(もしかして…お化け屋敷か何か?)

 珠紀は、玲の表情を確かめる。

先輩は、2人の様子に気が付くと

「ちがう、ちがう!そんなんじゃあないよ」

あわてて手を振ると

「ほら、ほらぁ~彼女たち、誤解しているじゃないかぁ」

責めるように、仲間たちを振り返る。

 すると女の先輩が、ふふふと笑うと

「だって、見た人がいるみたいだし!」

なぜだか楽しそうに言う。

カオリ先輩が「こら、こらぁ~」

笑いながら言い、秀人先輩を上目遣いで、じっとりと見詰める。


『あの2人、付き合っているらしいよ』

 すかさず玲が、珠紀に耳うちをする。

2人がじゃれ合う姿は、確かに傍目から見ても、十分恋人同士に

見える。

 そっかぁ~

 お似合いだもんなぁ~

なぜだか珠紀は少し、ガッカリする。

別に先輩が好き、というのではないけれど、

ねらっていたわけでも、ないけれど…

ほんの少し、好感を持っていたみたいだ。


 秀人先輩は、珠紀たち新入生にとっても、憧れの存在だ。

理学部数学科で、とても頭がよくて、しかも人当りも柔らかで、

爽やか風イケメンなのだ。

大学の人気者といってもいいだろう。

この大学だけでなく、この界隈の学生たちの間でも、そのスマートさは

知る人ぞ知る…という折り紙付きなのだ。

(ちょっと、いいなぁと思っただけよ)

自分に言い訳をしていると、

「まぁね、他にも素敵な人は、たくさんいるわよ」

チョンチョンと玲は、珠紀を突っついて、にたぁと笑う。


「でもまぁ、それもいいかもね!」

 カオリ先輩が、秀人先輩に言っていると

「だろ、そうだろ?」

急に秀人先輩が、ニヤニヤする。

他の先輩も、意味あり気にニヤニヤとしている。

先輩は、しっかり尻に敷かれているなぁと、2人の様子を見て、

からかっているのだ。

「ま、そういうことだから、キミたちも楽しみにしておいてね」

笑いながらそう言うと、今度は後ろの方から

「なになに?あなたたち…

 秀人先輩と、何をこそこそ話していたの?」

同じ同級生たちが、2人の方に近付いて来た。

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