8
「何しにって…新歓コンパだよ!」
強気で、秀人が言う。
「でも万が一…何かあったら、シャレにならないよ」
えらく後ろ向きな発言だ。
「何かあると思っているのか?」
おや、いう顔になり、あからさまに秀人はへッと鼻で笑う。
「そんなの、あるわけがないだろ?」
あんなの嘘っぱちだよ。
ずいぶん臆病者だなぁと、哀れむような目付きになる。
「こんなの…単なるネタだろ?
実際はきっと…そんな大そうなものじゃあないよ」
あくまでも強気を押し通す。
仲間たちがすっかり及び腰なので、秀人は逆にムキになっているのだ。
彼らはすっかり熱が冷めたように、白けた視線を彼に向ける。
「なぁ、もっと、他にいいとこがあるだろ?」
何も話題の心霊スポットに行かなくても、とやはり気が乗らないようだ。
「なんだよ!ずいぶん、乗りが悪いな!」
ケチをつけられた…と思い込み、すっかり不機嫌な顔になると、
彼らに秀人は大きな声で言い放つ。
彼は何でも自分の思い通りにならないと、途端に不機嫌になるのだ。
いつも悪乗りして、付き合ってくれる仲間たちが、今回も軽いノリで、
賛成してくれると思っていたのに…
結果はどうだ?
なぜだか冷ややかな目で、こちらをうかがうようにしている。
「いいじゃないか!きっと盛り上がるよ!
それに…女の子の好きそうな、よさげなホテルだし…」
やけに饒舌に言葉を並べ立てて、どうにかみんなを説得しよう、と
試みている。
「ほら、これ!ホテル ロッサ!
名前だって、何だかシャレているだろ?
それに、山奥のホテルだろ?
洋館で、バラ園があるというだろ?
絶対ウケルって!
なぁ、行こうぜ!
おまえ…気に入った女の子が、いるんだろ?」
まるで駄々っ子のように、秀人は賢人の肩を揺さぶる。
「うーん」
賢人は考え込むようにして、揺さぶられるままでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます