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 ひと足早く、秀人先輩が

「じゃ!」と手をあげて、さっそうとその場を立ち去る。

珠紀は「えっ」と玲と顔を見合わせる。

「ちょっと、センパ~イ!」

 せっかく話しかけるチャンスだ、と思っていたのに、

足早に帰る姿を見て、同級生たちは残念そうにため息をついて、

その場で見送る。


「ずるーい!

 私たちも、混ぜて欲しかったのにぃ」

 チラリと上目遣いで、今日知り合ったばかりの、同級生をあらためて

見返す。

「でもさぁ、秀人先輩って、カッコイイよね」

「ホント、イケメン!」

「あら、先輩、彼女がいるんだってよ」

「えっ、うそ!」

珠紀たちをグルリと取り囲んで、新入生たちは、にぎやかしく言い合っている。

「私、知ってる!」

1人が声を上げる。

「それ…カオリ先輩でしょ?」

ポソリと彼女が言うと

「えっ、うそっ!ホント~?」

すぐさま悲鳴のような声が上がる。

「でも、お似合いよね?」

「美男美女、って感じ」

はぁ~

ため息をつくと、一気に白けた空気が流れる。

 悔しいけれど、認めざるを得ない。

彼女たちはそれぞれ、はぁ~ともう1度、ため息をついた。


「ね、参加するよね?」

 その晩、早速、玲から電話がきた。

「うーん、どうしようか、迷っているところ」

風呂上がりに、タオルで頭をガシガシ拭きながら、珠紀は

受話器を肩にはさんで、器用に水のペットボトルを手に取る。

携帯をこたつ机の上に置くと、一気にミネラルウォーターで

喉を潤す。

「えっ、どうして?」

玲の驚いた声が、スマホ越しに耳に響く。

「どうしてって、だってぇ~」

珠紀は頭をひねる。

「だって、いきなり合宿だなんて…

 ちょっと、ナンパみたいなんだもん」

ポソッと珠紀がつぶやくと、

「ナンパじゃないよぉ、合コンだよ」

そう玲が言うけれど…

あの時、素敵な先輩に、声をかけられて、舞い上がったのは事実だ。

 だけどよくよく考えてみたら、何だかその軽さに抵抗を覚えたのだ。

「だって、何だか、馴れ馴れしい感じがしたし…」

昼間の出来事を思い浮かべて、珠紀が言う。

 大体彼女がいる、というのに…

軽く珠紀の肩に触れた、ということが、どうしても気になったのだ。


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