」


 さすがに怒りを覚え、怒声を発すると、なぜか警官たちが怯えた様子を見せた。


「――え?」


 夏樹は違和感を覚える。

 拳銃を向けられた中学生ではなく、拳銃を向けている大人たちがなぜ怯えるのか理解が及ばない。


「ちょっと、あんたたち、本当に警官か?」

「動くな! お前が霊能力者だということはわかっているのだ! 我々が霊能力を持たずとも、拳銃を相手に無事に済むと思うな!」






「――は?」






 背広を着た警官の言葉に、夏樹は耳を疑った。


(ちょっと待って、え? なんて言った? 霊能力者? 魔法使いとかなら、魔法を使うところを見られていたせいで……いや、視線はなかった。だけど、なんで霊能力者?)


 夏樹は首を傾げ、ある仮説を思い浮かべた。


「まさか、この世界に霊能力者がいるのかぁああああああああああああああああ!?」

「なにを言う! お前もそうだろう! 若いようだが、はぐれ霊能力者だろう!」

「いえ、あの、誤解」

「普段なら事情を説明し、自分の存在と力を自覚させるのだが、お前は別だ!」

「なんで!?」

「ふざけるな! あれだけの力を使っておきながら、何を言う!」


(しまった、見られてはいなかったとしてもどこかで感知をされていたのか?)


 内心、舌打ちをする。

 霊能力者と言われ、思い浮かぶのはライトノベルや漫画の登場人物を思い浮かべてしまう。だが、まさか警察が把握しているのは意外だ。

 仮に霊能力者がいたとしても、人知れず、それこそ警察にも隠れて活動しているものだと思い込んでいた。


(顔は見られたけど、強行突破すれば……いや、映像に残った場合もあるかな? なら、とりあえず全員をぶっ飛ばして、電子機器をすべて破壊すればオッケー?)


 物騒なことを考えていると、背広と制服を着る警官たちの後ろから、同じく制服に身を包んだ中年男性が、二十歳ほどの女性を伴って現れる。


「どうやら、手こずっているようだな」


 男性は、拳銃こそ手に持っていないがベルトに装備している。女性の方は、ひとりだけ異質で、この中で唯一刀を左手に持っていた。


(あれ? この人?)


「署長!」

「――んんん?」


 夏樹には、署長と呼ばれた男性に心当たりがあった。

 体感で六年ぶりだが、記憶にある姿と変わっていない。


 白髪混じりの頭を刈り上げ、背の高く体格のよい男性。

 ――間違いなく、母の友人で、夏樹にとってよきおじさんだった。


「青山のおじさん!?」

「あん? ――って、おい! まじかよ、はぐれ霊能力者って夏樹かよ!?」


 異世界から帰ってきたばかりだが、知人バレする予感がした。





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