「何しにって…新歓コンパだよ!」

 強気で、秀人が言う。

「でも万が一…何かあったら、シャレにならないよ」

えらく後ろ向きな発言だ。

「何かあると思っているのか?」

おや、いう顔になり、あからさまに秀人はへッと鼻で笑う。

「そんなの、あるわけがないだろ?」

あんなの嘘っぱちだよ。

ずいぶん臆病者だなぁと、哀れむような目付きになる。

「こんなの…単なるネタだろ?

 実際はきっと…そんな大そうなものじゃあないよ」

あくまでも強気を押し通す。

 仲間たちがすっかり及び腰なので、秀人は逆にムキになっているのだ。

彼らはすっかり熱が冷めたように、白けた視線を彼に向ける。

「なぁ、もっと、他にいいとこがあるだろ?」

何も話題の心霊スポットに行かなくても、とやはり気が乗らないようだ。

「なんだよ!ずいぶん、乗りが悪いな!」

ケチをつけられた…と思い込み、すっかり不機嫌な顔になると、

彼らに秀人は大きな声で言い放つ。


 彼は何でも自分の思い通りにならないと、途端に不機嫌になるのだ。

いつも悪乗りして、付き合ってくれる仲間たちが、今回も軽いノリで、

賛成してくれると思っていたのに…

結果はどうだ?

なぜだか冷ややかな目で、こちらをうかがうようにしている。


「いいじゃないか!きっと盛り上がるよ!

 それに…女の子の好きそうな、よさげなホテルだし…」

やけに饒舌に言葉を並べ立てて、どうにかみんなを説得しよう、と

試みている。

「ほら、これ!ホテル ロッサ!

 名前だって、何だかシャレているだろ?

 それに、山奥のホテルだろ?

 洋館で、バラ園があるというだろ?

 絶対ウケルって!

 なぁ、行こうぜ!

 おまえ…気に入った女の子が、いるんだろ?」

まるで駄々っ子のように、秀人は賢人の肩を揺さぶる。

「うーん」

賢人は考え込むようにして、揺さぶられるままでいた。

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