4
ひと足早く、秀人先輩が
「じゃ!」と手をあげて、さっそうとその場を立ち去る。
珠紀は「えっ」と玲と顔を見合わせる。
「ちょっと、センパ~イ!」
せっかく話しかけるチャンスだ、と思っていたのに、
足早に帰る姿を見て、同級生たちは残念そうにため息をついて、
その場で見送る。
「ずるーい!
私たちも、混ぜて欲しかったのにぃ」
チラリと上目遣いで、今日知り合ったばかりの、同級生をあらためて
見返す。
「でもさぁ、秀人先輩って、カッコイイよね」
「ホント、イケメン!」
「あら、先輩、彼女がいるんだってよ」
「えっ、うそ!」
珠紀たちをグルリと取り囲んで、新入生たちは、にぎやかしく言い合っている。
「私、知ってる!」
1人が声を上げる。
「それ…カオリ先輩でしょ?」
ポソリと彼女が言うと
「えっ、うそっ!ホント~?」
すぐさま悲鳴のような声が上がる。
「でも、お似合いよね?」
「美男美女、って感じ」
はぁ~
ため息をつくと、一気に白けた空気が流れる。
悔しいけれど、認めざるを得ない。
彼女たちはそれぞれ、はぁ~ともう1度、ため息をついた。
「ね、参加するよね?」
その晩、早速、玲から電話がきた。
「うーん、どうしようか、迷っているところ」
風呂上がりに、タオルで頭をガシガシ拭きながら、珠紀は
受話器を肩にはさんで、器用に水のペットボトルを手に取る。
携帯をこたつ机の上に置くと、一気にミネラルウォーターで
喉を潤す。
「えっ、どうして?」
玲の驚いた声が、スマホ越しに耳に響く。
「どうしてって、だってぇ~」
珠紀は頭をひねる。
「だって、いきなり合宿だなんて…
ちょっと、ナンパみたいなんだもん」
ポソッと珠紀がつぶやくと、
「ナンパじゃないよぉ、合コンだよ」
そう玲が言うけれど…
あの時、素敵な先輩に、声をかけられて、舞い上がったのは事実だ。
だけどよくよく考えてみたら、何だかその軽さに抵抗を覚えたのだ。
「だって、何だか、馴れ馴れしい感じがしたし…」
昼間の出来事を思い浮かべて、珠紀が言う。
大体彼女がいる、というのに…
軽く珠紀の肩に触れた、ということが、どうしても気になったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます